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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

島津亜矢のカバー集最新作『SINGER7』が右肩上がりもトップ10入りならず…演歌歌謡曲が総合順位を上げるには

島津亜矢さんによるカバー集最新作が、駆け上がるかの如きチャートアクションを示しています。

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『SINGER7』は最新4月14日公開(4月19日付)ビルボードジャパンアルバムチャートで46→14位へ躍進。初週は集計期間最終日にリリースされたこともあり初登場83位という位置でしたが、登場3週目のチャートアクションは2週目を大きく上回っています。

(上記チャート推移(CHART insight)において、総合順位は黒の折れ線で示されます。『SINGER7』が日曜リリースとなったのは同日に誕生日を迎え、また配信ライブも行われるのに合わせてのものと推測されます。)

チャート推移で注目すべきは構成3指標の状況。黄色の折れ線で示されるフィジカルセールスは66→60→12位、紫のダウンロードは100位圏外(300位以内)→18→13位と推移。とりわけ最新チャート(集計期間:4月5~11日)に大きな影響を及ぼしたのが、4日に放送されたテレビ番組でのパフォーマンスにあったことは間違いないでしょう。

この反響はダウンロード指標にも表れ、最新チャートの集計期間前半の段階では同指標3位につけていました(記事はこちら)。最終的にはこの指標でトップ10入りを逃していますが、反響の大きさを如実に示すものと言えます。このダウンロード指標は前週も20位以内に入っていましたが、こちらについては配信ライブを観た方が速やかにデジタルを購入したゆえと考えられます。

(現在、アーカイブ視聴は終了しています。)

一方で最新チャートにおけるフィジカルセールスの伸びはテレビ番組の反響もさることながら、デジタルよりフィジカルを好む方もしくはデジタルに疎い方をCD購入に至らせた結果と考えます。売上増加分はおよそ2千枚であり大きな上昇とは言えないかもしれませんが、それでも立派な上昇であることには間違いありません。

 

フィジカルセールス12位、デジタル13位ならば総合でトップ10入りを狙えたはずですが、アルバムチャートのもうひとつの指標であるルックアップが低く、これがトップ10入りを逃した要因と言えるでしょう。

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上記は先述のチャート推移から総合およびルックアップ(オレンジ)のみを抜き出したもの。ルックアップは最新チャートになってはじめてランクインしていますが、それでも100位圏外(300位以内)とかなり低い位置にとどまっています。

ルックアップとは、パソコン等にCDをインポートする際にインターネットデータベースのGracenote(グレースノート)にアクセスされた回数を指します。売上枚数に対するユニークユーザー数(実際の購入者数)、そしてCDレンタル枚数を推測可能とするこの数値からは、4月10日にレンタル開始となった『SINGER7』がおそらく借りられていないということ以上に、そもそも在庫自体が置かれていない問題があることが容易に推測できます。自分が住む場所の圏内では青森市のGEOで導入を確認していますが、TSUTAYAの東北旗艦店であるMORIOKA TSUTAYAでは取扱がありません(4月16日5時現在。GEO、TSUTAYA共にアプリにて確認)。

テレビ番組の反響がデジタルもさることながらフィジカルセールスにも活きたのは、島津亜矢さんの作品を好む層のニーズの大きさゆえと思われます。さらには、島津亜矢さんのカバーがメディアで披露されるたびにSNSでトレンド入りすることも当たり前になってきました。その状況において、しかもカバーシリーズの評判があってもなお、フィジカルのニーズをレンタルに呼び込むことをレンタル取扱店舗側が放棄した…厳しい物言いですが、しかしそう断定してよいでしょう。ちなみに演歌歌謡曲のフィジカル率の高さとファンのパソコン等取り込み率の低さは下記ブログで示しており、『SINGER7』におけるレンタル解禁までのルックアップの低さも予想できたことです。

 

フィジカルセールスが強い演歌歌謡曲はレンタルやデジタルが弱いものの、言い換えれば他ジャンルで弱まっているフィジカルセールスに強みがあるということ。ならばレンタルやデジタルを強くさせるべくどうするかを考えることが、アルバムに限らずシングルにおいても最善ではないでしょうか。レンタルにおいてはチェーンの意識の問題が大きいながらも働きかけることは重要ですし、デジタルにおいてはYouTubeチャンネル(これは歌手公式、レコード会社双方に言えることです)やSNSを充実させデジタルプラットフォームへの導線をきちんと用意することが急務でしょう。演歌歌謡曲が未だデジタル解禁に前向きではない中、島津亜矢さんは『SINGER7』をサブスク解禁しているため他の歌手より有利な状況です。だからこそ、そこに至らせるためのきっかけづくりが尚の事必要なのです。

島津亜矢公式YouTubeアカウント発の動画ではMISIA feat. HIDE(GReeeeN)「アイノカタチ」のカバー動画が200万を超える再生回数を記録し段違いの再生回数を誇っています。ならば今回テレビで披露したYOASOBI「夜に駆ける」のカバーを、その練習風景でもよいのでYouTubeにアップしていれば、そしてそこに動線が貼られていたならば…そう思わずにはいられません。「夜に駆ける」は『SINGER7』には未収録ですが、動画を機に”SINGER”シリーズやオリジナル曲をチェックするようになり、また『SINGER8』以降を楽しみにする方は間違いなく増えるはずです。

 

極々個人的な意見を申し上げるならば、島津亜矢さんの”SINGER”シリーズが人気ならばアレンジをもっと豪華にしてほしいと思うのです。どうしてもオケがチープに聴こえてしまうのは気のせいでしょうか。このブログでは以前から”SINGER”シリーズの好さを取り上げており、広まって欲しいという思いを抱いているゆえ強く願うばかりです。