イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】「KICK BACK」「SuperCali」「Subtitle」の動向に影響を与えた動画再生指標を考える

(※追記(10月21日7時48分):JO1「SuperCali」におけるYouTube再生回数とビルボードジャパンソングスチャート動画再生指標との乖離について、翌日のブログエントリーにて再度分析しています。JO1「SuperCali」、ミュージックビデオ再生回数とビルボードジャパン動画再生指標との乖離の理由を探る(10月21日付)をご参照ください。)

 

 

 

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

10月10~16日を集計期間とした最新10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、米津玄師「KICK BACK」が初登場で首位を獲得。2位のJO1「SuperCali」との差はわずか30ポイントとなっています。

今週は新曲が多数上位に初登場したことで、トップ5の水準は非常に高くなっています。

今回はその中で、上位3曲の動向に注目していきます。

 

上記は最新10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパンソングスチャート、上位5曲の構成8指標推移および上位3曲のCHART insight。ビルボードジャパンの記事、そしてチャート構成比からは各曲の特徴が見えてきます。

総合首位の米津玄師「KICK BACK」、および3位のOfficial髭男dism「Subtitle」は共に集計期間3日目にあたる10月12日にリリース。フィジカル未リリース(「KICK BACK」は後日リリースが決定)で2指標が未加算の中、「KICK BACK」はダウンロードおよびストリーミングを制し、「Subtitle」は前者3位および後者2位を記録しています。

一方でJO1「SuperCali」はフィジカル関連指標が初加算。前作「僕らの季節」を上回り、初の週間60万枚超えを達成しています。

冒頭で紹介したビルボードジャパン総合ソングスチャートの記事では『「KICK BACK」はダウンロードとストリーミング、「SuperCali」はシングルのポイントが牽引しての激戦となり、どちらの曲が総合首位を獲得してもおかしくない状況だった』とあり、それが30ポイントという僅差の要因と言えますが、この2曲、そしてOfficial髭男dism「Subtitle」において動画再生指標が重要な役割を果たしたというのが自分の見方です。

 

動画再生指標はYouTubeおよびGYAO!の日本における再生回数がカウントされ、カウント対象は公式動画且つISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されたものとなります。時折ISRCの未付番と思しき動画再生指標未加算が見られており、チャート分析者の間ではこの状況を”欠損”と称しています。

今回の上位3曲において、ミュージックビデオが用意されているのはJO1「SuperCali」のみ。「SuperCali」はパフォーマンスビデオも以前から公開し、フィジカルリリースのタイミングでミュージックビデオもアップしています。一方、米津玄師「KICK BACK」およびOfficial髭男dism「SuperCali」はミュージックビデオがまだの状態ですが、「Subtitle」は動画再生指標12位という好成績を収めているのです。

Official髭男dism「Subtitle」が動画再生指標を伸ばした理由は、同曲のリリース日にYouTubeにて公式オーディオをアップしたためと考えられます。ともすれば運営側は、ドラマ視聴(見逃し配信での視聴ならば尚の事)から主題歌チェックに流れてくることを見越して、この措置を実行したのではないかと考えます。これもまた施策の一環であり、総合での初週1万ポイント超えの要因になったのではないでしょうか。

 

動画再生指標においては、総合首位の米津玄師「KICK BACK」は49位となっていますが、下記動画が公開されていなかったならばばその順位はもっと下がったのではと捉えています。

テレビアニメ『チェンソーマン』のオープニング曲である「KICK BACK」は、制作側のYouTubeアカウントでノンクレジットオープニングムービー(→こちら)が今回の集計期間中にアップされ、現段階で2千万回以上の再生回数を誇りますが、おそらく公式動画扱いではないと考えられます。

一方で上記動画は米津玄師さんの公式YouTubeアカウントから10月15日土曜に公開。現段階で170万弱の再生回数を記録しており、この再生回数(のうち国内での再生分)が動画再生指標に加算されたといえます。仮にこの動画が公開されていなければ、総合首位に至れなかったとも言えるでしょう。

