(※追記(12月13日12時08分):12月6日公開分のビルボードジャパンソングチャートの記事を貼付していなかったため、実施しました。失礼いたしました。)
今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週のエントリーはこちら。
最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。
【ビルボード】Ado「唱」が通算10度目の総合首位、tuki.「晩餐歌」が初のトップ10入り https://t.co/o3QjiL3bUe
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年12月6日
まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポストにて簡潔に説明しています。
【ビルボードジャパンのCHART insightについて】
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年7月14日
リンク先:https://t.co/NVZ8bHjac1
<色について>
黒:総合順位
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
オレンジ:ルックアップ(2022年度で終了)
水色:Twitter(2022年度で終了)
赤:動画再生
緑:カラオケ
【ビルボードジャパンのCHART insightについて】(続き)
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年7月14日
<色について>
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能)
<チャート構成比>
最新週、もしくは300位以内最終在籍時における指標毎のポイント構成
<2023年11月29日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて
20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>
・NEWS「ギフテッド」 3位→100位未満(300位圏内)
・Kep1er「Grand Prix」 6位→100位未満(300位圏内)
・YOASOBI「Biri-Biri」 14位→34位
前週フィジカルセールスの強さに伴いトップ10入りを果たしたNEWS「ギフテッド」およびKep1er「Grand Prix」がトップ10から100位圏外へダウン。NEWSはデジタル未解禁ということもありますが、旧ジャニーズ事務所所属歌手の中で2010年代前半以前デビューのグループが基本的に動画再生指標に強くない傾向が今回も表れています。
YOASOBI「Biri-Biri」もダウンしていますが、サブスク等の再生回数を基とするストリーミング指標が1週間初フル加算となった前週に上位に進出していたことは日本の歌手では珍しいかもしれません。このことは、YOASOBIがリリースタイミングにてサブスクできちんとチェックされる傾向にあることを示しており、そこから先、ライト層への継続的な波及が社会的ヒットに至るかどうかの分岐点と捉えていいでしょう。
続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。
<2023年12月6日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
20位までに初めて登場した作品のCHART insight>
・3位 (再登場) =LOVE「ラストノートしか知らない」
・4位 (初登場) KID PHENOMENON「存在証明」
・15位 (初登場) 桑田佳祐 & 松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」
・17位 (初登場) n.SSign「NEW STAR」
4曲ともストリーミング指標300位未達に伴い、同指標未加算となっています。その中にあって、=LOVE「ラストノートしか知らない」は5週前にストリーミング指標39位に到達していましたが、これは同曲がLINE MUSIC再生キャンペーンを先行配信直後に実施したことに伴うものです。
【お知らせ】
— =LOVE_official (@Equal_LOVE_12) 2023年10月19日
15thシングル
『ラストノートしか知らない』
LINE MUSICキャンペーンスタート⟡.·
LINE MUSICで「#ラストノートしか知らない」をたくさん聴いてくださった方に、回数に応じて応募特典をプレゼント🎁
▼詳細https://t.co/N29f70hqIz
新しい特典も追加されています❄️゛#イコラブ pic.twitter.com/Mj3zer7CNZ
LINE MUSIC再生キャンペーンはライト層の支持に伴いロングヒットする傾向のあるストリーミング指標においてコアファンの熱量をより強く動員し、所有指標的な動向をもたらします。ゆえにキャンペーン採用曲のほとんどはその終了後にストリーミング指標が急落するのですが、=LOVE「ラストノートしか知らない」もその傾向をなぞりました。
「ラストノートしか知らない」はフィジカルセールス初加算週にもかかわらずストリーミング、そして動画再生といった接触指標群が300位以内未達により加算されていない状況ゆえ、次週の総合チャートにおける急落の可能性は高いでしょう。
KID PHENOMENON「存在証明」がラジオ指標を制し、桑田佳祐 & 松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」が同指標2位に。一方でラジオ指標の基となるOAランキング(プランテック調べ)では順位が逆転しています。
2023年12月6日発表のラジオ・オンエア・チャート(集計期間:2023年11月27日〜12月3日プランテック調べ)では、桑田 佳祐&松任谷 由実「Kissin’ Christmas(クリスマスだからじゃない)2023」が1位を獲得した。
(中略)
JFN系列局では12月1日より“JFN 2023 ウインター・レコメンドソング”と銘打って大量オンエアされるなか、さすがに他局からも広く注目され、調査対象となる全てのFM/AMステーションでオンエアを獲得。
2位はKID PHENOMENON「存在証明」が前週80位から急浮上した。
(中略)
複数番組ではコメント出演も果たしているが、大量オンエアの大半はウィークデイの帯番組/コーナーといった定期プロモーション枠での積み上げだ。また、CMスポット枠でまとまったオンエアを確保した局ではリクエストオンエアが見られるなど、訴求効果と思われる状況も確認された。
ビルボードジャパンは、全国31のラジオ局におけるOAランキングに基づき、各局の聴取可能人口等を踏まえてラジオ指標を算出します。ゆえにKID PHENOMENON「存在証明」は放送局に偏りがありながらもおそらくは聴取可能人口の多いところでよく流れたことが影響しているといえるでしょう。一方でそのような訴求の場合、訴求(施策)効果の終了に伴いラジオOA、そしてラジオ指標でも急落する可能性は高いといえます。
ラジオは接触指標の中でも特殊であり、ライト層はもとよりコアファンにも選曲権がありません。リクエストしたとしても採用されるかは不明ゆえ、尚の事です。言い換えればいつ何時流れるかは基本的に分からないため、偶然OAに触れてその曲が気になりライト層やコアファンに成るという方もいらっしゃるかもしれません。その偶然の機会をどう必然にするか、歌手側は有効な施策を用意する必要があるでしょう。
ラジオ指標化時には逆転を許したものの、桑田佳祐 & 松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」はOAランキングで首位に。これはラジオ局がベテランを好むこと、また両名ともレギュラーラジオ番組を持っていることが影響しています。
加えて公式動画はオーディオのみの模様ながら、無料会員向けにきちんと公開していることで動画再生指標87位につけたことも好い動きです。この公式オーディオを用意することの重要性については、藤井風「花」やKAN「愛は勝つ」でもはっきり示されています。
他方、桑田佳祐 & 松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」はストリーミングが300位に達せず、指標未加算となりました。これは日本のベテラン歌手特有の課題と言っても過言ではなく、解決は必須でしょう。
先程はラジオにおいて、『偶然OAに触れてその曲が気になりライト層やコアファンに成るという方もいらっしゃるかもしれません。その偶然の機会をどう必然にするか、歌手側は有効な施策を用意する必要があるでしょう』と記しました。
しかしこの課題は歌手側だけに与えられたものではないと考えます。ラジオ局側においても、OAリストデータベースを充実させることや、曲のOAからサブスク(YouTubeも含む)にスムーズに移行できるシステムを構築することが望ましいのではないでしょうか。仮にそれができるならば、たとえばラジオ指標の基となるOAデータの対象を全国100近い県域放送局に拡げることも可能かもしれません。