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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

YOASOBI、再浮上なるか…ビルボードジャパンのArtist 100を踏まえた最近の動向と今後の推測

【YOASOBI、再浮上なるか】…今回のブログエントリーにおけるタイトルの表現に違和感を覚える方は少なくないかもしれません。2020年に大ブレイクを果たしサブスク時代を席捲する二人組を、ともすれば否定しかねない表現なのですから。しかしチャートアクションをみれば、ここ最近のYOASOBIの強くなさは気になるというのが私見です。

上記はArtist 100における2021年度以降のYOASOBIのチャート動向。CHART insight(→こちら)からArtist 100を選択し、YOASOBIをクリック(タップ)すると確認できます。Artist 100とはビルボードジャパンにおけるソングスチャートとアルバムチャートのポイントを歌手単位で合算したものですが、最新5月18日公開分(5月23日付)においてYOASOBIは4位に後退。トップ3からの陥落は2021年1月6日公開分(1月11日付)以来となるのです。

指標単位で気になったのは、紫で表示されるダウンロード。最新5月18日公開分(5月23日付)では13位に後退し、2020年12月16日公開分(12月21日付)以来となるトップ10圏外となりました。これはストリーミングの動向を踏まえれば理解できなくはありません。

上記はビルボードジャパンの2021年度集計期間初日を起点とする、日本におけるSpotifyデイリーチャートでのYOASOBI各曲の順位推移を示したもの。デイリーチャートは200位まで表示されますが、グラフ上は101位以下を割愛しています。YOASOBIのAyaseさんとikura(幾田りら)さんが共に参加しながら個別単位でのクレジットとなった、Creepy Nutsとの「ばかまじめ」も含めた一方、英語詞曲は除いています。

またこちらは、日本におけるSpotifyデイリーチャートでのYOASOBI各曲の再生回数推移を示したもの。先述した「ばかまじめ」を含み、他方英語詞曲は除いています。

他のサブスクサービスとは少なからず差はあるかもしれませんが、しかしサブスク時代で強さを発揮してきたYOASOBIにおいて、現在日本のSpotifyデイリーチャートトップ50に入っているのは「群青」「夜に駆ける」「怪物」および「三原色」の4曲にとどまります。「もう少しだけ」は5月16日にトップ50から脱落すると、50位の壁というSpotify独自の特性により急落してしまいました。この特性は下記で解説しています。

 

リリースに伴う曲数増加、および50位の壁以外には急落や急上昇しにくいSpotifyの特性を踏まえれば、Spotifyを含めたサブスクの再生回数等に基づくビルボードジャパンのストリーミング指標で急落することは考えにくいでしょう。他方ダウンロードにおいては、新曲が大ヒットのフェーズに入らなければリリース直後に急落する傾向がみられます。その新曲の強くなさについては、Spotifyの動向から見て取れます。

YOASOBIはミドリーズとの「ツバメ」(2021)、「もしも命が描けたら」(2021)そして「ミスター」(2022)が3曲続けて日本のSpotifyデイリーチャートで50位以内に到達せず、またビルボードジャパンソングスチャートで総合トップ10入りに至れていません(最高位は順に19位、35位、11位)。また「あの夢をなぞって (Ballade Ver.)」が3月末にリリースされながら、日本のSpotifyデイリーチャートでは一度も200位以内に入りませんでした。最近の作品における訴求力の強くなさが、Artist 100におけるダウンロード指標トップ10および総合トップ3からの陥落の一因になったと言えるでしょう。

 

 

その一方で、YOASOBIには注目の動きが複数見られます。本日までの1週間に様々なアナウンスが用意された(されている)のです。

「ミスター」のミュージックビデオは本日20時にプレミア公開。動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)がきちんと付番されたならば、5月25日公開分(5月30日付け)、そしてそれ以上に6月1日公開分(6月6日付)のビルボードジャパンソングスチャートに影響してくることでしょう。

またYOASOBIはROCK IN JAPAN(上記ツイート参照)をはじめ、RISING SUN、FUJI ROCKといった大型の音楽フェスティバルに相次いで参加を表明。音楽フェスでのパフォーマンスはYOASOBIファン以上に音楽好きや音楽フェスファンに響くことでしょう。

そしてメンバーのikuraさんは、幾田りら名義として単独では初となるTHE FIRST TAKEに出演。「スパークル」は日本のSpotifyデイリーチャートで最高51位を記録しており、動画の評判如何では50位の壁を突破、且つビルボードジャパンソングスチャートでの上昇も期待できます。

THE FIRST TAKEでは通常二度出演し、一度目出演の3回後に新曲を披露する傾向がみられます。幾田りらさんはドラマ『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS)主題歌に「レンズ」を提供しており、ともすれば6月1日水曜のTHE FIRST TAKEで同曲を披露する可能性があります。ドラマと絡め放送日の5月31日火曜、もしくはビルボードジャパンでのチャートアクション最大化を狙い30日月曜に解禁するかもしれません。

 

 

音楽フェスティバルへの出演やソロ活動の充実は、YOASOBIのコアファン以外への注目度も高めることにつながるでしょう。それらの成功が最終的にYOASOBIへの注目度再拡大につながるならば、Artist 100でのトップ3返り咲きも十分考えられます。

そして同時に、必要なのは2022年度における大ヒット曲の登場でしょう。今年の顔たる曲が生まれれば過去作品への注目度も上がります。尤も大ヒットの用意は容易ではないものの、施策の巧さ、且つそれらをごく自然に、背中を押す感じで訴求できるYOASOBIの対応力を踏まえれば、大ヒット曲登場も期待できるのではないでしょうか。