最新3月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートは集計期間のうち平日が4日間だったこともあり、ストリーミング再生回数が全体的に伸びています。
(上記ストリーミング表は、毎週土曜に公開するCHART insightからヒットを読む カテゴリーのエントリーにて掲載しています。)
ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートではトップ10のうち9曲が再生回数前週超えを達成。その中で3%以上増加したのはMrs. GREEN APPLE「ライラック」、サカナクション「怪獣」およびtimelesz「Rock this Party」の3曲となります。
「ライラック」については木曜付のブログで解説していますが、「怪獣」および「Rock this Party」ではミュージックビデオ公開の影響がはっきり見て取れます。
そして3位はサカナクション「怪獣」。ミュージックビデオが公開された影響で、ダウンロード、ストリーミング、動画、カラオケが伸び3位に再浮上した。前週と比べるとダウンロードは微増、ストリーミングは106%、動画は185%、カラオケは198%となっている。
【ビルボード】Mrs. GREEN APPLE「ライラック」が通算7度目の総合首位、サザン「夢の宇宙旅行」が8位<3/26訂正> https://t.co/wsTAz3p3dS
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年3月26日
サカナクション「怪獣」のミュージックビデオは前週の集計期間最終日に公開されており、当週が初の1週間フル加算。動画再生指標は前週の2倍近くに増加していますが、テレビアニメ『チ。 ―地球の運動について―』とのコラボレーション動画(→こちら 期間限定公開)、そして公式オーディオの人気もあり、この指標は前週まで常時16位以内にランクインしていました。
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— ビクターエンタテインメント (@VictorMusic) 2025年3月26日
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「#怪獣」YouTubeアートトラック
1,000万再生突破!!🦖💥
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サカナクション / 怪獣https://t.co/b1mFuApyZA
引き続き「怪獣」をお楽しみください!
楽曲に関するコメントもお待ちしております✒️#サカナクション_怪獣#サカナクション怪獣… pic.twitter.com/1Rthtvd2d2
先週に入り「怪獣」の公式オーディオ(上記ポストにて"アートトラック"と形容する動画)が1千万回再生を突破。ここからはYouTubeで聴取する方の多さ、そして公式オーディオを用意することが如何に重要かが分かるはずです。
また、当週ソングチャートトップ10内に返り咲いたtimelesz「Rock this Party」については、集計期間中の金曜夜にミュージックビデオを公開しています。
「Rock this Party」は2月26日公開分以降のソングチャートで動画再生指標が加点され続けていますが、初週はティザー映像(→こちら)が初の1週間フル加算対象となったことが影響しています。またこの指標が2週目に86位へと上昇したのはオーディオ(→こちら)の存在も大きいといえるでしょう。当週は『ミュージックステーション』(テレビ朝日)放送直後にミュージックビデオが登場し、公開のイベント化も功を奏しています。
サカナクション「怪獣」およびtimelesz「Rock this Party」は、ミュージックビデオの公開がストリーミング聴取行動にも反映されたといえるでしょう。後者については次週4月2日公開分のビルボードジャパンソングチャートにてミュージックビデオが初の1週間フル加算となることから、上位をキープする可能性も考えられます。
他方、当週のStreaming Songsチャートトップ10内で唯一ストリーミング再生回数が前週割れとなった米津玄師「BOW AND ARROW」については、ミュージックビデオ等の効果が薄れたことが背景にあると捉えていいのかもしれません。
「BOW AND ARROW」は3月12日公開分ビルボードジャパンソングチャートにて総合19→6位に上昇。集計期間3日目の夜に上記ミュージックビデオを公開したこと、この曲がオープニング主題歌に起用されたテレビアニメ『メダリスト』に連動する形で羽生結弦さんがスケーティングを披露していることが大きな話題となり、同日公開分での動画再生指標制覇につながった件については、以前のエントリーで紹介しています。
また「BOW AND ARROW」では、ミュージックビデオ公開の翌週に羽生結弦さんのスケーティングのみで構成された動画が公開され、程なくして米津玄師さんと羽生さんによる対談動画も登場しています。
これら動画は元のミュージックビデオそして楽曲の見方をふくよかにするのみならず、ミュージックビデオの再生回数上昇やキープという点でも有効といえます。ミュージックビデオが公開後初の1週間フル加算となった3月19日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて動画再生指標が首位をキープしたのはこれら動画の影響もあったと考えられ、関連動画公開はチャート施策の意味でも重要といえるでしょう。
