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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

次回のビルボードジャパンソングスチャートは今週リリース曲が上位進出の予感…JO1、米津玄師等の動向を押さえる

次回、10月19日公開分(10月24日付)のビルボードジャパンソングスチャートは今週月曜からの1週間が集計期間。フィジカルおよびデジタルの速報値からは、今週リリースされた新曲が大挙上位に登場するものと見込まれます。

 

 

まずはフィジカルセールス。こちらではJO1「Midnight Sun」がハーフミリオンを達成し、リード曲「SuperCali」に加算されます。「SuperCali」は既にデジタルリリース済ですが、フィジカルセールスを武器に初のトップ10入りが見込まれます。

前作「僕らの季節」(「WANDERING」リード曲)が初週516,603枚を売り上げたのに対し、今作は既に526,417枚のフィジカルセールスを獲得し前作超えを達成しています。後述するストリーミング速報値において「SuperCali」はトップ10入りしていませんが、日曜までLINE MUSIC再生キャンペーンを実施。しかしリアルタイムチャートを追いかけると、「SuperCali」がLINE MUSICで首位を獲得することは難しいと言えます。

LINE MUSIC再生キャンペーン対象曲がStreaming Songチャートを制した際、ビルボードジャパンはストリーミング指標化時に係数処理を施す(その一方で2位以下は施さない)チャートポリシー変更を今年度第2四半期に実施。さらにキャンペーンへの疑念をメディアで示したこともあり、キャンペーン参加者が減った印象があります。

それもあってでしょうか、他のサブスクサービスで聴かれてきている状況です。日本におけるSpotifyデイリーチャートでは「SuperCali」が今週に入り60位まで上昇するという、JO1の作品においてこれまでにない動きをみせています。Spotifyでの好調については以前のブログエントリーで紹介しましたが(下記リンク先参照)、今回の好調はコアファンのみならずライト層にもリーチしている可能性が考えられます。

先程紹介したミュージックビデオも解禁を今週に設定しており、今週のポイント最大化をフィジカルのみならずデジタルでも狙っていると言えます。

 

そのJO1「SuperCali」とビルボードジャパン総合ソングスチャート首位獲得を争うのが、米津玄師さんのデジタルシングル「KICK BACK」。水曜にリリースされたこの曲は、水曜までの前半3日間におけるビルボードジャパンソングスチャートのダウンロード指標速報値で首位に立っています。

(上記はテレビアニメ『チェンソーマン』オープニングのノンクレジットバージョン。)

テレビアニメ『チェンソーマン』開始日時と同時刻の配信開始ということもあり、米津玄師「KICK BACK」は大きな話題となりました。ストリーミングにおいてもわずか1日で248万回を突破し、arneの松島功さんは日曜までで1200万回を超えると予想。またストリーミング指標のデータ提供元となる各種サブスクサービスでは「KICK BACK」がこぞって首位に到達していると、チャート分析に長けたあささんが報告されています。

再生回数が可視化されたSpotifyにおいては、解禁日の前日にトップ50に登場するという異例の動きをみせると(午前2時頃を一日の区切りに設定しておりこのような現象が発生します)、解禁日当日には首位に到達。デイリー再生回数は今週末、50万の大台に乗せる可能性も考えられます。米津玄師さんがTikTokにて「KICK BACK」関連動画を載せていることも、サブスク再生回数の増加につながることでしょう。

@kenshiyonezu_08 TVアニメ『チェンソーマン』op 米津玄師「KICK BACK」配信中 #音楽の秋 #米津玄師 #KICKBACK #チェンソーマン #chainsawman ♬ オリジナル楽曲 - 米津玄師 ハチ

テレビアニメ『チェンソーマン』の初回放送のリアクションの大きさは、第1話エンディング曲のVaundy「CHAINSAW BLOOD」が早くもSpotifyデイリーチャートでトップ10入りしたことからも伝わります。さらに「KICK BACK」は解禁日、Spotifyグローバルデイリーで藤井風「死ぬのがいいわ」を超える位置に初登場し、米でもランクイン。翌日にはグローバルチャート47位に上昇し、トップ50プレイリストに登場しています。

