イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』サウンドトラックの、米や世界での人気について

(※追記(7月15日4時31分):サジャ・ボーイズの歌唱キャストとしてダニー・チャンを記載しておらず、今回追記しています。心よりお詫び申し上げます。)

(※追記(7月15日13時21分):ハントリックスの歌唱キャストのひとりをキム・ユンジンと表記していましたが、正しくはイジェでした。訂正し、お詫び申し上げます。)

(※追記(7月16日8時35分):7月19日付米ビルボード各種チャートにおける『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』サウンドトラックおよび収録曲の動向について、7月16日付ブログエントリーにて紹介しています。つきましてはそのリンクを、このエントリーの最後に貼付しています。)

 

 

 

日本時間の7月7日に発表された、最新7月12日付米ビルボードアルバムチャートでは、『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』サウンドトラックが3位にランクイン。Netflix発アニメのサウンドトラックながら、K-POPの作品として珍しいチャートアクションを示していることに注目です。

 

 

ソニー・ピクチャーズ・アニメーション制作のNetflix映画『KPop Demon Hunters』は、K-POPのスーパースター、ルミ、ミラ、ゾーイの3人を主人公に、スタジアム満員の観客を相手に、常に存在する超自然的な脅威からファンを守るため、それぞれが悪魔ハンターという秘密の正体を駆使する物語です。3人は力を合わせ、これまでで最大の敵、悪魔に変装した魅力的なライバルボーイズバンドに立ち向かうことになります。

『KPop Demon Hunters』は、アーデン・チョ、アン・ヒョソプ、メイ・ホン、ユ・ジヨンが主演し、2025年6月にNetflixで全世界配信開始となりました。

『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』のサウンドトラックには12曲が収録されていますが、この収録曲が聴かれているということが米ビルボードアルバムチャートからみえてきます。

先週のチャートで8位に初登場したNetflixのアニメーション映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』のサウンドトラックは、前週から97%増加の62,000ユニットを記録して、今週3位に急上昇。ストリーミングによるアルバム換算ユニットは108%増加の56,000(公式オンデマンドストリーミング再生回数は7,742万回)、アルバム・セールスは31%増加の4,500、トラックによる換算ユニットは24%増加の1,500にそれぞれ数字を伸ばして、ストリーミング・アルバム・チャートでは先週の10位から2位にジャンプアップした。

今週記録したストリーミング再生回数(7,742万回)は、サウンドトラック・アルバムとして2023年8月19日付で映画『バービー』のサウンドトラック『バービー・ザ・アルバム』が登場3週目で記録した7,932万回以来の最高値を更新。アニメ映画のサウンドトラックとしては、2022年に9週間1位を獲得した『ミラベルと魔法だらけの家』以来の最高位獲得を達成している。

なお、2025年のチャートで他にTOP10入りしたサウンドトラックは、2024年12月7日付で2位デビューした映画『ウィキッドふたりの魔女』のサウンドトラックと本作の2作のみで、『ウィキッドふたりの魔女』は8週間TOP10入りしたうちの4週間が2024年(12月7日~12月28日)、残りの4週間が2025年(1月4日~1月25日)だった。『ウィキッドふたりの魔女』は、2024年12月7日付で2位で初登場した後、2025年1月には4位にランクインしているが、『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はそれを上回る今年のサウンドトラックとしての最高位を更新したことになる。

サウンドトラックの発売日と同日の2025年6月20日Netflixで配信された『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は、アメリカのNetflixにおける映画チャートで先週の6位から今週(6月23日~29日)2位に大きく順位を上げていて、映画のヒットが本作のポイントに大きく反映している。

サウンドトラックとしての好記録は勿論のこと、注目はユニット数全体の上昇、およびストリーミングのアルバム換算分(SEA)における割合の高さです。

 

K-POP歌手の作品が米ビルボードアルバムチャートでトップ10入りすることは珍しくありません。しかしながらユニット数全体に占めるアルバムセールス、それもフィジカルの売上に特化していることが大半であり、一方でSEAは高くないために登場2週目の急落が目立っています。この傾向は2024年度以降の米ビルボードアルバムチャート、週間2位までに入ったK-POP歌手作品の翌週動向からも理解できるでしょう。

他方『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックは登場2週目に、米Netflix映画チャートの上昇に沿う形でユニット数がほぼ倍となり、SEAの割合も獲得ユニット数の9割を占めています。米Netflix映画チャートでの好調が寄与した形とはいえ、SEAの強さは特筆すべきです。

