イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ニコニコ動画サイバー攻撃被害がネット音楽の総合ヒットを高める可能性について

ニコニコ動画は昨日、サイバー攻撃からの復旧に時間を要することを発表しました。

そしてビルボードジャパンは当週、ニコニコ動画と組んだ音楽チャートの発信を停止しました。おそらくこちらも復旧に1ヶ月程度かかることでしょう。

 

回復の推移を見守りつつ、この出来事がともすればボカロPによる作品、そして広義のネット音楽におけるビルボードジャパン総合ソングチャート上昇に向かうのではと感じています。

 

注目したのはYouTubeのデイリーミュージックビデオランキング。今回のサイバー攻撃は6月8日に始まっていますが、この6月8日付におけるYouTubeデイリーミュージックビデオランキング(→こちら)では、たとえばサツキ「メズマライザー」が6→5位、吉田夜世「オーバーライド」が12→9位、jon-YAKITORY「混沌ブギ」が39→24位となり、前日より上昇。これらは作品は6月2日までを集計期間とする6月5日公開分のニコニコVOCALOID SONGS TOP20において、順に1位、2位および9位となっています。

ニコニコ動画には独自の文化があり、このプラットフォームの視聴者がすべてYouTubeに流れることはないでしょう。しかし総合ソングチャートの動画再生指標はニコニコ動画が加算対象外の一方でYouTubeは対象であり、YouTube再生回数が増えればボカロP作品の総合チャート上昇も考えられます。吉田夜世「オーバーライド」は最新6月12日公開分で総合75位となり最高位を更新しましたが、さらに順位を伸ばすかもしれません。

 

 

ビルボードジャパンは6月7日に2024年度上半期各種チャートを発表しましたが、この分析を行ったエントリーの最後にて、このように記しました。

また、たとえばUGC人気を示すTop User Generated Songsチャートではニコニコ動画の人気曲が上位に進出する傾向がある一方、ニコニコ動画への投稿から時間を置いて音源がリリースされることは少なくありません。たとえばCMソングにも起用されたゆこぴ「強風オールバック」の音源リリースは昨年11月末であり、これが総合ソングチャートでのヒットに至りにくかった一因といえます(上記エントリー参照)。

この改善のためにはネットでの発信に積極的な音楽関係者、そしてそのファンも含めビルボードジャパンソングチャートをより強く意識することが重要だと感じていますが、一方でビルボードジャパン側がこの乖離を埋めるべく動くこともまた必要でしょう。

(※ 引用における”上記エントリー”とはこちらを指します。)

ニコニコ動画サイバー攻撃被害によるサービス停止はあってはならないことであり、想定外のイレギュラーな事態です。ただこのことを機に、このプラットフォームで人気の作品がYouTubeを介してより大きくヒットするかもしれません。そしてそれが広義のネット音楽への注目度を高め、ジャンル全体のヒットにつながる可能性もゼロではないでしょう。チャート動向を注目する必要があると考えます。