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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

新曲が初登場しやすい曜日は、”50位の壁”とは...日本におけるSpotifyデイリーチャートの特徴をまとめる (2025年9月版)

日本のSpotifyデイリーチャートを日々追いかける者として、今回のエントリーでSpotifyチャートの特徴をまとめます。今回の内容は2024年3月13日付のエントリー(→こちら)を加筆修正したものです。

 

<日本のSpotifyデイリーチャートにおける特徴>

 

 

上位曲の再生回数推移

海外ではサブスクサービスの人気が鈍化、もっといえば頭打ちになっているといわれています。一方日本では『「ストリーミング」は前年比107%の1,132億円と伸長』という状況です(『』内は2024年年間音楽配信売上1,233億円~11年連続プラス成長 | 一般社団法人日本レコード協会のプレスリリース - PR TIMES(3月3日付)より)。

ただし、日本のSpotifyにおける200位の再生回数推移をみると伸び具合は鈍化しているといえます。これは昨年大ヒットしたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の登場以降、直近でデイリー最高再生回数記録を更新した米津玄師「IRIS OUT」の登場まで特大ヒットがなく、牽引材料が乏しかったことが影響したかもしれません。ユーザー数が増加したとして、ヒット曲以上に多様な音楽が聴かれるようになったとも考えられます。

それでも、「IRIS OUT」の登場やストリーミングに強い歌手の作品がリリースされたことで200位の再生回数は上昇し、9月21日付では歴代、翌22日付では平日において過去最高を更新しています。

 

 

ビルボードジャパンソングチャートにおける影響度

Spotifyビルボードジャパンソングチャートで最も大きな影響力を持つストリーミング指標のいち要素。そのストリーミング指標は各サブスクサービスおよびYouTubeのオーディオストリーミングによる再生回数を基に、有料会員の1回再生が無料会員によるそれよりウエイトが大きくなる形で計算しています。大ヒット曲はこの指標がポイント全体の半分以上を占め、そしてロングヒット曲はこの指標が安定しているのが特徴です。

(なおビルボードジャパンは2025年度下半期より、総合100位以内に52週ランクインした曲に対しその翌週以降、ストリーミング指標化時に減算処理を施すというリカレントルールを採用しています。これによりロングヒット曲の総合上位進出は減少しています。)

ストリーミング指標の基となる再生回数においてSpotifyは全体のおよそ2割を占め、Apple Musicに次ぐサービスとみられています。ただしApple Musicは週間チャート100位までの順位が可視化される一方、Spotifyは200位までの順位および再生回数を公開しています。なお筆者はSpotifyの日々の動向について、Xにて発信しています。

 

 

ロングヒット曲が多くランクイン

サブスクサービス全体ではロングヒット曲が多い傾向にあります。日本のSpotifyでは最新9月22日付デイリーチャートにて、Mrs. GREEN APPLE「青と夏」(11位)は2,626日連続、back number「高嶺の花子さん」(15位)は2,398日連続、Vaundy「怪獣の花唄」(16位)は1,731日連続で200位以内エントリーを果たしています。最長連続エントリーはあいみょん「君はロックを聴かない」(60位)の2,776日となります。

 

 

再生回数推移における曜日等の特性

再生回数は平日において水曜がやや高い一方で金曜が低く、また平日より土曜や日曜そして祝日が上昇する傾向にあります(なお以前のような"土曜<日曜"の法則は成り立ちにくくなっていると捉えています)。これは日本において金曜は飲み会等、音楽聴取以外の時間が多いことが背景にあると考えられます。

他方、海外では音楽チャートの集計期間初日となる金曜に新曲がリリースされることが一般的であり、特にアメリカでは新曲リリース曜日の浸透度や音楽チャートへの意識が高いとみられることもあってか金曜の再生回数が伸びる傾向にあります。また土日は金曜ほどの再生回数には達していない状況です。

 

なお上位曲の再生回数はクリスマスイブやクリスマス当日には関連曲の浮上に伴い上昇、一方で大晦日から三が日にかけてはダウンする傾向にあります。また、たとえば2024年において元日に発生した能登半島地震以降、再生回数が以前の水準に戻るまで時間がかかったと捉えています。台風等の自然災害によっても一時的な減少がみられますが、いずれの場合も上位曲全体の再生回数が下がっているという状況です。

 

 

新曲の上昇傾向について

初登場しやすい曜日は

サブスクサービスでは全般的に、新曲がリリース当初から上位に進出することは少ない状況です。その中で、注目度の高い曲はリリース日から上位に進出する傾向にあり、Spotifyにおいてはリリース前日にフライング的な形でランクインすることもあります。フライングでの初登場は、Spotifyにおける一日の区切りが午前9時とみられていることに起因しています。

