イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 新曲が初登場しやすい曜日は、”50位の壁”とは...日本におけるSpotifyデイリーチャートの特性をまとめる

(※追記(14時41分):紹介したグラフの期間最終日である2024年3月11日付Spotifyデイリーチャートにおいて、3月13日昼頃までに訂正が入りました。それに伴い、訂正済データを反映したグラフに差し替えています。)

 

 

日本のSpotifyデイリーチャートを日々追いかける者として、今回のエントリーにてSpotifyチャートの特性をまとめてみます。

 

<日本のSpotifyデイリーチャートにおける特性>

 

 

ビルボードジャパンソングチャートおける影響度について

ビルボードジャパンソングチャートで最も大きな影響力を持つのがストリーミング指標です。各サブスクサービスおよびYouTubeでのオーディオストリーミングの再生回数を基に、有料会員の1回再生が無料会員によるそれよりウエイトが大きくなる形で指標化しています。大ヒット曲はこの指標がポイント全体の半分以上を占め、そしてロングヒット曲はこの指標が安定しているのが特徴です。

ストリーミング指標の基となる再生回数においてSpotifyは全体のおよそ2割を占め、Apple Musicに次ぐサービスとみられています。なおSpotifyはデイリーチャート200位までの順位および再生回数を可視化している一方、Apple Musicは週間チャート100位までの順位がMusicmanにて記事化されます(火曜もしくは水曜に報じられます)。

 

 

ロングヒット曲が多い

Spotifyに限りませんが、サブスクサービスではロングヒット曲が多く、1年以上前にリリースされた曲が長く上位にランクインする傾向にあります。たとえば最新3月11日付における日本のSpotifyデイリーチャートでは、2023年の代表曲であるYOASOBI「アイドル」(2023年4月11日発売)が5位、2022年の『NHK紅白歌合戦』を機にブレイクしたVaundy「怪獣の花唄」(2020年5月27日発売)が9位にランクインしています。

 

 

再生回数には曜日特性がある

再生回数は平日の中でも金曜が他の曜日より低く、また平日より土曜、土曜より日曜が上昇する傾向にあります。これは日本において金曜に飲み会等、音楽聴取以外の時間が多いことが背景にあると考えられます。

なお海外では音楽チャートの集計期間初日となる金曜に新曲がリリースされることが主流であり、新曲リリース曜日の浸透度や音楽チャートへの意識が高いとみられることもあってか、金曜の再生回数が伸びる傾向にあります。また土日は金曜ほどの再生回数には達していないともいえます。

 

 

新曲が上昇する傾向について

初登場しやすい曜日とは

ビルボードジャパンソングチャートではフィジカルセールス等他指標に比べて、ストリーミング指標の基となるサブスクサービスは新曲がリリース当初から上位に進出することは少ない状況です。その中で、注目度の高い曲は急浮上する傾向にあり、中にはリリース前日にフライング的な形でランクインすることもあります。フライングでの初登場は、Spotifyの1日の区切りが午前0時以降であるためと考えられます。

新曲が200位以内に初登場しやすい曜日のひとつは月曜。プレイリスト【Tokyo Super Hits!】の更新日であり、現時点で88万強のユーザーがフォローしています。日本では新曲のリリース曜日が統一されていないこと、また新曲をサブスクで聴く習慣が徹底されているとは言い難いこともあり、フォロワー数の多いプレイリストの影響力が大きいと捉えています。

 

”50位の壁”特性が大きく作用する

Spotifyにおいては、デイリー50位以内に入ることで数日中に急上昇することが解っています。言い換えれば、50位以内から外れた際は数日中に急落する傾向にもあります。これはデイリー50位までのランクイン曲をプレイリスト化した【トップ50 - 日本】の効果が大きいゆえであり、この特性をブログでは”50位の壁”と呼んでいます。このプレイリストのフォロワー数は現時点で114万を誇ります。

【トップ50 - 日本】プレイリストは夜に更新されるため、50位以内に初めて(もしくは再度)ランクインしたその2日後のチャートにて効果が大きく表れる(順位および再生回数が急上昇する)といえるでしょう。ただし50位以内に初登場(もしくは再登場)した翌日にその順位を割った場合、一時的に乱高下する傾向にあります。

 

 

ユーザー数は拡大している

様々な記事にてサブスクサービス全体のユーザー数が増えていることが報告されていますが、Spotifyにおいてはデイリーチャート200位の再生回数を定点観測することで、ユーザー数の拡大や聴取曲数の増加を確認することが可能と捉えています。

再生回数はクリスマスイブやクリスマス当日に伸び、一方で大晦日から三が日にかけてはダウンする傾向にあります。また今年においては元日に発生した能登半島地震以降、再生回数が以前の水準に戻っているとはいえない状況です。台風等の自然災害によっても一時的なダウンがみられますが、いずれの場合も特定の曲ではなくチャート全体の再生回数が下がるという状況です。

 

 

 

以上が、日本のSpotifyデイリーチャートにおける特性です。記載漏れがあれば追記していきます。

 

最後に、主要サブスクサービスのチャート傾向を簡単に挙げるならば、LINE MUSICは再生キャンペーンの影響力が今もあり、また若年層の利用が多く、Spotifyはプレイリストの特性が強いこともあり新曲が上昇しにくい(保守的な動きと形容可能な)ものの、”50位の壁”を越えることで上昇もしやすい状況です。一方でApple Musicのチャートはその中間と捉えていいかもしれません。

それぞれのサブスクサービスではユーザー獲得のための様々な取組が行われていることもあり、チャートには幾分差がみられます。コアファンの熱量が可視化されやすいSpotifyやLINE MUSICとApple Musicとでは差があるともいえるでしょう。大事なのはいずれのサービスでもきちんとヒットすることであり、ライト層(歌手のファンというわけではないが曲が気になる方)を獲得しコアファンへと昇華させるかが重要です。