昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。
<2025年3月26日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・King & Prince「HEART」
3月19日公開分 1位→3月26日公開分 18位
・ SKE48「Tick tack zack
3月19日公開分 3位→3月26日公開分 100位未満
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
SKE48「Tick tack zack」はデジタル関連指標(ダウンロード、ストリーミングおよび動画再生)がいずれも加点対象となる300位以内に達しておらず、曲は気になるが歌手のファンというわけではないライト層の支持を得られているとは言い難い状況です。
他方、SKE48はAKBグループの中でもフィジカルリリース後のフィジカル施策に長けており、今作でも今後フィジカルセールスが急上昇し総合チャートでも再登場する可能性が考えられますが、この施策ではフィジカルセールス以外の指標が上昇しない(言い換えれば施策のリーチがコアファンの域を超えない)ことが一般的です。その状況を破りライト層等に浸透することができるかが、施策採用曲全体における鍵となります。
King & Princeは前作のフィジカルシングル「halfmoon」がフィジカルセールス指標加算2週目にポイント前週比17.2%、1→43位と推移していますが、今作「HEART」ではポイント前週比23.6%、1→18位となり下落幅が小さくなっています。これは今月フィジカルセールス指標初加算に伴い総合チャートで2位以内に入った他のSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品と比べても高い状況です。
(上記表はMrs. GREEN APPLE「ライラック」が首位返り咲き、SixTONES「バリア」を僅差で上回った要因とは(3月27日付)より。)
King & Prince「HEART」については首位獲得の際、King & Prince「HEART」が首位初登場…初動の大きさにつながった3組のライバル(仲間)について(3月20日付)にてNumber_iの動向が影響しているのではと記しました。Number_iは最新作「GOD_i」が登場2週目にポイント前週比23.5%、総合1→13位と推移。フィジカル後発ゆえ直接の比較はできないものの、「HEART」は「GOD_i」と似た動向を辿っていると感じています。
またNumber_i「GOD_i」が首位を獲得した翌週には、BE:FIRST「Spacecraft」がデジタル/フィジカル双方の初加算に伴い総合首位に初登場。そしてその翌週にはポイント前週比33.8%、1→4位と推移しています。King & Prince「HEART」やNumber_i「GOD_i」より高水準となっていますが、この動向もまた似ているといえるかもしれません。
これら3曲について、CHART insightからヒットを読む カテゴリーのエントリー一覧で掲載したストリーミング表からビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標および主要サブスクサービスの順位をみてみると、Number_i「GOD_i」はストリーミング16→34位、Apple Music21→33位、Spotify25→11位、LINE MUSIC54→100位と推移。BE:FIRST「Spacecraft」は順に9→18位、62→83位、75→46位、3→10位。そしてKing & Prince「HEART」は順に14→23位、7→13位、60→30位、24→62位と推移しています。
ビルボードジャパンソングチャート登場2週目においてストリーミングの順位が最も高いのはBE:FIRST「Spacecraft」ですが、3曲いずれもサブスクサービス間での乖離がみられます。その中にあって、乖離の幅が最も小さいのがKing & Prince「HEART」といえるでしょう。
ストリーミング指標の安定に加えてサブスクサービス間での乖離が小さいことも社会的ヒットの条件と考えれば、今回のKing & Prince「HEART」の動きは(今後数週間の推移を見極める必要はあるものの)興味深く感じています。加えて最近はCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」等も上位で安定し、いわゆるアイドルソング(的な位置付けの作品)がサブスクでも地位を築いているという印象です。
日本の音楽は海外(特に比較されやすい韓国)と比べて、その音楽性が多様であると評されることが少なくありません。アイドルを輩出する環境やメディアも含む慣習、またSTARTO ENTERTAINMENTやハロー!プロジェクト等のデジタルアーカイブの非充実等改善が必要な点は未だ多いものの、アイドルソングからもサブスクヒットが登場することで尚の事、海外からも日本の音楽の豊かさに注目が集まるのではないでしょうか。