 

そしてアルバムチャートにおける好調は、『Kpop Demon Hunters』収録曲の米ソングチャートにおける上昇にもつながっています。

最新7月12日付米ビルボードソングチャート(→こちら)では『Kpop Demon Hunters』から5曲が初登場。またハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が81→23位、サジャ・ボーイズ(アンドリュー・チェ、ネックウェヴ(Neckwav)、ダニー・チャン、ケビン・ウー & サムイル・リー)「Your Idol」が77→31位に上昇しています。ストリーミングの強さは、7月3日付米Spotifyデイリーチャートでも確認できます。

(キャプチャは7月3日付米Spotifyデイリーチャートより。確認にはログインが必要です。)

ビルボードソングチャートは、Spotify等のストリーミング(動画再生含む)、ダウンロード(フィジカルセールス含む)およびラジオという3つの指標で構成され、ラジオのピークが最も遅いというのが通常の流れとなります。ストリーミングで強さを発揮する『Kpop Demon Hunters』収録曲がラジオでも強くなれば、ロングヒットする可能性は十分です。

 

 

『Kpop Demon Hunters』は子ども向け作品とも言われています。K-POPが子どもたちに浸透することで、ともすればその親世代も含め米に広くK-POPが伝播する可能性を、この曲から想起しています。

韓国のスマートスタディー社が展開する幼児向け教育コンテンツ、ピンクフォンによる「Baby Shark」については(追記あり) これから日本でも人気になるかもしれない「Baby Shark」、その日本語カバーへの疑問(2020年1月26日付)でも紹介しています。当時は上記動画が44億回再生と紹介しましたが、このエントリー執筆時には160億回を突破。また「Baby Shark」は2019年度米ビルボード年間ソングチャートで75位を記録しています。

幼児や子ども向けコンテンツでK-POPに触れることで、米国民のK-POPへの親しみは高まるもの思われます。また「Baby Shark」は米のみならずグローバルでも人気であり、2020年秋に発足した米ビルボードのGlobal 200では2021年度以降年間チャートで48位、52位、89位そして147位を記録し、長期的な人気を誇っていることが解ります。

Apple Musicが開設10周年を記念して今月公開した、グローバルでの歴代再生回数上位500曲ランキングでは「Baby Shark」が351位にランクインしており、同曲そして韓国コンテンツの世界人気を感じるに十分です(なおApple Musicのランキングについてはこちらで紹介しています)。そこに『Kpop Demon Hunters』のヒットが加わることで、米や世界でのK-POPに対する認知度はさらに高まるものと感じます。

 

なお米ビルボードによる7月12日付グローバルチャートにおいては、以下の記録が生まれています。

Global 200ではハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が52→2位、サジャ・ボーイズ(アンドリュー・チェ、ネックウェヴ(Neckwav)、ダニー・チャン、ケビン・ウー & サムイル・リー)「Your Idol」が73→10位に上昇。「Golden」はストリーミングが前週比135%アップの4840万、ダウンロードが同48%アップの4,000を、「Your Idol」はストリーミングが前週比117%アップの3760万、ダウンロードが同25%アップの3,000を、それぞれ記録しています。

ハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」はGlobal Excl. U.S.でも51→5位に上昇。ストリーミングは前週比137%アップの3500万、ダウンロードは同46%アップの2,000を記録しています。

『Kpop Demon Hunters』サウンドトラック収録曲がグローバルも席巻する可能性が高まっていますが、Global 200とGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除く)にて前者の順位が高く、米での人気がより高いことに注目しています。K-POP曲は一般的にGlobal Excl. U.S.の順位がより高く(当週はaespa「Dirty Work」がGlobal 200で5位、Global Excl. U.S.では2位に初登場)、その点でもアニメ作品や関連曲の米での人気を感じるのです。

 

『Kpop Demon Hunters』が米を中心に浸透することで、最終的にはK-POP自体の人気上昇に寄与するのではと感じています。またサウンドトラックにはTWICEのメンバーによる新曲、さらにはTWICEが昨年リリースした「Strategy」も収録されていますが、そのTWICEは今週金曜にアルバム『This Is For』でカムバックを果たすことから、TWICEの人気が加速するかについても注目です。

 

 

 

※追記(7月16日8時35分)

 

7月19日付米ビルボード各種チャートにおける『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』サウンドトラックおよび収録曲の動向について、7月16日付ブログエントリーにて紹介しています。つきましてはそのリンクを貼付します。