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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2022年度米ビルボード/ビルボードジャパン年間アルバムチャート上位候補作品がこの半月でリリースという件

この2週間ほどで、世界そして日本で重要なアルバムがリリース。2022年度の年間アルバムチャートにおける上位進出は間違いないでしょう。それがアデル『30』(11月19日リリース)、そしてYOASOBI『THE BOOK 2』(EP)です。

 

アデル『30』は6年ぶりとなるオリジナルアルバムとなり、ストリーミングも今回はじめて同時解禁。その効果もあって、日本時間の明後日発表予定となる12月4日付米ビルボードアルバムチャートでは今年最大となる週間ユニット数の獲得が見込まれています。

MRCデータへの最初の報告によると、『30』は11月19日の発売から11月22日までに全米で660,000以上のアルバム換算ユニットを獲得している。そのうち560,000枚以上が従来型のアルバム販売となっている。これにより、9月9日までの週に613,000ユニットを獲得したドレイクの『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』の初週を、『30』が上回った事になる。

ユニットという表記を用いるのは、米ビルボードにおいてはアルバムチャートがデジタルおよびフィジカルセールスのみならず、単曲ダウンロードのアルバム換算分およびストリーミング再生回数のアルバム換算分も合算されるため。ユニット換算では曲数の多い作品が有利になるのですが*1、アデルの勢いはそのような作品を凌駕することでしょう。

 

そして『30』はふたつの大きなインパクトを残すと言えます。

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上記表は米グラミー賞ノミネート発表、ならびにBTS「Butter」主要部門”不在”への私見(11月24日付)で用いたものですが、実は最新11月27日付米ビルボード各種チャートは2022年度に含まれていると考えられます。年度の切替タイミングは不明ながら既に2022年度に突入しているということは、『30』は同年度の年間アルバムチャートを制する可能性が十分なのです。

加えて、2021年暮れのアルバムリリース一覧をみると(List of 2021 albums (July–December) - Wikipedia参照)、首位登場が見込める作品はさほど多くないかもしれません。挙げるならば、12月3日リリース予定のポロG『Hall of Fame 2.0』、そして12月10日リリース予定のジュース・ワールド『Fighting Demons』くらいでしょうか。

年末に向けてはクリスマスアルバムが毎年のように上昇し、またソングスチャートの勢いを踏まえればストリーミングの興隆により年々そのインパクトは高まっており、それが新譜リリース減少の一因かもしれません。そのタイミングで、強力なヒップホップ作品群に先んじてリリースしたアデル『30』は2022年度の冒頭で大きなインパクトを残し、年間チャートをリードする存在となりそうです。

なお、収録曲の「Easy On Me」は既に米ビルボードソングスチャートで4週首位を獲得しており、アルバム『30』のリード曲として十分な役割を果たしています。そして次週は米ビルボードソングスチャートでの返り咲きが予想されるのみならず、恒例3指標すべてを制する完全勝利の可能性も高いのです。

 

 

日本においてはYOASOBIのEP『THE BOOK 2』が2022年度の大きな目玉となることでしょう。

EP『THE BOOK 2』には2021年度ビルボードジャパン年間ソングスチャートでトップ5入りをうかがう「怪物」をはじめ、ヒット曲が多数含まれます。また今年1月にリリースされたEP『THE BOOK』はフィジカルが枚数限定でリリースされながらも2021年度の総合アルバムチャートで現在まで一度も40位を下回ることなく、年間アルバムチャートでのトップ10入りを狙っています。

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ビルボードジャパンによるポッドキャストは最近YouTubeでもアップされるようになりましたが、木曜までに公開された最新回では2021年度のビルボードジャパン年間チャートが12月10日金曜午前4時に解禁するとアナウンスされています。つまりは次週発表分(11月22~28日を集計期間とする12月1日公開分(12月6日付))が2021年度最終週となります。

言い換えるならば、12月1日リリースのEP『THE BOOK 2』は2022年度初週にビルボードジャパンアルバムチャートで初登場を果たすことに。さらにEP『THE BOOK』もアンコールプレスされこの日リリースされます。リリース直後に日本武道館公演が予定されていますが、このスケジュールの組み立て方が絶妙であり、見事なのです。

YOASOBIは今年度上半期のビルボードジャパンアルバムチャートでEP『THE BOOK』が2位、そしてトップ・アーティスト・チャートでは総合首位に立ちました(詳しくはビルボードジャパンが2021年度上半期チャートを発表…特筆すべき7つのポイントとは (リンク訂正あり)(6月4日付)をご参照ください)。今年度の年間チャートにも注目ですが、YOASOBIが2022年度初週にロケットスタートを切ることは間違いないと言えるのです。

*1:曲数の多い作品が有利になるユニット換算については、米ビルボードにチャートポリシーの変更を希望しています。詳細はこちらで記しています。