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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Awesome City Club「勿忘」の好調を把握していない? レンタル店舗のアルバム在庫未導入に思う

Awesome City Club「勿忘」の勢いが止まりません。

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1月27日に配信開始となった「勿忘」はリリース日の段階で日本におけるSpotifyデイリーチャート200位以内に初登場を遂げると、最新2月26日付では5位に。特筆すべきは2月15日からの1週間において、再生回数が基本的に大きく変わらない平日でもはっきり解る上昇を続けていたこと。さらには『CDTVライブ!ライブ!』出演の翌日、祝日だったことも相俟ってデイリー再生回数は同曲最高となる26万に達しています。

Spotifyをストリーミング指標の集計対象に含むビルボードジャパンソングスチャートでは、「勿忘」は3月1日付(集計期間:2月15~21日)で8位に。順位こそ1ランクアップにとどまりましたが、ポイント前週比が132.2%となり実際は大きく上昇していることが解ります。最新のTikTok週間楽曲ランキング(集計期間:2月15~21日)でも15位に初登場したことで、この勢いがさらに増すことは間違いないでしょう。

さらには2月22日付Spotifyバイラルチャートで首位登場を果たしたことも、ビルボードジャパンソングスチャートでのさらなる伸びにつながると言えます。バイラルチャートではこの2日間、「勿忘」は2位にとどまっていますが、首位に立ったのが解散を発表したダフト・パンクによる「One More Time」だったことを考えればやむなしと言えます。

 

一方で、「勿忘」を収録したAwesome City Clubのアルバム『Grower』に、「勿忘」の勢いが反映されていない(ように見える)のは残念です。

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最新3月1日付ビルボードジャパンアルバムチャートではダウンロード指標こそ22位と高いものの、フィジカルセールスが100位未満(300位圏内)、ルックアップに至っては300位にも満たずポイント加算対象外に。ルックアップ指標とはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数を示しますが、映画『花束みたいな恋をした』が若年層のみならず比較的上の世代にも届いていること、年齢層が高いほど音源をCDで手に入れたいというニーズが強く存在するだろうことを踏まえれば、CD購入可能店舗の多くなさおよびプロモートの問題が見えてくる気がします。映画の視聴者層についてはこのような興味深いインタビュー記事があるため、老若男女に届いていると断言できそうです。

観客のターゲット層は20代にしていましたが、公開されるとすぐに40代まで広がっていきました。やっぱり20年前と恋愛のありようが変わらないんですよね。いつの時代にも誰にでもあった普遍的な恋愛を、あそこまで丁寧にリアリティを持って描いた邦画は今まであまりなかったんじゃないかと思うんですよね。

そして昨日、『Grower』はCDレンタルが解禁されたのですが、しかし。

ネットで在庫検索すると、TSUTAYAが東北の旗艦店と位置付けているMORIOKA TSUTAYAでも取扱がない模様。ともすれば先のアルバムチャートの状況から、もしくはこれまでの実績を踏まえて未導入を決めたのかもしれませんが、レンタル需要が存在すること、さらには需要を掘り起こそうとすることへの意識が欠如しているのではという疑問を抱かずにはいられません。アルバムレンタルコーナーにおいてはどの店舗でも歌い手不明のカバーミックスが大量に置かれていますが(ともすれば契約関連で置かざるを得ないのかもしれませんが)、その分を一枚でも『Grower』に持ってくる判断力は、少しでもチャートを追いかけていれば身につくはずです。厳しい物言いかもしれませんがしかし、人気曲や良曲が拡がる可能性を逸している状況はあまりにも残念です。

 

 

現在レンタルにおいて大成功を収めている作品はYOASOBIのEP『THE BOOK』で間違いありません。ビルボードジャパンアルバムチャートでは最新3月1日付まで5週連続でルックアップ指標を制している『THE BOOK』、そのレンタル回数は「群青」が一昨日のTHE FIRST TAKEに登場したことで尚の事伸びるかもしれませんし、CDのほぼ完売という状況を踏まえればレンタル需要の多さは自明と言えますが、そんな彼らはTwitterでCDレンタルの需要喚起を行っているのです。解禁日直前のこのツイートがレンタル需要の増加に、ルックアップ指標の最上位キープに、そして歌手の認知度等のさらなる上昇に影響を与えたと捉えています。

これをAwesome City Club『Grower』に置き換えればツイートする役割は歌手側ということになるでしょうが、そもそもレンタル在庫が不十分ならばツイートすら躊躇いかねません。そして需要を喚起する役割を担うのは本来、レンタル店舗側であるはずです。

 

 

CDレンタル解禁日が週1回の土曜日になったことでほんの僅かでも余裕が生まれたならば、チャートを見て感性を磨く、本部の要望にただ従うのではなく自分たちでこれぞということをやってみる…そのようなことができないのだろうかと思ってしまいます。個人的にはその点において、以前弘前市にあったメディアインという場所が如何に貴重だったかを思わずにはいられません。