イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

radikoで聴かれた楽曲ランキングから実際のOA傾向との差を知る…ラジオ局に対する提案を記す

ラジオに関する興味深いランキングが発表されました。radikoで聴かれた延べ聴取回数ランキングをここでは”radikoランキング”と記し、このランキングの内容および私見を記します。

 

ラジオの中でradikoを使って聴いた方がどの曲を多くチェックしていたかが解る、4~9月を対象とするradikoランキングでは期待値の高い曲、そして実際にヒットした曲がより多くチェックされていることが判ります。主要31局のデータに基づくプランテックの週間ラジオOA回数ランキングや、そのデータを用いて独自に指標化したビルボードジャパン週間ソングスチャートのラジオ指標とは、比較的大きく異なると言えるでしょう。

(ラジオOAランキングやビルボードジャパンソングスチャートのラジオ指標は、長期間でみればradikoランキングに近づくかもしれませんが、後述する特徴は残るでしょう。)

radikoで2022年上半期に聴かれた楽曲TOP30>

1位 「ミックスナッツ」/Official髭男dism 726,1万回

2位 「Habit」/SEKAI NO OWARI 567,7万回

3位 「まつり」/藤井風 452,9万回

4位 「About Damn Time」/Lizzo 420,1万回

5位「Hold My Hand」/Lady Gaga 418.7万回

6位「新時代」/Ado 414.6万回

7位「喜劇」/星野源 394.4万回

8位「初恋が泣いている」/あいみょん 376.6万回

9位「M八七」/米津玄師 373.9万回

10位「LOVE'S ON FIRE」/山下達郎 371.4万回

11位「As It Was」/Harry Styles 367.8万回

12位「Walkin' In My Lane」/milet 293.0万回

13位「燦燦」/三浦大知 290.3万回

14位「ねがう夜」/aiko 286.1万回

15位「AOZORA」/THE HAJIMALS 285.3万回

16位「好きだ」/YOASOBI 279.8万回

17位「クロノスタシス」/BUMP OF CHICKEN 261.7万回

18位「恋風邪にのせて」/Vaundy 261.4万回

19位「3636」/あいみょん 260.7万回

20位「Call me back」/松任谷由実 with 荒井由実 255.4万回

21位「Bye-Good-Bye」/BE:FIRST 255.4万回

22位「BREAK MY SOUL」/Beyonce 249.7万回

23位「双葉」/あいみょん 236.4万回

24位「ダンスホール」/Mrs.GREEN APPLE 235.5万回

25位「雨燦々」/King Gnu 234.7万回

26位「I Ain't Worried」/OneRepublic 230.7万回

27位「たましいの居場所」/マカロニえんぴつ 228.1万回

28 位「陽はまた昇るから」/緑黄色社会 225.3万回

29位「Spinning World」/Perfume 224.8万回

30位「月の椀」/サカナクション 222.0万回

radikoで2022年上半期に聴かれた楽曲TOP30!~流行りの最新人気曲はこれだ!~ | 無料のアプリでラジオを聴こう! | radiko news(ラジコニュース)(10月14日付)より

 

プランテックによるOA回数ランキングやそれに基づくビルボードジャパンのラジオ指標で毎週上位に来る曲には、パワープレイ選出、ベテラン歌手の作品、時流やイベントを代表するもの、そして洋楽という特徴があります(下記ブログエントリー参照)。これは今回のradikoランキングを踏まえて抽出した今年度第2四半期以降のビルボードジャパンソングスチャートラジオ指標からも見て取れます。

radikoランキングで洋楽が2曲トップ10入りしているのはラジオOAされやすい曲の特性ゆえかもしれませんが、最上位の2曲および6位のAdo「新時代」はビルボードジャパン総合ソングスチャートで春から秋にかけて賑わせた曲であり、いずれもストリーミングが強いのが特徴。つまり、radikoをストリーミング的に利用するというユーザー(リスナー)の存在が見えてくると感じています。

(上記はOfficial髭男dism「ミックスナッツ」、SEKAI NO OWARI「Habit」およびAdo「新時代」における、最新10月12日公開分(10月17日付)ビルボードジャパンソングスチャートのCHART insight。黄緑がラジオ、青がストリーミング指標、そして黒が総合順位を指します。また「Habit」においては直近の30週分を表示。今年第2四半期以降ヒットしていること、ラジオが他指標に先駆け早くダウンしていること等が解ります。)

また、radikoの記事からも分かるように、あいみょん「初恋が泣いている」(8位)等においては配信リリース前にラジオで先行解禁されています。radikoのタイムフリー機能は一定条件下でリピート聴取が可能となるため、リリース前にチェックするというティザー(ティーザー)的な需要もradikoにはあるのではないでしょうか。

 

radikoをストリーミングやティザー的に利用する方の存在が可視化された一方、ラジオOA回数やそれに基づく指標とradikoランキングとの差は小さくないと言えるでしょう。

radikoの登場まではリスナーが録音したものを聴取する以外に繰り返し聴く機会は存在しなかったため、radikoの登場はラジオに新しい概念を与えています。そのradikoランキングの登場は、現行ラジオ局のOA回数や傾向と実際ヒットしている曲との小さくはない乖離、そしてradikoリスナーの需要とラジオ局や番組側の供給との差も示したものと思われます。

ならば、OA曲と実際のヒット曲との乖離を踏まえてラジオ局側が選曲を変えるべきかと問われれば、必ずしもそうではないでしょう。このradikoランキングを踏まえ、発売前にラジオで解禁する曲への注目度をより高める、洋楽需要を見越して訴求する等をより強く意識して行うことが重要と考えます。またOA傾向と実際のヒット曲との乖離は、OAランキングの集計対象局を拡大することで小さくなっていくのではないでしょうか。

しかし、今回のradikoランキングの対象となったのは60局にとどまります。radiko参加ステーションは民放で99局あり、ここに強い引っ掛かりを覚えます。

管理が徹底されていない以上、プランテックのラジオOA回数やそれに基づくビルボードジャパンソングスチャートのラジオ指標の対象局範囲を拡大することは難しいでしょう。この管理等の問題もまた、ラジオの影響力に響いていると捉えています(少なくともビルボードジャパンソングスチャートにおけるラジオ指標のウエイトはダウンしています)。

 

 

ラジオ局側は必ずしもOA曲をradikoランキングに沿わせなくてよいものの、その代わりに今回のradikoランキングとOA傾向との乖離を把握すること、ラジオ先行解禁等があればそれをきちんと訴求すること、OA曲を管理しSNSでもそのOA情報を発信してradikoを活用してもらうこと…これらを徹底することで、”ラジオで最新の/流行の音楽をチェックすることができる、だから聴く”という習慣づけにつなげることは可能と考えます。