一昨日付のエントリーでは、arne代表の松島功さんによるポストを踏まえてこのようなエントリーを掲載し、昨日付ではその改善提案のひとつとしてラジオ業界に向けた内容を記しました。
今回は、ストリーミングに関する改善提案を記します。
昨日付のエントリーでは、ラジオOA曲をプレイリスト化し掲載する等の提案を行いましたが、これは現在の音楽チャート、そして音楽チャートが示す社会的ヒット曲において、現在ではサブスクやYouTubeのオーディオストリーミングに基づくストリーミング指標が極めて重要な要素であることを踏まえてのものです。実際、2023年度のビルボードジャパン年間ソングチャートからもストリーミングの重要性が解ります。
ラジオOA曲リストをサブスクでプレイリスト化するという行動とは逆に、サブスクサービス側からは曲を用いたラジオ番組的な取組が行われています。SpotifyではSPICEと連動しラジオDJが新曲を紹介する場を用意、またApple Musicでは歌手をゲストに呼びラジオDJと掛け合う企画が登場。後者では今年に入り中森明菜さんが登場していますが、音楽ナタリーの記事にて『ラジオ番組』と表記しているのは興味深いところです。
・中森明菜 - ラジオステーション - Apple Music
Spotifyの番組はNew Music Wednesdayという、主に水曜をリリース日とする日本の新曲を中心としたプレイリストと連動していますが、しかし日本は新曲リリース日におけるデイリー200位以内ランクインが少なく、リリースが基本的に金曜である海外の状況と比べると大きく異なります(下記リンク先等参照)。日本は新曲にまず触れてみるというより、それらが選出された主要プレイリストを聴くという習慣が強いと捉えています。
また、日本のSpotifyデイリーチャートを定点観測してわかったのは、平日より土曜、土曜より日曜の再生回数が多く、平日の中でも金曜は最も再生回数が少なくなるということ。この現状にあっては、金曜リリースの多い洋楽がますます不利だと言われてもおかしくないのです。
それ以前に、日本のサブスクユーザーはまだまだ多くはないと考えます。実際は順調に伸びているのですが(2022年における配信売上動向は下記PR TIMESの記事を参照)、まだ伸びるはずと考えます。また今月は同じく日本レコード協会からフィジカルの生産実績が公開されていますが、データを図解化した徒然研究室さんのポストにおける『ストリーミングは必ずしもフィジカルを駆逐するものではない』に強く同感します。
レコード、CD、音楽ビデオの生産金額推移の【前年比】を計算して視覚化してみました。三者三様の動きですが、ほぼマイナスが続いたCDが、2年連続プラス成長になっているのが目を引きますね✍
— 徒然研究室(仮称)✍🏻 (@tsurezure_lab) 2024年1月26日
ストリーミングは必ずしもフィジカルを駆逐するものではない、というようにみえます。 https://t.co/Izzr9z7kjs pic.twitter.com/mW2ZfgblkY
『ストリーミングは必ずしもフィジカルを駆逐するものではない』ことは、もっと浸透されるべきです。というのも、サブスクサービスへの加入を躊躇、もしくは敬遠する方に、ストリーミングがフィジカルを駆逐する等といったサブスクサービスへのマイナスイメージを過度に抱いている可能性があるためです。
これはベテラン歌手による無礼な発言も大きいのですが、昨年末デジタルを引き上げた歌手に寄り添いデジタルは駄目だとする発言が目立っていたことを踏まえての私見でもあります(上記エントリー参照)。歌手側が指摘する1回再生の利益の少なさは理解しつつも、廃盤の可能性があるフィジカルとは異なり利益が生まれ続けること、いつ何時でもブレイク可能というメリットは大きく、ネガティブな印象の駆逐につながるでしょう。
#ラヴィット で時折用いられる”サブスク”という表現。出演回数の多いタレントについて呼びやすい、何度も来てもらいやすいという意味で用いているものの、そのニュアンスがネガティブなのが非常に気になり、異を唱えたいと思います。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2024年1月25日
そして、洋楽の人気を左右する大きな要素として紹介したテレビについては、サービスや人物等のイメージを良くも悪くも決めつける傾向がみられます。個人的にはポストにあるように、サブスク(という表現)をあたかも軽くみなしているのは非常に気掛かりであることを記しておきます。これら業界内外に宿るネガティブなイメージを払拭することは、ストリーミングの浸透に必要なことではないでしょうか。
ストリーミング(ユーザー)全体が拡大することにより、洋楽ヒット曲はさらに埋もれかねません。それでも、洋楽にはヒットの可能性があるというのが私見です。たとえばTikTokと洋楽は親和性が高く、そちらを活用することがひとつのきっかけになると考えます。
ビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20、その2023年度年間チャートでは20位以内にK-POPを除く洋楽が4曲登場しています。そのうち最上位となる3位にランクインしたメイ・スティーブンス「If We Ever Broke Up」は、昨年元日にリリースされた作品です。
#メイ・スティーブンス Billboard JAPANにてインタビュー記事が公開!
