毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。
8月3~9日を集計期間とする8月17日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、Sexy Zone「RUN」が前作を大きく上回るポイントを獲得し首位に立ちました。
【ビルボード】Sexy Zone「RUN」254,983枚を売り上げ総合首位獲得 米津玄師21曲チャートイン https://t.co/1f9fmNUpwe pic.twitter.com/rJlHp4MTED
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年8月12日
シングルCDセールスは前作「麒麟の子」の157.8%となる254983枚となった一方、ポイント前作比は171.6%増を達成しています。シングルCDセールス以上にポイント上昇率が高まった要因としては、移籍第一弾であり今回からミュージックビデオが用意されたことで動画再生指標が加算されたこと(同指標100位未満300位圏内)、ラジオエアプレイにおいて「麒麟の子」が85位だったのに対し「RUN」が6位と躍進したことが挙げられます。また今回、ルックアップが「麒麟の子」を大きく上回るという指摘もあり、ダウンロードやストリーミングが未加算の状況は変わらないながらも既存の指標群が大きく伸びたことになります。
2位をキープしたのはYOASOBI「夜に駆ける」。シングルCD未リリースながら今回遂に2万ポイントを突破しました。
前週比128.7%となる21274ポイントを獲得した「夜に駆ける」。この上昇率の高さは、初の首位獲得となった6月1日付の160.4%以来となります。サブスクの再生回数は『再生数が10,171,337回と自己キャリア最高値となる週間再生数を更新』していますが(『』内は上記記事より)、再生回数の増加率は前週比100.2%と微増。ストリーミング指標は有料サービスでの再生と無料とでウェイトが異なるため単純比較はできませんが、それでも今回のポイント増をサブスク再生回数に基づくストリーミング指標から見出すことは難しいと思われます。
#YOASOBI「#夜に駆ける」はMV再生数推定値が前週比75%爆増で3,500万近くなった模様。従来の歴代1位はピコ太郎の2,600万回だが、今回記録への公式言及が一切ないのは意味不明。YouTubeチャートでもここまでではないが23%増となっていたため爆騰の理由はあるはずだがまだ腹落ちする理由が見つからない。 pic.twitter.com/LQE1jD46j4
— あさ (@musicnever_die) 2020年8月12日
チャートの予想、分析を行うあささんのツイートを引用させていただきました(問題があれば削除いたします)。上記ツイートから続く一連のつぶやきを踏まえて本日私見を提示し、併せてビルボードジャパンのポッドキャストスタッフへ質問を行いました("#ビルボードポッドキャスト"とつけてツイートすることで質問が可能)。回答があればこちらでも紹介させていただきます。下記ツイートはいずれも、自身の一連のツイートの冒頭に当たる部分となります。
RT群について。8月17日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて #YOASOBI「#夜に駆ける」が2万ポイントを突破した主たる要因が動画再生指標急増にあるもののその急増の理由は不明とのこと。たしかに謎ですね。ただ、THE FIRST TAKEはオリジナル音源ではないゆえ合算されてはいけないと思うのです
— Kei (@Kei_radio) 2020年8月12日
ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標では、UGC(ユーザー生成コンテンツ)はどんなに短いものでも(曲のわずか数秒であったとしても)カウント対象になるのは、先に紹介したダイナソーJr.やイエス「Roundabout」の例で明らかです https://t.co/6GHf7i68YI
— Kei (@Kei_radio) 2020年8月12日
それにしても、YOASOBI「夜に駆ける」の2万ポイント突破のインパクトは本当に大きいと思います。あささんのツイートに似た感想とはなりますが、これによりCDセールス主体でポイントを稼ぐ作品が1位を獲得することはやや難しくなったと言えそうです。それら作品がTwitterやラジオエアプレ等において盛り上がりをみせているのは、デジタル未解禁の作品を中心に、如何にCDセールス以外の(既存の)指標を充実させるかを歌手側やコアなファンが考えたその結果と言えるのかもしれません。
