Netflixの映画『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』のサウンドトラックおよび収録曲が海外で好調です。この点については先週のエントリー(追記あり)『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』サウンドトラックの、米や世界での人気について(7月8日付)で一度紹介していますが、当週はさらに上昇しています。
まずは米ビルボードによる7月19日付アルバムチャート。こちらでは『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックが3→2位に浮上しています。
7月5日付のチャートで8位に初登場したNetflixのアニメーション映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』のサウンドトラックは、先週(7月12日付)の3位から今週(7月19日付)2位に上昇して最高位を更新。週間ユニットも、前週から21%増加の75,000に記録を伸ばしている。
映画のサウンドトラックとしては、2017年の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(原題: Guardians of the Galaxy Vol. 2)以来、約8年ぶりにTOP10にデビューし、2週目と3週目でユニット数が増加した初のタイトルとなる。
2020年代に入ってからTOP2入りしたサウンドトラックとしては、以下に続く4作目のタイトルで、2025年のチャートでは初の快挙を達成した。
・『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』(2025年/最高2位)※更新中
・『ウィキッドふたりの魔女』(2024年/最高2位)
・『バービー・ザ・アルバム』(2023年/最高2位)
・『ミラベルと魔法だらけの家』(2022年/最高1位・9週間)
『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』が今週記録した75,000ユニットの内訳は、ストリーミングによるアルバム換算ユニットが70,000(前週比24%増加)、アルバム・セールスが4,000(前週比6%減少)、トラックによる換算ユニットは1,000(前週比6%増加)で、ストリーミング・アルバム・チャートで2位をキープ。アルバム・セールス・チャートでは21位から9位にTOP10入りを果たした。
登場3週目のオンデマンド公式ストリーミング再生回数は9,633万回を記録して、サウンドトラックの週間ストリーミング再生回数としては、2022年3月12日付で『ミラベルと魔法だらけの家』(8週目の首位獲得週)が記録した1億100万回以来の最大値を更新している。
サウンドトラックの発売日と同日の2025年6月20日にNetflixで配信された『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は、アメリカのNetflixにおける映画チャートで先週に続き今週(6月30日~7月6日)も2位にランクインしていて、映画のヒットが本作のポイントに大きく反映している。
【米ビルボード・アルバム・チャート】モーガン・ウォーレンが2か月連続首位、『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』サントラ2位に上昇 https://t.co/cDc8GYMCrT
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年7月14日
映画人気が持続し、サウンドトラックがいわば”見つかった”ことがユニット数増加の要因と考えられます。特に注目すべきはユニット数におけるSEA(ストリーミング(動画再生含む)のアルバム換算分)の割合で、93.3%を記録し前週より占有度を高めています。SEAの大きさがロングヒットにつながりやすいことは前週のエントリーで紹介しましたが(→こちら)、このことはアルバム収録曲のソングチャートでの上位進出ともリンクします。
実際、最新7月19日付の米ビルボードソングチャートではイジェ、オードリー・ヌナおよびレイ・アミが歌唱キャストを務めるハントリックスの「Golden」が、初のトップ10入りを果たしています。
今週のTOP10には、6位にHUNTR/X(ハントリックス)の「Golden」がランクインした。
(中略)
映画のヒットを受けて前週の23位からジャンプアップした「Golden」は、今週の集計期間に公式ストリーミング再生回数が1,880万回(前週比39%増加)、ラジオのオーディエンス・インプレッション数が95万回、セールスは3,000をそれぞれ記録した。
(中略)
架空のアーティストとしてTOP10入りしたのは以下に続く6組目で、2010年以降では初の快挙となる。
・HUNTR/X(2025年)
・ハンナ・モンタナ(2009年)
・ザ・ハイツ(1992年)
・パートリッジ・ファミリー(1970年代)
・アーチーズ(1960~70年代)
・アルビンとチップマンクス(1950年代)
【米ビルボード・ソング・チャート】アレックス・ウォーレン「オーディナリー」通算6週目のNo.1、ドレイク新曲が2位デビュー https://t.co/gUNh7LUaaL
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年7月15日
