イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) JIMIN、Stray Kidsが相次いでアルバムリード曲のリミックスを投入する理由

(※追記(7月24日6時10分):JIMIN「Who」におけるリミックスについて、Spotifyのリンクを掲載しました。)

 

 

 

7月19~25日を集計期間とする米ビルボードによる8月3日付米ソングチャートにて、K-POP2曲の初登場が見込まれています。

ビルボードソングチャートを予想するTalk of the Chartsは、7月19日にアルバムをリリースした2組それぞれのリード曲、JIMIN「Who」(『MUSE』収録曲)が50位以内に、Stray Kids「Chk Chk Boom」(『ATE』収録曲)が100位以内に入る(狙える位置にある)と紹介しています。Spotifyで好調であることも予想の根拠になっているものと思われます。

この2曲が今週に入り、複数の新バージョン投入という施策を投入します。

 

JIMIN「Who」は日本時間の火曜に、「Who」の5つのリミックスおよびインストゥルメンタルを投入。"渋谷系"と題したリミックスも含まれています。そしてStray Kids「Chk Chk Boom」については日本時間の昨日、2つのリミックスおよびインストゥルメンタルが追加されています。

リミックス等の追加は、米ビルボードソングチャートにおける「Who」および「Chk Chk Boom」の100位以内初登場を強固なものとします。米ビルボードによる米やグローバルのソングチャートではリミックスやインストゥルメンタルは合算対象となるためです。なおビルボードジャパンでは言語以外が同じならば基本的に合算されるものの、アレンジ違いや共演等の追加は合算対象になりません。

 

 

リミックス等の投入により、JIMINとStray Kidsはいずれも海外チャートでの躍進を狙っているものと思われますが、一方で気になる点がふたつあります。

 

ひとつはこのリミックスが、オリジナルバージョンのリリースから間もなく公開されていること。米ソングチャートをみると曲によってリミックス投入のタイミングは様々ですが、たとえばライバルが多くなくこのタイミングでならば上位を狙えると見越して施策を実行することも少なくありません。一方でJIMINおよびStray Kidsは初週動向を強化させる形で、リリース週に投入を実施しています。

ビルボードソングチャートはストリーミング、ダウンロードおよびラジオの3指標で構成され、初週はデジタル2指標が強い一方でラジオは緩やかに上昇する、またダウンロードは2週目以降に大きく下がる傾向が一般的です。K-POPは特に男性歌手の作品においてストリーミングがまだ強いとはいえない一方で所有指標が大きいのが特徴であることから、2週目の100位以内キープよりも初動の大きさを重視したのではと考えます。

 

もうひとつは、2組ともリミックスにおいて追加歌手が存在しない、またリミキサーがわからないということ。リミックスの多くは共演や客演の歌手が追加される、また著名なリミキサーがリミックスを担当しそのリミキサーの名を冠することが一般的ですが、JIMIN「Who」およびStray Kids「Chk Chk Boom」ではそれらが採られていません。

今回のリミックス手法から思い出したのはBTS「Dynamite」(2020)でした。米でも首位を獲得した同曲についてはオリジナルバージョンを含め2桁のバージョンが登場したのですが、その手法に違和感を抱いていました。

一方でBTS「Dynamite」についてはリミキサーが不明であることもあり、リミックス文化を広めるという意義よりも、数多くのリミックスを投入して特に彼らの強みである所有指標(ダウンロード)の拡大に努めたいのでは…そう思われてもおかしくないのではないでしょうか。

この違和感を踏まえ、上記エントリーにて『リミックスの投入が続けば、米ビルボードは近いうちにリミックスバージョンのオリジナルへの合算の是非も含めた議論を実施し、リミックス投入に関して何かしらの規制を伴ったチャートポリシー変更を行う可能性があるのでは』とも記しましたが、この点はたとえば昨年4月の変更へつながったものと捉えています。

 

 

チャートポリシー(集計方法)変更に伴いリミックス等投入施策の有効性は高くなくなったとしてもチャート上で未だ有効なことから、多くの歌手でリミックスを追加する傾向にあることは今も変わりません。ただしリミキサー不明の問題も踏まえれば、K-POPの2曲における施策はコアファン向け、そして所有指標を主に上昇させるためのものと捉えていいのかもしれません。

K-POPに関するエントリーは明日にも記載を予定していますが、K-POPの海外展開、特に米において徹底すべきは接触指標の充実と考えます。ストリーミングの強さがアルバム/ソングチャート、ラジオでの浸透がソングチャートに波及することでロングヒットにつながり、K-POP全体が興隆していくと考えるためです。自身のみならずジャンル全体の人気を確立するために施策を用いたほうがより好いというのが自分の見方です。