イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 最新ソングスチャートからみえてきた合算の基準…ビルボードジャパンにすべてのバージョンの合算を再度提案する

(※追記(2023年6月11日15時55分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

最新のビルボードジャパンソングスチャートを踏まえ、ビルボードジャパンに対しすべてのバージョンをオリジナル版に合算することを希望し、提案します。

 

 

最新のビルボードジャパンソングスチャートにおいて、このチャートで長らく推測の域を出なかったTHE FIRST TAKEの合算する/しないに関する公式見解が、おそらく初めて示されたものと捉えています。

「残響散歌」は、オープニングを飾るTVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』が最終回を迎えるなか、テレビ朝日系『ミュージックステーション』、YouTube『THE FIRST TAKE』での実演など、メディア露出が増え、ストリーミング、ダウンロード、動画再生、シングルセールス、Twitter、カラオケの6指標のポイントを伸ばした。米津玄師の「Lemon」、Official髭男dismの「Pretender」「I LOVE...」と並ぶ通算7度目の総合首位で、特に、動画再生は前週比182%増の5,979,516再生をマークし、総合ポイント49%増を大きく牽引した。これは前述の『THE FIRST TAKE』の再生回数が合算されたことによる(注)。

 

(中略)

 

注:『THE FIRST TAKE』の合算は、実演楽曲が映像ではなく音源としてリリースされた場合、別計算となります。

 

異なるバージョンの合算は、米ビルボードやグローバルチャート(米ビルボードが世界200以上の地域における主要デジタルプラットフォームでのストリーミング(動画再生含む)およびデジタルダウンロードに基づき、2020年秋に新設したソングスチャート)では行われるものの、日本では合算についてのチャートポリシー(集計方法)が曖昧となっていました。そこで3年前に問い合わせを実施し、回答を紹介しています。

客演参加やリミックス等オリジナルバージョンと異なるものは分ける一方、言語の違いのみならば合算するというのがビルボードジャパンにおけるチャートポリシーでしたが、その後登場したTHE FIRST TAKEの動画はアレンジがオリジナルバージョンと異なりながらも、オリジナル版に基本的に合算される状態が続いています。

今回の総合ソングスチャート振り返り記事によって、THE FIRST TAKEの動画がオリジナルバージョンの動画再生指標に合算されることが明確化されました。またこのTHE FIRST TAKEバージョンが音源としてリリースされた場合、THE FIRST TAKEの動画はそのバージョンに合算される一方でオリジナル音源には合算されないとも言えます。この点は、THE FIRST TAKEバージョンが大ヒットしたDISH//「猫」で既に明らかでした。

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(DISH//「猫」オリジナルバージョンにおける上記CHART insightについては直近の120週分を表示。上が総合および構成8指標の推移を、下が動画再生指標のみを示しており、動画再生指標はライブ動画が公開される前から100位未満ながら300位圏内にランクインしていることが判ります。)

「猫」はTHE FIRST TAKEバージョンの音源リリース以前はオリジナルバージョンに、以降はTHE FIRST TAKEバージョンに合算されていると捉えることができるため、先述した説明と合致します。一方で、「猫」のオリジナルバージョンの動画再生指標に加算される動画はライブバージョンであり、こちらもオリジナル版とは音源が異なります。

オリジナルバージョンに音源が異なるライブテイクが加算されているのは矛盾していますが、これもTHE FIRST TAKEバージョンと同様の措置が採られたゆえと言えるでしょう。このチャートポリシーは理解できなくないものの、納得する方が果たしてどのくらいいらっしゃるかを考えれば、事務手続きの簡略化を図る意味でも全てのバージョンを合算したほうが好いのではと思うのです。ここでは以前から、そう提案しています。

 

今回ビルボードジャパンがTHE FIRST TAKEにおける合算する/しないの基準をおそらくはじめて明確化したその理由は、Aimer「残響散歌」が首位をキープし、さらにはポイントを前週のおよそ1.5倍に伸ばしたことに対する説明のためとみられます。この説明は有り難く思う一方で、本来はこちらから問い合わせる前に、または疑問を抱かれる前に基準を明確化することこそ、サービス提供者の責務ではないかと思うのです*1

 

 

合算する/しないの基準についてはこれまでのチャート分析を踏まえて自分なりに理解し、まとめ、提示してきたつもりです。しかしながら指標の基となるデータを提供する業者によって合算の基準が曖昧であり、ゆえに指標においてもぐらつきが存在しています。

動画再生指標同様に曖昧なのがラジオです。おそらくはラジオ局のOA情報登録時の問題(もしくは、厳しい物言いかもしれませんが登録時等の曲の扱いにおける意識の問題かもしれません)によってでしょう、オリジナルバージョンとリミックス等別バージョンが合算されるパターンが散見されました。