米ビルボードによる米およびグローバルソングチャートでの、架空の歌手による作品のランクイン状況は米ビルボードが記事を用意。この記事が作成されるほど、今回のトップ10入りは大きなインパクトがあることが解ります。
そして、架空か否かに関係なく米ビルボードソングチャートにおいてK-POP女性グループのトップ10入りは初となります。BLACKPINKがセレーナ・ゴメスとの「Ice Cream」で2020年に13位をマークしていますが、その記録を乗り越えた形です。さらに次週、ハントリックス「Golden」がトップ5入りを果たす可能性をXの予想アカウントであるTalk of the Chartsが発信しています。
Huntr/X’s “Golden” is aiming for a new peak inside the top 5 of the Billboard Hot 100 based on early forecasts. pic.twitter.com/migR0Q8tvt
— Talk of the Charts (@talkofthecharts) 2025年7月14日
そして、米ビルボードによるふたつのグローバルチャートでは、共にハントリックス「Golden」が初の首位を獲得しています。ビルボードジャパンはグローバルチャート速報記事を翻訳公開していないため、弊ブログエントリーから引用します。
続いてグローバルチャートを紹介。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。7月19日付ではハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」がGlobal 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.の双方で初の首位を獲得しています。
(中略)
ハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」はGlobal 200においてストリーミングが前週比40%アップの6770万およびダウンロードが同27%アップの6,000を、Global Excl. U.S.ではストリーミングが前週比40%アップの4910万およびダウンロードが同38%アップの2,000をそれぞれ記録し、前者では前週の2位から、後者では5位から首位に浮上しています。
ハントリックスは架空の歌手として、米ビルボードによるふたつのグローバルチャートを初制覇。また「Golden」の首位浮上に伴い、アレックス・ウォーレン「Ordinary」は双方のチャートで2位に後退しています。
(中略)
ハントリックス「Golden」に加えて、『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』サウンドトラックからはサジャ・ボーイズ(アンドリュー・チェ、ネックウェヴ、ダニー・チャン、ケビン・ウー & サムイル・リー)「Your Idol」がGlobal 200で10→3位、Global Excl. U.S.では15→5位に上昇。また同じくサジャ・ボーイズによる「Soda Pop」はGlobal 200で13→6位、Global Excl. U.S.では17→7位に入り、同曲初のトップ10入りを果たしています。
サジャ・ボーイズ「Your Idol」はストリーミングがGlobal 200において前週比22%アップの4570万、Global Excl. U.S.では同21%アップの3030万を、「Soda Pop」はストリーミングがGlobal 200において前週比24%アップの4130万、Global Excl. U.S.では同23%アップの2980万を記録しています。なおダウンロード指標は「Your Idol」においてGlobal 200で3,000、Global Excl. U.S.では1,000を、「Soda Pop」ではGlobal 200で3,000、Global Excl. U.S.では2,000を記録しています(前週比は記事未記載)。
『Kpop Demon Hunters』収録曲は3曲がGlobal 200、Global Excl. U.S.の双方でトップ10入りしたのみならず、ストリーミングが大きく伸びている状況です。
7月19日付の米ビルボードによる米ソングチャート、およびグローバルチャートのうちGlobal 200における『Kpop Demon Hunters』サウンドトラック収録曲の動向をまとめます。米ビルボードは100位まで、Global 200は200位までが公開されていますが、Global Excl. U.S.は米ビルボード有料会員にのみ200位までを公開しており、ここでは載せることができませんのでご了承ください。
・7月19日付 米ビルボードソングチャート (チャートはこちら)
23→6位 ハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」
31→16位 サジャ・ボーイズ(アンドリュー・チェ、ネックウェヴ、ダニー・チャン、ケビン・ウー & サムイル・リー)「Your Idol」
42→29位 ハントリックス「How It's Done」
49→35位 サジャ・ボーイズ「Soda Pop」
58→41位 ルミ、ジヌ、イジェ & アンドリュー・チェ「Free」
55→43位 ハントリックス「What It Sounds Like」
64→51位 ハントリックス「Takedown」
86位 (初登場) ジョンヨン、ジヒョ & チェヨン「Takedown」