 

そしてJO1「SuperCali」はミュージックビデオの再生回数が初めて加算されながら、動画再生指標は14→50位と下がっています。

(上記CHART insightにおいて、動画再生指標は赤で表示。)

9月に公開された「SuperCali」のパフォーマンスビデオは現段階で1364万回再生を記録していますが、12日水曜に公開された同曲のミュージックビデオはそれを上回る1760万回再生に至っています。仮にここまで勢いがなかったとしても純粋にミュージックビデオの再生回数が加わったならば動画再生指標が上昇することが自然と考えるに、今回の動向には違和感を覚えるのです。

フィジカルにミュージックビデオが収録された映像盤が同梱される場合は視聴先がYouTubeから映像盤に移行し動画再生指標が下がることも稀にありますが、「SuperCali」(が収録された『Midnight Sun』)のフィジカルシングルに同梱された映像盤にはミュージックビデオが収録されていません。ゆえにこの仮説は正しくはないでしょう。

ならば要因として考えられるのが、「SuperCali」のISRC未付番に伴う欠損。パフォーマンスビデオの再生回数がコアファン中心だったとすれば、視聴先がミュージックビデオに移行することでパフォーマンスビデオの再生回数減少が想起されます。その状態で、且つミュージックビデオが欠損状態だったならば最終的に動画再生指標が落ち込むことが考えられなくはないため、その場合はやはりISRC付番の徹底が必須となります。

 

そしてもうひとつ考えられるのが、ビルボードジャパンによるチャートポリシー変更の可能性です。

上記動画で紹介されているアプリ、&JO1では今回のビルボードジャパンソングスチャートの集計期間に被る形で下記のキャンペーンが行われていました。

再生キャンペーンの一種といえますが、LINE MUSICのように各ユーザー毎に再生回数が把握できるわけではなく、期間内の総再生回数を踏まえて特典を付与するという類のものです。

このキャンペーンの存在はTwitterを介して教えていただきました(この場を借りて感謝申し上げます)。そして教えてくださった方は、このキャンペーンに疑念を示されています。ビルボードジャパンがどう捉えたかはわからないものの、ともすればこのキャンペーンの存在を踏まえてJO1「SuperCali」のミュージックビデオ再生回数に対し個別にウエイトをかけた等の可能性もあるのではと考えた次第です。

 

YouTubeでは1日に同じ動画を何回再生してもその全てが加算されるわけではなく(星野源 楽曲の再生回数カウントとチャート反映を語る - miyearnZZ Labo(2021年2月24日付)参照)、再生回数がすべて加算されてきたLINE MUSIC再生キャンペーンと今回のキャンペーンとは意味合いが異なるかもしれませんが、ともすればビルボードジャパンが同種のキャンペーン増加を見越して早い段階で措置に踏み切った可能性もあります。

上記ブログエントリーを昨日記したばかりの身として、この仮説が正しければビルボードジャパンの早期取組を支持します。ただしこの場合、ビルボードジャパンがソングスチャートのチャートポリシー(集計方法)変更を実施したとも言えるのではないでしょうか。

 

JO1「SuperCali」の動画再生指標については、①ミュージックビデオは欠損状態だったか、②欠損でない場合はキャンペーンの存在を踏まえたチャートポリシー変更を実施したか…少なくともこの2点を確認する必要があるでしょう。特に②の仮説が正しければ、ビルボードジャパンに対しチャートポリシー変更実施のアナウンスを強く望みます。

そしていずれにせよ、今回の上位曲において動画再生指標が様々な方向に作用したと強く感じています。

 

 

(※追記(10月21日7時48分):JO1「SuperCali」におけるYouTube再生回数とビルボードジャパンソングスチャート動画再生指標との乖離について、翌日のブログエントリーにて再度分析しています。JO1「SuperCali」、ミュージックビデオ再生回数とビルボードジャパン動画再生指標との乖離の理由を探る(10月21日付)をご参照ください。)