— Universal Music Japan (@UNIVERSAL_INTER) 2023年8月29日
<インタビュー>
“TikTok新女王” メイ・スティーブンスが明かす大ヒット曲「If We Ever Broke Up」の裏側https://t.co/kQXlqhZ3S3
ビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20年間チャートの記事では興味深い指摘がみられます。
3位には2023年の“定番”として多く使用された、メイ・スティーブンス「イフ・ウィー・エヴァー・ブローク・アップ」が登場した。<ブローク・アップ>の歌詞に合わせ両手で作ったハートをパカッと開いたり、泣いてる顔文字のように指をTにして悲しさを表現するダンスが国内外で人気に。チャートイン回数は通算22回にのぼった。
(中略)
ダンス動画から楽曲人気に火が付くことが一般的なTikTokだが、新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(19位)のように、その人気を持続させTikTokやSNSという枠を超えていくには、TikTokで聴いた楽曲が気になったユーザーを、各ストリーミングサービスへ送り込むことが重要だ。
【ビルボード 2023年 年間TikTok Songs Chart】HoneyWorks「可愛くてごめん (feat. かぴ)」が首位獲得(コメントあり) https://t.co/FH7WeUkN6q
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年12月7日
『TikTokで聴いた楽曲が気になったユーザーを、各ストリーミングサービスへ送り込む』というビルボードジャパンの指摘は重要と考えます。実際、TikTokはその導線を太くするサービスを昨年末に実装しています。
まず、「おすすめ」フィードのTikTok動画の下部にある楽曲名の横に「楽曲を追加」というボタンが表示されます。ユーザーが初めて「楽曲を追加」ボタンを押すと、ユーザーが既にダウンロードしている音楽ストリーミングサービスの中から好きなサービスを選んで楽曲を保存することができます。保存した楽曲は各音楽ストリーミングサービスのデフォルトのプレイリスト(*3)に保存されます。音楽ストリーミングサービスによっては、その楽曲を新しいプレイリストや既存のプレイリストに追加することもできます。
この機能については昨日付エントリーでも紹介しました。現時点ではApple Music、Amazon MusicおよびSpotifyが対象サブスクサービスとなっていますが、今後増えていく可能性が考えられます。
音楽業界側はTikTokのクリエイターに対し、曲名クレジットの徹底を呼びかける必要があります(現状は不明ですが、以前は同種のショート動画サービスにおいて曲名の未表記が目立っていました)。またこのサービス自体をTikTok、音楽業界さらにはクリエイター側が流布することで、TikTokからサブスクへの移行を呼びかけることも重要です。この機能の開始がTikTok発のヒット、そして洋楽人気にもつながる可能性があります。
海外歌手の作品を紹介する際に日本語詞の字幕をつけること等も必要です。J-POPでは藤井風「死ぬのがいいわ」が海外で火が付いた際、ユニバーサルミュージックの現地法人が外国語の歌詞をつけて投稿しバズが拡大。これは日本のレコード会社における海外作品の流布においても活かせるはずです。TikTok等で人気に火が付いた曲、そして新曲においても、火が付いたタイミングにて即座に対応することが重要だと考えます。
また新曲リリースの際、その曲から想起した作品を含むプレイリストを用意することで新曲の認識はより深まり、興味を高めることができると考えます(たとえばアリアナ・グランデ「Yes, And?」におけるプレイリストは下記に)。このようなプレイリストは、歌手側のみならずコアファンからも積極的に発信できるはずです。
今回はストリーミングにおける提案を紹介しました。明後日にも新たな提案を記載する予定です。