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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボード21世紀ソングチャートから、近年の作品のヒット規模縮小を考える

ビルボードは先週、"21世紀チャート"を発表しました。21世紀は日本では2001年からを指しますが、米ビルボードは2000年1月1日付~2024年12月28日付を集計期間に設定し、ソングチャート、アルバムチャートおよびトップアーティストチャートについて算出しています。

(なお1999年半ば以前にリリースした作品はソングチャートおよびアルバムチャートから除外されているものの、期間内にそれらチャートにランクインした作品はトップアーティストチャートには反映されています。また国によっては、21世紀が2000年開始という見方もあります(21世紀はいつから・・・ | ことば(放送用語) - ことばウラ・オモテ | NHK放送文化研究所参照)。)

 

ソングチャートはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が制しています。通算4週首位を獲得したこの曲は、2020年2月から2021年4月にかけて歴代最長となる通算57週トップ10入りを果たし、40位以内には述べ86週ランクイン。そして「Blinding Lights」は2021年11月、米ビルボードにおける歴代ソングチャート(Greatest Of All Time Hot 100 Songsチャート)で首位に立ちました。

今回は米ビルボード21世紀ソングチャート、上位100曲の傾向を紹介します。

 

 

ビルボードによる21世紀ソングチャート、100位までは下記ポストから始まるスレッドの形で掲載されています(一方で米ビルボードのホームページ掲載分は有料会員のみの限定となっています)。

リリース日について補足すると、45位のザ・ウィークエンド & アリアナ・グランデ「Save Your Tears」は当初ザ・ウィークエンドによるオリジナル版がリリースされた後、2021年4月23日にアリアナ・グランデ参加版が公開。またテイラー・スウィフト「Cruel Summer」は2019年リリースのアルバム『Lover』収録曲ですが、曲の人気に伴い後日正式シングル化された形です。

 

ビルボード21世紀ソングチャート上位100曲をリリース年で分けてみると、2011年が突出していることが解ります。

米ではアルバムリリース後もシングルカットされることが多く、2010年8月にケイティ・ペリーTeenage Dream』、翌年1月にアデル『21』がリリースされ(21世紀アルバムチャートでは後者が2位にランクイン)、そこからのシングルが21世紀ソングチャートで100位以内に入っています。またこの年はLMFAOも大ブレイクを果たしています。

 

他方、2021年以降リリース曲のランクイン数は少ない状況です。2021年、2022年および2024年リリースは1曲のみにとどまっています。また4曲チャートインした2023年リリース曲であっても、先述したテイラー・スウィフト「Cruel Summer」のように公式シングル化前からチャートインした作品、2024年度年間ソングチャートを制したテディ・スウィムズ「Lose Control」のようにヒットのピークが2024年という作品もあります。

これは、チャートポリシー(集計方法)の変更が大きく影響していると言えるでしょう。変更の多くは"対象外"という措置に伴うものです。またダウンロード規模が小さくなっていること、ストリーミングの上昇曲線が緩やかになっていることも2021年以降のヒット規模が大きくなくなった要因と考えます。下記は2019年度および2024年度の週間ソングチャート首位獲得曲の3指標動向ですが、実はラジオの規模も縮小しています。

 

 

今回の21世紀ソングチャートでは、歴代ソングチャートが集計時に採用している『No.1が最大値となる逆ポイント・システム』を採用していない模様であり、これが2021年以降リリース曲の強くなさにも影響していると言えるでしょう(『』内については米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”60周年記念 チャートイン楽曲オールタイムTOP100 | Daily News | Billboard JAPAN(2018年8月3日付)参照)。今後のリリース曲が21世紀ソングチャートで強くなるには、特にストリーミングやラジオでの高い人気が求められます。

 

一方でビルボードジャパンは、2年前にソングチャートの新設からおよそ15年分のチャートを発表していますが、2010年代前半までのリリース曲は少ない状況です。これは『指標の増加や算出方法の変化を踏まえた調整は行わず、当時のポイントをそのまま集計』したことが影響していますが(『』内は上記記事参照)、今後オールタイムチャートを発表する際は米ビルボード方式を採用することが必要ではと考え、提案しています。

 

ビルボード、またビルボードジャパンにおいても、長期集計期間のチャートを今後も発信することを願っています。