イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アイドルやダンスボーカルグループにおける所有指標加算初週および2週目の動向を押さえる

今回は最新6月12日付ビルボードジャパンソングチャートにおける上位初進出曲をまずは紹介。なお、すとぷり「誓いの花束を~With You~」については昨日付エントリーにて紹介しています。

すとぷり「誓いの花束を~With You~」は502,921枚のフィジカルセールスを記録し、当週の総合ソングチャートで5位に初登場。しかしながら他の5指標はいずれも300位未満、ポイント未加点となっています。ここから、50万枚強のフィジカルセールスを記録すれば7千ポイント近くを獲得できるということが解ります。

こちらを踏まえた上で、アイドルやダンスボーカルグループにおいて所有指標加算2週目以降に重要なのは接触指標の充実であることを記しました。これはすなわち、曲は気になるが歌手のファンというわけではないライト層を掴むことが如何に重要かということです。 

最新ソングチャートで初登場したNCT DREAM「Moonlight」は、25万枚強のフィジカルセールスが2位到達の原動力となっています。他方、ロングヒット曲にて週間獲得ポイントの過半数を占めるストリーミング指標は今回加算されていません(3週前まで2週連続でポイントを獲得)。フィジカルセールス初加算週はデジタルも上昇することが多いゆえ、この動きは気になるところです。

 

最新6月12日付ビルボードジャパンソングチャートで初のトップ10入りを果たした男性アイドルやダンスボーカルグループの作品は、次週急落する可能性が高いと予想されます。では前週トップ3を占めた男性アイドル/ダンスボーカルグループによる作品はどう動いたでしょう。

 

<6月12日公開分ビルボードジャパンソングチャート 前週トップ3入り作品の動向>

・JO1「Love seeker」 1→16位

・Number_i「BON」 2→8位

・コムドット「拝啓、俺たちへ」 3→13位

ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートの上位曲においては比較表を用意。上記3曲については黄色で表示しています。

ポイント前週比が最も小さかったのはJO1「Love seeker」であり、順位面でも3曲で一番低い位置に。一方で、獲得ポイントの半分近くをストリーミングが占めています。

「Love seeker」は今回の集計期間中にSpotifyで50位以内に入りましたが、それ以降のいわゆる”50位の壁”効果は薄い印象があります(この特性についてはブログにて紹介しています→こちら)。あくまで仮説と前置きしますが、同曲ではStationheadを活用したコアファンの自主的な動きがみられており、50位以内に入ったことでSpotifyでの聴取を離れた方が少なくないことが、ライト層の流入と同時に起きた可能性が考えられます。

 

コムドット「拝啓、俺たちへ」についてはLINE MUSICの順位が高い一方、他の2曲に比べてサブスクサービス間での乖離が最も大きい状況です。ストリーミング指標(の基となるStreaming Songsチャート)の順位は16→12位に上昇していますが、ここにはリリースタイミングのほか(前週の集計期間3日目にリリース)、LINE MUSIC再生キャンペーンの影響も見て取れます。

LINE MUSIC再生キャンペーンは昨日で終了しており、チャートへの影響は次週6月19日公開分までとなります。それまでに他のサブスクサービスで支持を集められるか、またキャンペーン終了後もLINE MUSICでヒットを維持できるかがロングヒットの鍵を握るといえるでしょう。

 

3曲のうち唯一トップ10内に残ったのはNumber_i「BON」。Stationheadにおいてコアファンの大きさや熱量の高さを感じる一方、Stationheadと関わりのないLINE MUSICでは他サービスとの乖離が小さくない状況です。また同作品をリード曲に据えたミニアルバム『No.O -ring-』の他の収録曲は、前週に比べてSpotifyと他のサブスクサービスとでの乖離が大きくなっています。前週の表は下記をご参照ください。

それでもミニアルバム収録曲のうち「No-Yes」は当週も総合ソングチャート100位以内にとどまっています。ミニアルバムのリード曲以外で残り続ける状況は米ビルボードソングチャートを思わせ、日本でもこのような動きが登場したことを興味深く捉えています。今後はStationheadリスニングパーティー(公式/コアファンにかかわらず)以外でも聴かれる機会が増えるか、いわばライト層に届くかが焦点となります。

 

 

このブログではビルボードジャパンのストリーミング指標(その基となるStreaming Songsチャート)と総合ソングチャート、そして各サブスクサービスの順位比較表を4月以降用意しています。ロングヒット曲においてはサブスクサービス間で順位の乖離が小さい、またロングヒットの兆しをみせる曲も同様の動きをなぞることを可視化すべく作成したのですが、実際に予想した通りの動向が示されていると感じています。

この動向に近づけること、すなわちライト層にもきちんとリーチすることが社会的ヒット曲の前提となる以上、アイドルやダンスボーカルグループ側がどう考え、動いていくかが重要となるでしょう。今後もフィジカルセールスに強い作品が毎週リリースされ(上記表参照)、それに伴うソングチャートの激しい入れ替わりも予想されますが、その中から真の社会的ヒット曲が出てくるかを注視していきます。