しかしながら既存の指標群の充実よりも、接触指標群の充実こそポイント獲得の大前提となるのではということを、今回の米津玄師さんのソングスチャートでの躍進から強く感じることができるのではないでしょうか。
【ビルボード】米津玄師『STRAY SHEEP』が歴代2位の週間総合ポイントを記録して堂々の総合アルバム1位 https://t.co/Uo0MaK0tIP pic.twitter.com/ww45wjSuj7
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年8月12日
8月5日にリリースした米津玄師さんのアルバム『STRAY SHEEP』はCDセールス881576枚のみならず105263ダウンロードも記録し、『2019年7月8日に嵐の『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が初週で記録した週間総合ポイント歴代1位の記録に次ぐ歴代2位』を記録(『』内は上記記事より)。また週間ダウンロード数はビルボードジャパンの集計史上最多となりました。そしてアルバム発売日にサブスクにて、ハチ名義を含むほとんどの作品を解禁したことでソングスチャートにも大きなインパクトを与えています。
【ビルボード】YOASOBI「夜に駆ける」11週目のストリーミング首位 米津玄師22曲がチャートイン https://t.co/LhitWS2l8L pic.twitter.com/XbLcEKtK6m
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年8月12日
ストリーミングソングスチャート、100位以内においては『連名で発表したDAOKO × 米津玄師「打上花火」を含む計22曲がチャートイン。これは嵐の29曲に次ぐ数字で、2017年12月25日付で22曲をチャートインさせた宇多田ヒカルに並ぶ歴代2位タイとなる記録』を達成しています(『』内は上記記事より)。そして『STRAY SHEEP』収録の15曲はすべて100位以内に登場、それも55位までに全曲ランクインしているのです。
この動き、前日のブログエントリーで取り上げたSpotifyにおける米津玄師さんの動向と完全にリンクすると言っても過言ではないでしょう。ビルボードジャパンの集計期間内で、『STRAY SHEEP』収録曲はどれひとつとして日本のSpotifyデイリーチャート50位を下回ることはありませんでした。
そして昨日のブログエントリーでは米津玄師さんの解禁がSpotifyの再生回数全体を押し上げたであろうことにも触れましたが、これが複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートのポイント全体を押し上げたことは確実。シングルCDは6301→2988枚、ダウンロードは13975→11574DLといずれも10位の数値が前週を下回りましたが、ストリーミングの10位は3810245→4417388回再生と大きく上昇、そして総合50位のポイント数は1856→2386となっています。総合50位は昨年度半ばまで1000ポイントを下回ることが少なくなかったため、2000ポイント突破はあまりにも大きな躍進と言えます。無論、米津玄師さんのサブスク解禁効果は徐々に薄れていくとは思いますが、接触指標は所有指標に比べて降下が緩やかだと考えれば、また2週前にも総合50位が2000ポイントを上回ったことを踏まえれば、今後は"総合50位=2000ポイント"が基準になっていくと言えるかもしれません。
米津玄師「感電」はストリーミング指標が加算されたことで、チャート構成比においてストリーミング指標の占有率が5割弱、動画再生指標は4分の1弱となり接触2指標でポイント全体の7割強を獲得。これにより「感電」は以前紹介したロングヒットの条件に当てはまったものと考えられます。
今後、「感電」が主題歌に起用された『MIU404』(TBS 金曜22時)の盛り上がり如何によってはさらなるポイント上昇もあり得るでしょう。そうなると尚の事、シングルCDセールス主体にポイントを獲得する曲の首位獲得は難しくなり、且つ全体のポイントが上昇したならばロングヒットの点においても厳しくなると言えそうです。
米津玄師さんのサブスク解禁による大量エントリー、そしてYOASOBI「夜に駆ける」の2万ポイント突破…これらインパクトが、そもそもデジタルに明るくなかったり、また新譜のみサブスク未解禁という手法を用いる歌手にどう影響するのか? 今後を見守っていきたいと思います。