新曲が200位以内に初登場しやすい曜日のひとつは水曜であり、日本のSpotifyがセレクトする新曲プレイリスト"New Music Wednesday"の更新日となります(執筆時点における登録ユーザー数は25万強)。また強力なプレイリストは他にも存在し、たとえば"Tokyo Super Hits!"は執筆時点で99万近い登録ユーザー数を誇ります。

日本では新曲のリリース曜日が統一されていない、また新曲をサブスクで聴く習慣がまだ徹底されているとは言い難いこともあり、強力なプレイリストの影響力が大きいというのが自分の見方です。一方で最近は音楽チャートでの上位進出に意欲的な歌手が増えたためか、ビルボードジャパンの集計期間初日である月曜に新曲がリリースされることが目立ちます。それにより月曜や(フライング的に)日曜に初登場する曲も増えています。

 

”50位の壁”特性が大きく作用する

Spotifyにおいては、デイリー50位以内に入ることで数日中に急上昇する傾向が強く、逆に50位以内から外れた曲は数日中に急落することも分かっています。これはデイリー50位までのランクイン曲をプレイリスト化した"トップ50 - 日本"(以下”トップ50プレイリスト”と表記)の効果が大きいゆえであり、この特性を弊ブログでは『50位の壁』と呼んでいます。このプレイリストのフォロワー数は執筆時点で131万を誇ります。

トップ50プレイリストは翌日22時以降に更新されるため、50位以内に初めて(もしくは再度)ランクインしたその2日後のチャートにて順位および再生回数が急上昇する傾向にあるといえるでしょう。ただし50位以内に初登場(もしくは再登場)した翌日にその順位を下回った場合、一時的に乱高下する傾向にあります。

デイリー50位と51位の再生回数差は狭まってきている(壁が薄くなってきた)との指摘もありますが、今月Spotifyで大規模エラーが発生したことからみえてきたトップ50プレイリスト効果、且つそれを基とする50位の壁特性はやはり大きいということをSpotifyの長期エラーがようやく回復…その間の日本のデイリーチャートにおける興味深い動向をまとめる(9月12日付)にて紹介しています。

 

 

以上が、日本のSpotifyデイリーチャートにおける主な特徴です。

 

 

(おわりに) 真の社会的ヒット曲を見極めるために

さて、サブスクサービス毎に人気を博す曲には異なる傾向がみられます。LINE MUSICは再生キャンペーンの影響力が今も根強く、また若年層の利用が多いのが特徴です。Spotifyはプレイリストの特性が強いこともあり新曲が上昇しにくい(保守的な動きと形容可能な)ものの、デイリー50位の壁を越えることで上昇もしやすい状況です。そしてApple Musicのチャートはその中間と捉えていいかもしれません。

それぞれのサブスクサービスではユーザー獲得のための様々な取組が行われることで(先述した再生キャンペーンもその一種)、それがチャートに反映されます。特に近年はSpotifyApple Musicと連動するStationheadの台頭によりリスニングパーティーの開催が増え、Spotify自身でも実施しています。これらにより尚の事、音楽チャートでのさらなる躍進を願うファンダムの熱量が投入されやすくなっているのが現状です。

だからこそ、サブスクサービスの区別なくヒットしている曲を見極めることが重要です。そのような曲はロングヒットにも至りやすいため、歌手のファンというわけではないが曲が気になるライト層を獲得し、コアファンへと昇華させることが鍵となります。その見極めにて、筆者が作成しているストリーミング表が役立つならば幸いです(上記表は最新9月17日公開分ビルボードジャパンソングチャートをベースとしたもの)。

 

なお、サブスクサービスの中でSpotifyばかりでヒットする曲目立つ曲が最近は増えてきたと感じています。その中で真の社会的ヒット曲を見極める方法として以下の3点を挙げておきます。

<日本のSpotify動向から真の社会的ヒット曲を見極める方法>

ビルボードジャパンでのストリーミング1億回再生突破時、Spotifyの割合は著しく高くないか

Spotifyと他のサブスクサービスとで週間チャートの順位は大きく乖離していないか

Spotifyデイリーチャートにおいて他の曲よりも再生回数の増減が大きくないか

日本のSpotify動向から真の社会的ヒット曲を見極める方法、そしてSpotifyの今後について考える(5月4日付)より

なお、米津玄師「IRIS OUT」が「KICK BACK」等代表曲をフックアップしている状況を踏まえ、”同じ歌手の過去曲にも勢いが波及する作品”を真の社会的ヒット曲見極め方法のひとつとして追加していいのかもしれません。この点については米津玄師「IRIS OUT」が日本のSpotifyで週間2位発進…首位曲動向も踏まえ”真の社会的ヒット曲”見極め方法を再掲する(9月21日付)でも記載しています。

 

 

米津玄師「IRIS OUT」の新記録樹立によりサブスクサービスをあらためて用いる方は増えるかもしれません。また記録達成自体に興味を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方にとって、今回の発信が参考になるならば幸いです。