毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
7月12~18日を集計期間とする7月21日公開(7月26日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。BTS「Butter」が3位に後退、2位には2週連続で彼らの「Permission To Dance」が入り、そしてSnow Man「HELLO HELLO」がフィジカル指標初加算に伴い首位を獲得しました。
【ビルボード】Snow Man「HELLO HELLO」820,349枚を売り上げて総合首位獲得 https://t.co/CV2sy3QINE pic.twitter.com/unyKc5fcY9
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年7月21日
ビルボードジャパンは今年下半期(6月2日公開(6月7日付))以降、フィジカルセールス指標のウェイト減少を実施しましたが、Snow Man「HELLO HELLO」はそのチャートポリシー変更後最多となる31290ポイントを獲得しています。
特筆すべきはルックアップ。この指標だけで15000ポイント以上を獲得しているのです。ルックアップはパソコン等にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスした数を指しますが、ファンの方々の取り込み率が高いのみならず、レンタル需要の大きさも想像できます。
さて今週は3曲がトップ10内に初登場。そのうち10位には桑田佳祐「SMILE~晴れ渡る空のように~」がランクインしています。
東京オリンピック民放共同企画「一緒にやろう2020」応援ソングとして昨年1月24日にメディアにて音源が解禁。ラジオでは最高2位を記録し、その勢いでこれまでに二度100位以内に入っていたこの曲が、7月12日のデジタル解禁に伴い総合10位に登場しています。
民放テレビ局向けの曲ながらラジオでも強さを発揮する理由は東京オリンピックが近づいたことに加え、桑田佳祐さんがラジオ番組のレギュラーを持っている等、ラジオへの貢献度の高さゆえと考えられます。先月、桑田さんが監督した映画『稲村ジェーン』のBlu-rayおよびDVDがリリースされるタイミングで「真夏の果実」が上昇したのは、その傾向の最たるものです。
他方、チャートアクションにおいて気になる点がふたつあります。ひとつは動画再生が300位以内に入っていないこと。7月16日に下記動画を公開したのですが、こちらは短尺版ゆえ再生回数が伸びなかったと言えるでしょう。
今回の曲をフルバージョンで楽しめる動画は、ともすれば動画再生指標のカウント対象であるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されていないかもしれません。Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」といった、NHK公式YouTubeアカウント発の動画でも同種の傾向がみられており、メディアに関わる方のISRC付番の意識を高める必要があると考えます。
もうひとつ気になるのは、ストリーミングの低さ。ダウンロードが3位に対し、サブスク等の再生回数を基とするストリーミング指標は加点されているものの100位に満たない状況です。
サブスクに強い歌手は2010年代後半以降に登場した方が多く、一方でそれ以前にデビューした方は所有指標の強さが目立つ傾向があるのですが、今回の曲もそれをなぞったと言えます。またファンの方々においても、好きな歌手がデビューした時代と音楽を聴く環境や行動とがリンクすることが多く、その点においてもサブスクにシフトしにくかったのかもしれません。
このストリーミングを上昇させるためのヒントは、桑田佳祐さんのラジオ番組における施策にあります。
『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM/JFN)ではOA曲リストが各デジタルプラットフォームでプレイリスト化され、毎週更新されています(上記リンク先より、各デジタルプラットフォームへ遷移できます)。この試みを番組単位ではなく、放送局が行うのはどうでしょう。
ラジオは接触指標ではあれど、選曲権がユーザーにはほぼありません。しかし、好きな放送局やDJの紹介で知った曲には、特別な思い入れが宿ることが多いと考えます。OA曲リストをデジタルプラットフォームにてプレイリスト化し、ユーザー(リスナー)が曲との出会いをより深める場を設けるのはどうでしょう。すでにOA曲リストは多くの局が採用しているため、そこから一歩先へ進めることは可能と言えます。
ともすればラジオ局は、デジタルプラットフォームをライバル視し、今回の提案に対しては自身のリスナーが逃げかねないと思うかもしれません。しかし聴取率が全体的に下がっている状況ゆえ、やれることを片っ端からやってみてラジオへの信頼度を高めてほしいと思う自分がいます。
桑田佳祐さんの今回の曲は日本中のラジオ局でかかっていたと聞きます。各局がデジタルプラットフォームにOA曲リストのプレイリストを用意すれば、ストリーミング指標の上昇も夢ではなかったはずです。