それらの反動もあってか、「BOW AND ARROW」は最新3月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートにて動画再生指標1→3位、総合では6→7位に後退していますが、数日前に登場した記事が今後の動画再生指標上昇につながるのではと感じています。
米津玄師 × 羽生結弦 奇跡のコラボ
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2025年3月27日
「BOW AND ARROW」MVを《解説》⛸️
羽生結弦自ら振り付けを担当
これまでのセルフコレオとは一線を画す
最高傑作の“ショートプログラム”が誕生https://t.co/59O9m4A7wH#米津玄師 #羽生結弦@hachi_08 @YUZURUofficial_ pic.twitter.com/x714bqHsfH
文筆家でライターの長谷川仁美さんが執筆した、米津玄師「BOW AND ARROW」ミュージックビデオでの羽生結弦さんによるスケーティングの解説記事については、米津玄師さんの所属芸能事務所であるREISSUE RECORDSのX公式アカウントがリポストしたオリコンのほか、複数のメディアが公開しています。
米津玄師×羽生結弦「BOW AND ARROW」対談から見るアーティスト&アスリートの価値観、相反性と近似性https://t.co/M6R2rC20ew#米津玄師 #羽生結弦 #メダリスト #BOWANDARROW
— Real Sound(リアルサウンド) (@realsoundjp) 2025年3月27日
https://t.co/M6R2rC20ew
【解説】米津玄師、TVアニメ『メダリスト』オープニング主題歌MVの羽生結弦スケーティングが最高傑作https://t.co/9Ot8Oa5D6q#米津玄師 #羽生結弦 #BOW_AND_ARROW #メダリスト #medalist
— BARKS編集部 (@barks_news) 2025年3月27日
米津玄師「BOW AND ARROW」MV羽生結弦のスケーティング解説が到着#米津玄師 #羽生結弦 #BOW_AND_ARROW #メダリスト #medalist #THEFIRSTTIMES@hachi_08
— THE FIRST TIMES_NEWS (@The_FirstTimesN) 2025年3月27日
▼解説・写真・MVはこちら
[PR] 米津玄師 TVアニメ『メダリスト』オープニング主題歌「BOW AND ARROW」MV 羽生結弦氏のスケーティング解説
— モデルプレス (@modelpress) 2025年3月27日
🔻記事詳細https://t.co/XtQ1ClYZy2#米津玄師 #羽生結弦 #BOW_AND_ARROW #メダリスト #medalist pic.twitter.com/wdDgam1jjO
モデルプレスのポストには"[PR]"と記載され、またTHE FIRST TIMESでは冒頭に『原稿が到着した』と記されているのですが、その原稿とは何かについて、下記記事で明らかになっています。
ソニー・ミュージックレーベルズは27日、歌手の米津玄師(34)の「BOW AND ARROW」ショートプログラムMVで、プロフィギュアスケーター・羽生結弦さん(30)が披露したスケーティングの解説記事を公開した。
米津玄師「BOW AND ARROW」ショートプログラムMV 羽生結弦さんのスケーティングを解説https://t.co/Qr02WmU4yr
— スポーツニッポン新聞社(スポニチ)【公式】 (@sponichiannex) 2025年3月28日
つまりは米津玄師さんの所属レコード会社が解説記事(プレスリリースの一環でしょう)を用意し、オリコンをはじめとする各種メディアが報じたということです。日本のメディアがプレスリリースを重用する傾向にあることについて、偶然にも米津さんの例を用いてこのブログにて紹介していますが(下記エントリー参照)、今回もその流れを汲んだものといえるでしょう。
米津玄師「BOW AND ARROW」ミュージックビデオの高い話題性、また羽生結弦さんのスケーティングをメインに据えた動画が登場したならば尚の事、その段階でスポーツメディアが独自に解説記事を用意してよかったのではという違和感は拭えませんが(この違和感は上記エントリーで述べた内容と通底)、記事の用意に伴いミュージックビデオやスケーティング動画と照合する方が増え、動画再生の上昇につながるかもしれません。
今回紹介した3曲を踏まえれば、ミュージックビデオ自体の解禁効果は1週間程度と捉えていいのかもしれません。歌手側が後に用意するミュージックビデオのアザーサイドやビハインドザシーン、またアイドルやダンスボーカルグループを主体としたダンス動画等の用意は、動画解禁効果を伸ばすという目的もあるはずです。
その動画において、サカナクションは山口一郎さんが適宜生配信を実施、timeleszはミュージックビデオのリアクションを用意、そして米津玄師さんは羽生結弦さんをフィーチャーする等、三者三様の独自性がみられます。この独自性がミュージックビデオの注目度を高め、楽曲に重層的な意味をもたらし、そして動画再生指標の長期安定へとつながることでしょう。3曲における次週のチャート動向に注目です。