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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標とOAランキングの順位の差から強化方法を探る

男性アイドル/ダンスボーカルグループはビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標において強い状況が続いています。

最新10月25日公開分ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標では藤井風「花」(総合ソングチャート7位)を挟み、IMP.「SWITCHing」が1位(総合11位)、MAZZEL「Carnival」(総合4位)が3位にランクイン。この指標は全国31のラジオ局におけるOA回数(プランテック調べ)に各放送局の聴取可能人口等を加味して指標化されるのですが、OA回数ランキングでは「花」「Carnival」「SWITCHing」の順となっています。

ラジオOA回数ランキングとビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標で順位が異なるのは、IMP.「SWITCHing」において『オンエア獲得のほとんどが関東・関西のFM局と局地的』であり、聴取可能人口が多いラジオ局でのOAが指標面で有利に作用したゆえといえます(『』内は上記記事より、以下同様)。他方藤井風「花」は1局を除く30局でOAされており、聴取可能人口に関係なく全国各地で流れたことが記事から解ります。

最近は男性アイドル/ダンスボーカルグループの作品がラジオ指標で強い状況ですが(下記リンク先参照)、最新週においてMAZZEL「Carnival」は『ウィークデイの帯コーナー/番組のプロモーション枠を基盤にオンエアを積み上げ急伸』ゆえ、放送局やOA時間に偏りがあるといえます。そして「Carnival」およびIMP.「SWITCHing」においては『現時点ではAM局でのオンエアが確認されておらず』という状況です。

 

ラジオ指標はユーザー(リスナー)に選曲権がないため接触指標の中でも特殊であり、受動的と呼べるものです。そしてOAの動機となるのがユーザー(リスナー)によるリクエスト、放送局のパワープレイ(ヘビーローテーション)やプロモーション、また番組のDJやスタッフによるセレクトとなります。藤井風「花」はリクエストによるOAもトップと記事から判る一方、他2曲については二番目の動機に基づくOAが多いと考えられます。

ラジオ指標の強さは素晴らしいですが、指標化時には局地的なOAが有利でもリクエストの多さに伴いまんべんなくOAされたほうが曲の浸透には重要と考えます。聴き手に選曲権のないラジオで偶然その曲に触れライト層やコアファンに成る、その偶然の機会の創出には幅広い時間帯でのOAがより重要でしょう。そしてリクエストの継続が長期OAにつながるのみならず、ストリーミングの長期ヒットにもリンクすると捉えています。

 

上記は2023年度におけるビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標上位20曲の推移を示した表。青が旧ジャニーズ事務所所属歌手、灰色っぽい青はLDH所属の男性歌手、緑が旧ジャニーズ事務所およびLDH所属以外の男性歌手(いずれもグループ)、紫がK-POP男性歌手、そしてオレンジが男女にかかわらずK-POP以外の洋楽を指します。

この中で1ヶ月以上ランクインしている曲はほぼなく、ジョングク feat. ラトー「Seven」の8週が際立つ状態です。さらにピンクで色付けしたYOASOBI「アイドル」については、通算17週に渡りラジオ指標20位以内にランクインしています。そしてこの2曲は下記CHART insightからも解るようにストリーミングが強く、且つ総合ソングチャートでも上位にランクインを続けている状況です。

(CHART insightでは総合チャートが黒、ラジオが黄緑、ストリーミングが青で表示。YOASOBI「アイドル」はストリーミング指標において、最新10月25日公開分まで常時3位以内をキープしています。)

 

ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標は他指標より入れ替わりが激しいゆえ、その中で勢いを保つ曲こそラジオ業界のみならず受け手であるユーザー(リスナー)に支持されている証拠といえるでしょう。そして長く流れる曲は放送局のパワープレイ(ヘビーローテーション)やプロモーションよりも番組のDJやスタッフによるセレクト、そしてユーザー(リスナー)によるリクエストの継続がOAの動機となっているはずです。

無論その動機には、総合ソングチャートや他指標(特に総合チャートへの影響力が大きいストリーミング)でのヒットを考慮した番組側の選出もありますが、ラジオ指標でのヒットおよびライト層の獲得を目指すには積極的なリクエスト(とそれに因るOA)が重要になるものと考えます。昨年下記エントリーを記載したのですが、あらためてこの提案の重要性も感じた次第です。