イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

レンタルCDショップの動向から感じた、CDを巡る環境や媒体に抱く不安について (2月版)

このテーマでは1月に記したばかりでしたが、気になることが増えたため今月も記載します。1月版については下記ブログエントリーをご参照ください。

 

 

<CDを巡る環境や媒体に抱く不安について (2月版)>

 

中古CDの店内販売、地元のGEOで80%オフ開始

前回のブログエントリーで採り上げた内容の続きといえるもの。80%オフは自分が住む青森県津軽地方が一斉に開始して間もないのですが、ともすれば開始日は異なるとしても全国的にこの流れ自体は共通しているのかもしれません。

8割引が開始された1月30日以降の平日に青森市の青森柳川店、弘前市弘前安原店および黒石市の黒石東町店へ伺ったのですが、1月29日までの半額セールの段階で大分捌けている店舗もあれば結構残っているところもあり、たとえばサブスク未解禁のアイドルグループによるベスト盤(複数種)やK-POPの人気定着に大きく寄与したボーイズグループの各作品(豪華盤)等が置かれていた状態でした。

 

結束バンドのアルバム、津軽地方ではレンタルが取り扱われてすらいない状態

テレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するバンド、結束バンド名義でのアルバム『結束バンド』が人気であることは以前も紹介しました。

『結束バンド』は二度の首位を経て、最新2月1日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでは7位に。所有指標のみから成るこのチャートでトップ10を1ヶ月以上キープすることは、この作品の人気の拡がりを示すに十分です。

他方、このアルバムについては現段階で、青森県津軽地方のレンタルCDショップにて取扱がない状態が続いています。


f:id:face_urbansoul:20230205055217p:image

f:id:face_urbansoul:20230205055224p:image

f:id:face_urbansoul:20230205055213p:image

f:id:face_urbansoul:20230205055220p:image

上記はGEOおよびTSUTAYAにおける、2月5日午前5時台のレンタル在庫検索結果。先述したGEOの3店舗に加えてTSUTAYAにおいても青森市の青森中央店、弘前市弘前店および五所川原市五所川原店すべてで取扱自体がない状況です。ともすればレンタル未実施の可能性もありSHIBUYA TSUTAYAの状況を確認したのですが、そちらにはきちんと在庫が置かれていました。

(上記で画像を掲載しませんでしたが、GEO青森浜館店およびTSUTAYA弘前樹木店も同様に、アルバム『結束バンド』のレンタルは取り扱われていませんでした。)

『結束バンド』が2000年代ロックから影響を受け、当時の音楽を聴いていた方にノスタルジーと新鮮さを与える以上、CDやデジタル以外にも(当時を知る世代に慣れ親しんだ)CDレンタルのニーズはあるはずですが、店舗のレンタル導入決定権者そして地域マネージャークラスの方々が今の音楽のヒットを意識しなくなったと言っていいのかもしれません。この意識の問題からも、レンタル事業終焉の足音が聞こえてくるようです。

 

GEO、アプリにおけるCDレンタルクーポン獲得が難しくなる

GEOにはアプリにて各種レンタルにおけるクーポンを用意しているのですが、この1、2年で急激に厳しくなりました。

CDレンタル以外のクーポンはわかりかねるゆえCDレンタルに限って記載すると、以前ならば1会計で半額適用だったものがいつの間にか1会計で1枚のみ半額適用のクーポンに変更。またアプリ内通貨といえるゲオスでクーポンが当たるくじを引く際、80ゲオスを使ってクーポンを引いても当たる確率が低くなっています。

そして今年に入り(と記憶していますが、昨年末の可能性もあります)、クーポンがいわば改悪の状態に。くじはガチャに変更され、1回の使用ゲオスは80から100に、そして半額以外にも100円引き、50円引きおよび20円引きが設定され、自分は試しに5回以上引いたのですが20円引き以外出てきませんでした。加えて利用期限は以前ならば60日あったと記憶していますが、現在は14日間に制限されています。

GEOはこれまで、1ヶ月に1回を目安にCDレンタルの1会計半額クーポン(期間内使用制限なし)を配布してきましたが、それもなくなるのではと危惧しています。なお地元TSUTAYAにおいてはこの1年以上、CDレンタルの半額等は実施されていません。

 

最後に

2022年におけるフィジカルセールスについては、アナログが大きな伸びを示しています。

上記記事の元となる数字は、日本レコード協会による12月度生産実績からも確認が可能です(月次数値はこちら)。そして上記記事では『CD・レコード・カセットを含めたオーディオレコードと、DVD・Blu-ray Discなどの音楽ビデオの合計生産実績は、数量ベースでは前年比3%減の1億4653万枚・巻だった一方で、金額は同4%増の2023億円となり、3年ぶりに2000億円を超えた。特にBlu-ray Discが伸びた』とあります。

数量ベースで落としながら金額ベースで伸びたということは、フィジカル1枚あたりの単価が上昇したことを指します。CD全体においても前者が前年比97%に対し後者が105%となっており、単価上昇を感じさせるに十分です。

 

特にシングルにおいてはフィジカルリリースされる作品が減っており、フィジカルを販売する歌手の売上枚数とユニークユーザー数(実際の購入者数)との乖離が徐々に拡がっている状況にあるのかもしれません。それも踏まえるに、CDは歌手側もそしてコアファン側にとっても、グッズ的な位置付けに成ってきていると言えるでしょう。実際そのような指摘が記事にて登場しています。

(なお東京新聞による上記記事では、わかりやすさを打ち出すべくタイトルに”握手券”を用いたのかもしれませんが、封入特典は握手券に限りません。ジャケット違いで10を超えるタイプをリリースする歌手もいらっしゃるゆえ、東京新聞の見出しは一部の歌手に必要以上のマイナスイメージを植え付けかねないだろう意味において歓迎できないということを付け加えておきます。)

 

個人的には歌手側や所属事務所、レコード会社等が行うフィジカルリリース施策がコアファンの物理的もしくは精神的疲弊を過度に招くものであってはならないと考えますが、施策が音楽チャートに過度に反映されなければその実施は自由と捉えており、フィジカルセールス指標に係数処理を用いて今の真の社会的ヒット曲を可視化したビルボードジャパンソングチャート(やその設計思想)が浸透すれば好いとは考えています。

一方でコアファンとライト層との間でフィジカルに対する意識の乖離が進んでいることが、レンタルチェーンのCDに対する価値や意識の引き下げに作用しているという可能性を、前回や今回取り上げた例から感じます。レンタルチェーン側にも問題があるとして(特にアルバム『結束バンド』の未導入には強い引っ掛かりを覚えます)、しかしその状況を歌手側も作り上げたのならば、歌手側の施策の再考もまた必須でしょう。