・7月19日付 Global 200 (チャートはこちら)
2→1位 ハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」
10→3位 サジャ・ボーイズ(アンドリュー・チェ、ネックウェヴ、ダニー・チャン、ケビン・ウー & サムイル・リー)「Your Idol」
13→6位 サジャ・ボーイズ「Soda Pop」
16→11位 ハントリックス「How It's Done」
31→16位 ルミ、ジヌ、イジェ & アンドリュー・チェ「Free」
27→18位 ハントリックス「What It Sounds Like」
39→22位 ハントリックス「Takedown」
81→68位 ジョンヨン、ジヒョ & チェヨン「Takedown」
125→93位 TWICE feat. ミーガン・ザ・スタリオン「Strategy」
(「Strategy」は『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックにてTWICE単独版が収められていますが、獲得ポイント全体に占める割合はミーガン・ザ・スタリオン参加版がより高いため、客演有としてクレジットされています。)
米ソングチャートではサウンドトラックの2~9曲目、Global 200では1~9曲目がエントリーを果たしています。またTWICE「Strategy」は米ビルボードソングチャートであと一歩のところで100位以内エントリーを逃した模様であり、次週のチャート動向に注目です。その次週はTWICEのニューアルバム『This Is For』が米ビルボードアルバムチャートで初登場が見込まれ、同名リードトラックのランクインも考えられます。
最後に、『Kpop Demon Hunters』が今後米でさらなる人気を博すために必要なことを考えます。この点は、最新7月19日付米ビルボードソングチャートにおけるトップ10ランクイン曲の指標構成からみえくるはずです。
7月19日付米ビルボードソングチャート 3指標の構成
(順にストリーミング、ダウンロード、ラジオ)
・アレックス・ウォーレン「Ordinary」(総合1位)
1910万 / 6,000 / 7300万
・ドレイク「What Did I Miss?」(総合2位)
2260万 / 6,000 / 360万
・ハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」(総合6位)
1880万 / 3,000 / 95万
ストリーミングには大きな差はなく、ダウンロード指標もそこまで差はないと断言していいでしょう。一方で気になるのは、ラジオ指標の大差です。
ラジオ指標は各ラジオ局でのOAがどのくらいの方にリーチしたかを示すインプレッション数で算出されます。最近ではこの指標を制した曲のインプレッション数が低くなっていましたが、当週においてアレックス・ウォーレン「Ordinary」は、昨年11月16日付でのシャブージー「A Bar Song (Tipsy)」(7070万)以来となるラジオ指標7000万超えを達成しています。
ラジオ指標はどんなに人気の歌手でも初登場でのトップ10入りが難しく、またストリーミングよりもピークが遅くなる傾向にありますが、言い換えればラジオでヒットすることでロングヒットが見込めます。そしてそのラジオでヒットすべく、『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックを手掛けるレコード会社側は動き始めています。
Following the soundtrack’s second-week streaming explosion, Republic hustled to have “Golden” impact top 40 radio stations on Tuesday (July 8), as the song “that we feel has the most mainstream pop opportunity and appeal,” says Roppo.
(『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックの2週目におけるストリーミングの爆発的なヒットを受け、リパブリックレコードは7月8日、ハントリックス「Golden」をトップ40のラジオ局で放送するよう動き始めています。ロッポ氏はこの曲が「メインストリームポップに最も訴求できる機会がある曲だと感じている」と述べています。)
()内は意訳ですが、ここで登場するロッポ氏は『リパブリック・コープス・コレクティブの社長兼最高執行責任者』(アカペラ・グループ、ペンタトニックスがリパブリックレコードと契約 - uDiscovermusic日本版(2024年12月20日付)であり、また”Top 40 Radio Station”とは今最も人気の高い曲をOAする傾向の強いラジオ局を指します。この点から、リパブリックレコードが如何に本気で取り組んでいるかが読み取れるでしょう。
ラジオを制することでロングヒットが見込めることは、先述したシャブージー「A Bar Song (Tipsy)」が史上最長タイとなる米ソングチャート19週首位を記録したことや、当週もトップ10入りしているテディ・スウィムズ「Lose Control」が次週史上初の100週エントリーに臨める位置にいることからも明らか。リミックス等の施策も動き出しているとのことですが、長期安定のためにはラジオでのヒットがやはり欠かせないのです。