ところが今年、それとは異なる動きが登場しています。

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1月14日にリリースされた藤井風「きらり」のリミックス集『Kirari Remixes (Asia Edition)』の冒頭を飾る「Kirari (Original Remix)」は、反映初週となる1月19日公開分(1月24日付)および翌週のビルボードソングスチャートで100位未満ながら300位圏内となりました。ラジオ指標も2週目に登場していますが、この曲はオリジナルバージョンと別扱いとなっています。

このリミックスバージョンがラジオ指標で分けられていることもさることながら、ダウンロード指標でも別扱いになっていることが気になっていたのですが、藤井風さんのファンであるみっちー(Mitchie)さんがビルボードジャパンに問い合わせたことにより、以下のチャートポリシーが判明しています。

みっちー(Mitchie)さんの尽力に感謝申し上げます。

これらチャートポリシーは理解できなくはありません。その一方で、やはり様々なバージョンを、やはり合算したほうが楽ではないかと思うのです。

聴き手の方も、その多くがバージョン違いを認識しているとして、合算しても納得していただけると思うのです。先述したDISH//「猫」は、バージョン違いを合算すれば昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートでYOASOBI「群青」を上回り8位以内に入ることがデータから判明します。元の順位(オリジナルは14位、THE FIRST TAKE版は35位となり共にトップ10入りせず)を上回り、認知浸透度とより近くなることでしょう。

THE FIRST TAKEバージョンやリミックスEPの合算する/しないの基準を説明することは必要であり、今回THE FIRST TAKE版の説明が記載されたことは喜ばしく思う一方で、やはりすべて合算したほうが好いのではないでしょうか。

 

 

ビルボードジャパンにおいては合算する/しないの基準を厳密に設ける一方で、その認識や意識は社内で果たして徹底しているのか…そんな疑問を抱く例が最新のソングスチャートにおいて発生しています。

最新2月16日公開分(2月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートのダウンロード指標ではSiM「The Rumbling」が6位に登場しています。これをビルボードジャパンは記事にて初登場と記していますが、『「進撃の巨人」The Final Season Part 2』(NHK総合)のオープニングテーマである同曲はフルサイズリリースのおよそ1ヶ月前となる1月10日に"TV Size"バージョンを配信し、4週前にダウンロード79位を獲得しているのです*2

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(上記CHART insightにおいて、ダウンロード指標は紫で表示されています。)

ここから解るのは、まずビルボードジャパンの記事の書き手の方がチャートポリシーを十分に理解されていない可能性。無論これは言い過ぎのきらいもあり、純粋なミスによるものかもしれません。しかしこれは合算する/しないのチャートポリシーがはっきり周知徹底されていれば防げたとも言えるでしょう。

そしてショートバージョンが合算対象になることも解りました。尤もこれは先日紹介した氷川きよしさんに関するエントリー(→こちら)で紹介した「限界突破×サバイバー」のチャートアクションからも明らかではありました。また動画再生指標においても、たとえばジャニーズ事務所所属歌手によるミュージックビデオが基本的にショートバージョンながら合算されていることを踏まえれば、短尺版の合算も理解できます。

しかしながら、オリジナルバージョンと短尺版においては、昔の着うたフルと着うたくらい異なるものではないでしょうか。こちらにおいては、個人的には合算することにやや強い違和感を抱くのですが、そうでない方も多くいらっしゃるでしょう。その曖昧なチャートポリシーはやはり一本化する必要があると思うのです。

 

 

最新のソングスチャートでみえたTHE FIRST TAKEバージョンの合算する/しないの基準判明(およびこの動画の取り扱いに対するビルボードジャパンの初めての表明)、ショートバージョンの合算そしてリミックスの取り扱いを踏まえ、ビルボードジャパンが厳密なチャートポリシーを設けていることが解りました。しかしながら、その基準は難しい、もしくはややこしいと思われかねないのではないかと感じるのです。

ビルボードや、その米ビルボードが一昨年秋に新設したグローバルチャートにおいてはすべて合算するゆえ、それに倣ってビルボードジャパンもチャートポリシーを変更したほうが楽でしょう。そうすれば世界の音楽チャートも意識したリミックス施策等も採りやすくなるはずです。

合算においては、仮にオリジナルバージョンと異なる曲については1曲あたりのウェイトを下げることも視野に入れて議論してほしいと願います。議論を経た上ですべてのバージョンを合算しないと決めたとして、その基準は一度明確化すべきです。こちらからの問い合わせを受け、または今回の「残響散歌」におけるTHE FIRST TAKE動画の影響度の強さを踏まえた上で発表するのではなく、自発的に示してほしいと強く希望します。

*1:ちなみにこの考えは、自分のプライベートにおける業務が読み合わせの必要な約款を常に用いるものであるゆえ、必要以上に厳しく捉えているのかもしれませんが。

*2:1月19日公開分(1月24日付)ビルボードジャパンソングスチャート、ダウンロード指標はこちらで確認できます。