先週水曜に発表された最新3月2日付ビルボードジャパンソングスチャートでは、Snow Man「D.D.」が7位に、SixTONES「Imitation Rain」が9位にランクイン。「D.D.」は5週連続トップ10入り、「Imitation Rain」は返り咲き且つ通算4週目のトップ10入りを果たしています。さて、この両者の最新週におけるチャート構成比や各指標の順位には色々と注目すべき点があります。ロングヒットや年間ソングスチャート上位登場の可能性はどのくらいあるでしょうか?
弊ブログでは先月、ロングヒットの法則ともいえる、ロングヒットしている曲に共通する傾向を紹介しました。
ロングヒット曲のCHART insightにおけるチャート構成比をまずはチェックの上、「D.D.」および「Imitation Rain」と比較してみましょう。
ここまでの状況をみると、「D.D.」および「Imitation Rain」は未だダウンロードおよびサブスクでの解禁が成されておらず、またミュージックビデオもフルバージョンではないことから、デジタル指標群の強くなさが目立ちます。ロングヒットに至る曲はサブスク再生回数に基づくストリーミング指標、そして動画再生指標が安定した強さをみせるため、「D.D.」および「Imitation Rain」はデジタル未解禁が大きく響いている印象。カラオケもかなり早い段階から100位以内に登場していましたが、勢いを増しているとは言い難い状況です。他方、それら指標群を補うかの如く躍進するのがTwitterの高さで、チャート構成比に占めるTwitter指標は「D.D.」でおよそ5割、「Imitation Rain」に至っては6割以上に。双方のカップリング曲も強い状態が続いていますが表題曲はさらに強く、最新チャートのポイントを踏まえれば(3月2日付ソングスチャートはこちら)、2500ポイント以上をこの1指標から獲得しているのです。
Twitter指標においてはさすがに強すぎます。これは良い意味でもそうでない意味でも言えることで、カップリング曲も含めここまで強さを発揮し続けると同指標が社会的ヒットと大きく乖離し、近日中にウェイトが下がる措置が採られるのではないかと考えます。これは何もSnow ManとSixTONESを不利にする措置を急げということではありません。弊ブログでは社会的ヒットと著しく乖離する指標は議論すべきだと、以前から指摘しています。
Twitter指標の導入意図とは異なり、現状においてどんどんファン同士による内々の盛り上がりにシフトしてしまっていること(これはTwitterで散見されるファンの活動を見れば明白)や、Twitter指標がサブスク未解禁歌手等を補填していたであろう役割が解禁歌手が増えたことで意味を成しにくくなったことを踏まえれば、Twitter指標は大きくウェイトを下げるか、米ビルボードのようにSocial 50という独立したチャートに移行する等の議論を早急に行う必要があります。さすがにTwitterだけで週に3000ポイント近くというのは健全ではありませんが、Twitter指標にメスが入らないならば、このままポイントを獲得し続けて年間ソングスチャートで上位進出することは十分考えられます。それでも、毎週この勢いをキープさせるのはファンにおいても負担なのではと思うのです。
その年間ソングスチャートについて。以前、シングルCDセールス指標が初加算されたタイミングで、Snow ManおよびSixTONESのデビュー曲をKing & Prince「シンデレラガール」と比較しました。「シンデレラガール」は2018年の年間ソングスチャートで12位に入っていますが、「D.D.」および「Imitation Rain」はどうなるでしょう。以前一度比較しましたが、CD指標群の加算から5週目に当たる今回、あらためて比較してみます。
Twitter指標の強さは勿論のこと、ミュージックビデオが1分のティーザーだった「シンデレラガール」比べれば強くなっていること、2019年度から新設されたカラオケ指標の存在等、「シンデレラガール」に比べて「D.D.」および「Imitation Rain」が勝っていると捉えるのは自然なことかもしれません。
シングルCDの売上枚数についてはKing & PrinceとSnow ManおよびSixTONESにそこまで差がないように思うのですが、一方でシングルCDセールス指標では順位に大きな差が生じています。実はKing & Princeが「シンデレラガール」でデビューした翌週にはV6「Crazy Rays」が、更に翌週にはSexy Zone「イノセントデイズ」が立て続けにリリースされており、「シンデレラガール」はセールスが良くても先輩方の後塵を拝すると例えられてもおかしくない形となりました。他方Snow ManおよびSixTONESの場合は嵐のデジタルシングルの存在はあれど、先週水曜にHey! Say! JUMP「I am」がリリースされるまで1ヶ月以上、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDリリースがありませんでした。なお今週水曜発表の最新ソングスチャートでは「I am」首位獲得の可能性が高いことが予想されます。
【先ヨミ】Hey! Say! JUMP『I am / Muah Muah』が17.7万枚で現在シングル首位、本日ライブ生配信の22/7が続く https://t.co/duaRg4k3XR pic.twitter.com/QjUxk9SFeB
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年2月27日
順位の差にはこのような事情も見て取れ、それだけこの2組に事務所側が注力する姿勢を見ることが出来ます。また、嵐がこのままシングルCDをリリースしなければ同事務所内のライバルも減る形となり、その意味では「D.D.」および「Imitation Rain」の上位進出はある程度見込めるでしょう。しかし、昨年の年間ソングスチャートでは所有指標よりも接触指標に長けた曲のほうが上昇する傾向があり、つまりは歌手のファンではなくとも歌手や曲に興味は抱いているいわゆるライト層の拡充こそ、上位進出の鍵なのです。事実、2年前に比べてサブスク再生回数を基にしたストリーミング指標の水準は飛躍的に高まっており、サブスク未解禁の曲は今後ますます不利になることが予想されます。
ライト層への浸透の重要性は昨年の年間ソングスチャート(→こちら)を見れば明らかで、同年の年間シングルCDセールスチャート(→こちら)の上位10曲における総合ソングスチャートの最高位は欅坂46「黒い羊」の14位。総合ソングスチャートトップ10のうちシングルCD未発売(ゆえにシングルCDセールスおよびルックアップの2指標を獲得出来ない)が2曲あることを踏まえれば、ストリーミングや動画再生といった接触指標群がシングルCDセールスより重要な意味を持つことがよく解ります。そして総合ソングスチャートトップ10のうちドラマもしくは映画タイアップが6曲、『みんなのうた』(NHK総合ほか)に用いられたFoorin「パプリカ」を含めれば7曲という多さを考えると、主題歌というタイアップがライト層拡大に大きく貢献することもみえてきます。その意味では、「Imitation Rain」および「D.D.」が「シンデレラガール」並みに伸びていくのかは難しいのではというのが私見です。
結果的に同じ結論の繰り返しになってしまうのですが、「D.D.」および「Imitation Rain」がロングヒットに至るためにはダウンロードおよびサブスクの解禁、ミュージックビデオフルバージョンでの登場が必須です。ビルボードジャパンは各種チャートについて適宜見直し、時代に合わせてチャートポリシーを変更していることから、Twitter指標にメスが入ることも比較的容易に想像が出来ます。コアなファンの熱心さはシングルCDセールス(や、先行ダウンロードがあればそちらもほぼ間違いなく手に入れるでしょう)に表れているわけですから、ライト層に浸透させることこそロングヒットや年間ソングスチャート上位進出への鍵だということは自明です。
【ジャニーズをデジタルに放つ新世代。】というキャッチコピーから、ダウンロードやサブスクへの進出を期待する方は多かったのではないでしょうか。仮にジャニーズ事務所側がデジタルイコールYouTubeの意味でキャッチコピーを用いたのならば、曲解する側の問題だと言われるかもしれないのですが。