世界に『チェンソーマン』、そして「KICK BACK」が轟くことで逆輸入的に人気が拡がれば、フィジカル未リリースながらビルボードジャパンソングスチャートでの首位獲得も十分見込めるでしょう。公式動画がないため動画再生指標の加算は難しいとはいえ、デジタルの所有/接触指標が共に好調に動くだろうと感じています。

米津玄師さんの公式YouTubeチャンネルでは本日未明、30秒ほどの映像がアップされましたが、ともすればミュージックビデオの公開も近いかもしれません。この突如の映像アップも、今後の公開の期待値上昇やサブスクでのチェック等につながるはずです。

 

 

ビルボードジャパンソングスチャートを制するのはJO1「SuperCali」か米津玄師「KICK BACK」か…フィジカルがハーフミリオンを達成した曲とデジタルの勢いが凄まじい曲のどちらが勝つのか、水曜の結果が楽しみです。

 

 

今週発売の他の曲も強力な動きをみせています。Official髭男dism「Subtitle」(速報値:ダウンロード3位、ストリーミング29位)はLINE MUSICで米津玄師「KICK BACK」を現段階で上回るヒットに。ドラマ『silent』(フジテレビ)の評判が、(他のサブスクサービスより多いと言われる)若年層にもリーチしているものと思われます。「Subtitle」は公式オーディオをYouTubeでアップしており、動画再生指標の加点も狙えます。

興味深いのは、Official髭男dismの小笹大輔さんが、ドラマ『silent』を観て独自のハッシュタグをツイートしている件。『silent』TVerでの見逃し配信が443万回再生!民放歴代最高記録を達成 | silent | TVerプラス(10月14日付)というニュースも出てきており、ドラマの話題や主題歌を担う歌手からの発信が、「Subtitle」のさらなる上昇につながることでしょう。

 

そして藤井風「grace」(速報値:ダウンロード2位、ストリーミング15位)については昨日その動向をお伝えしましたが(藤井風「grace」がSpotifyで上昇…ビルボードジャパンでもトップ10入りを狙える、その勢いの理由とは(10月14日付)参照)、日本時間の昨日13時に更新されたSpotifyのNew Music Fridayプレイリストに選出されたことが評判を呼び、「grace」の再生回数増加につながるかもしれません。

SpotifyのNew Music FridayプレイリストにおけるJ-Popの登場…ONE OK ROCKやego apartment等が選ばれたことはありますが、実際はほとんどないと言えます。おそらくは世界中でバイラルヒットした「死ぬのがいいわ」の実績が、「grace」の選出につながったことでしょう。

(ちなみに「grace」は100曲入りプレイリストの最後に登場。このプレイリストを毎週チェックする身として、最後に異彩を放つ曲を配置しているという印象を抱いています。プレイリストのセレクターは、「grace」を敢えてこの位置に持っていったのではないかと勝手ながら想像しています。)

 

 

私見を申し上げるならば、Spotify における米津玄師「KICK BACK」のグローバルトップ50(プレイリスト)入り、そして藤井風「grace」のNew Music Fridayプレイリスト入りは日本の音楽業界にとってこれまでほぼなかったことであるため(特に前者において)、日本のメディアがきちんと取り上げ、業界全体で盛り上げてほしいと強く願います。その点において、民放ゴールデンタイム音楽番組の放送なしという事態は非常に残念です。

そして、今週リリースの新曲が上位に進出するとして、週間ソングスチャートの順位と同様、もしくはそれ以上に重要なのはロングヒットすること、年間ソングスチャートにランクインすることだと考えます。ビルボードジャパンはよりヒットの実態に即したチャートポリシーにその都度変更すると共に、ロングヒットの重要性を周知徹底してほしいということも記しておきます。