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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SiM「The Rumbling」がグローバルチャートに初登場…世界でのヒットの規模を拡大するために必要なこととは

昨日は合算に関するビルボードジャパンの様々なチャートポリシーを紹介した上で、結果的には合算すべきではないかという私見を記載しました。

ここでも紹介したSiM「The Rumbling」は2月7日月曜にフルバージョンがリリースされ、最新2月16日公開分(2月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートで67位に初登場を果たしました(同日付ソングスチャートはこちら)。実はこの曲、海外での人気が高いことが同チャートにおけるダウンロード指標の記事から読み取れます。

さらには、TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』のオープニングに起用されているSiMによる「The Rumbling」が、7,724DLを売り上げて、6位に初登場した。日本では2月7日に配信された同曲は、1月29日付の米ビルボード・ハードロック・ソング・チャート“Hot Hard Rock Songs”で首位を獲得するなど、国内外で注目を浴びている。

SiM「The Rumbling」は、たとえばSpotifyにおいてはアメリカを含む複数の国や地域でデイリー200位以内に到達。アメリカでは2月8日付で138位に初登場を果たし(同日付チャートはこちら)、また現在でも200位以内にランクインが続くブルガリアでは同曲のTVサイズ(短尺版)が、1月16日付以降フルサイズ版が登場するまでほぼ連日ランクインしていました。

SpotifyではTVサイズ版の世界における再生回数が今週3000万回を突破したSiM「The Rumbling」ですが、この曲の人気はSpotifyにとどまりません。2月4~10日を集計期間とする2月19日付グローバルチャートではGlobal 200において92位に初登場を果たし、またGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.では115位にランクインしているのです*1

グローバルチャートは2020年秋に米ビルボードが新設した、世界中のヒット曲を可視化するソングスチャート。主要デジタルプラットフォームでのサブスクや動画再生に基づくストリーミング、そしてダウンロードという指標群で構成されます。このチャートで「The Rumbling」が、Global 200においてはJ-PopでAimer「残響散歌」に次ぐ好成績を記録したのは凄いことです。

SiM「The Rumbling」は現段階でミュージックビデオやリリックビデオを用意していないことから、仮にこれらが用意されていたならばさらに高い順位を獲得したことでしょう。

 

SiM「The Rumbling」のリリースタイミングは、タイアップ先のテレビアニメ『「進撃の巨人」The Final Season Part 2』(NHK総合)の放送を踏まえて月曜となったものと思われますが、月曜はビルボードジャパンソングスチャートの集計開始日にあたるため、同チャートでも1週間フル加算に伴い100位以内エントリーに至りました。

その日本の音楽チャートが仮に米ビルボードやグローバルチャート、さらには今週ローンチした米ビルボードによるHits of the World等でみられるような金曜集計開始だったならば、そしてそれを意識した世界標準となる金曜リリースを日本の音楽業界も踏襲していたならば、SiM「The Rumbling」は世界の音楽チャートにおいて間違いなく、さらに高い位置に上り詰めたはずです。アニメが海外にも配信されているゆえ尚の事です。

 

日本においてはアニメのみならず、アニメタイアップ曲も世界的な人気を得ています。過去5年間に海外で最も再生された日本の歌手の楽曲トップ10のうち、首位を獲得したTK from 凛として時雨「unravel」(2014年)はアニメ『東京喰種トーキョーグール』の主題歌。他にも『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』等に用いられた曲がランクインしており、日本のアニメが如何に強いかがよく解るのです。

 

これらを踏まえれば、世界にも発信するアニメ作品の関連曲は、世界の音楽市場に倣ったリリーススケジュールを組むことで尚の事高い地位に上り詰めることが可能と言えます。そしてグローバルチャートへのランクインが如何に凄いかということを、日本の音楽チャートや音楽業界、メディアがきちんと拾い上げることも重要です。紹介することで、日本での認知度上昇や日本の音楽市場の活性化にもつながることでしょう。

デジタルが主要になった世界の音楽業界においては、フィジカルを制作することなく海外に進出できていると言えるのです。THE FIRST TAKE等は海外からのアクセス数も多く、またシティポップムーブメント等で日本の音楽が注目されていることを踏まえれば、海外を意識することは損ではありません。

そして日本でも音楽チャートが金曜集計開始、音楽業界が金曜リリースを標準化すれば、日本と海外とでチャート対策を分ける理由がなくなります(無論その地域に応じた施策は必要ではありますが)。海外を強く意識せずとも日本でのヒットが海外にも轟き、且つグローバルチャートにも掲載される可能性があるのです。

(中略)

ビルボードはHits of the Worldについて、少なくとも日本においてはグローバルチャート同様にストリーミング(動画再生を含む)とダウンロードを基としたソングスチャートを別途用意すべきだったと強く思います。それが海外の音楽ファンにストレスを与えず、且つ日本の音楽チャートや音楽業界の変革を促すことにつながったはずです。

今週米ビルボードが新設したHits of the Worldが、日本の音楽チャートについてはビルボードジャパンをそのまま紹介するのではなく、もしくはそのチャートに加えて、仮にグローバルチャートと同じ構成指標群によるチャートを用意していたならば、日本の音楽チャートや音楽業界の意識は変わったかもしれません。今からでもその用意を願うと共に、グローバルチャートのJ-Popランクイン記事を毎週用意することも提案します。

そして日本の音楽業界に対しては、J-Popが特にアニメタイアップ曲で海外にその名を轟かせることができることから、チャート上でも戦略を徹底してほしいと強く願います。

*1:なお米ビルボードではGlobal Excl. U.S.について、有料会員向けにのみ公開しています。この状況はJ-Popを含む世界中の曲の海外人気の可視化につながらず、個人的には公開を希望しています。今回は(おそらく米ビルボードとは関係なく)チャート動画を作成するYouTubeアカウント発の動画にて、Global Excl. U.S.の順位を確認しました。