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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ソングチャートを制した乃木坂46「歩道橋」の気になる指標、および「APT.」ポイント増加の背景

最新12月18日公開分(集計期間:12月9~15日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週初の首位を獲得したMrs. GREEN APPLE「ビターバカンス」が5位に後退、乃木坂46「歩道橋」がフィジカルセールス指標初加算に伴い首位に到達しています。

坂道グループによるフィジカルシングル表題曲はデジタル先行でリリースされることが多く、乃木坂46「歩道橋」においても同様です。一方で同曲の総合ソングチャート100位以内エントリーは4週前および2週前に続く形であり、デジタルが安定していたとは言い難い状況でした。

609,776枚のフィジカルセールス(CHART insightでは黄色で表示)を加算して総合首位に到達した乃木坂46「歩道橋」ですが、他指標ではラジオ(黄緑)が6位、ダウンロード(紫)が11位となっています。一方でストリーミング(青)や動画再生(赤)といった接触指標群も加点されていますが、ストリーミングは加点対象となる300位以内に復帰したものの100位以内には達せず、また動画再生指標は順位を落としています。

(上記CHART insightは総合および構成指標20位までを表示しています。有料会員向けには100位まで公開されており、そこで動画再生指標の動向を確認することができます。)

 

アイドルやダンスボーカルグループの曲ではフィジカルセールス指標初加算週に動画再生指標がダウンすることが少なくありません。フィジカルに同梱された映像盤にミュージックビデオが収められ、コアファンの視聴先がYouTubeから遷移することが理由と捉えていたのですが、乃木坂46「歩道橋」に同梱された映像盤では香港でのライブ映像が初回限定盤A~Dそれぞれに(別の曲が)収録され、ミュージックビデオは含まれません。

ならば「歩道橋」において、フィジカルセールス初加算週に動画再生指標が伸びてもおかしくないと考えるのですが、結果的にそうならなかったことを興味深く感じています。

 

さて、乃木坂46「歩道橋」は当週9,834ポイントを獲得していますが、ロゼ(ROSÉ) & ブルーノ・マーズ「APT.」がおよそ600ポイント差で2位に。同曲は3週前および2週前に1万ポイントを突破しており、仮にこのタイミングで「歩道橋」がフィジカルセールス指標を加算していたならば総合首位には至れなかったと考えます。

日本で開催された韓国の音楽賞にてロゼとブルーノ・マーズによるパフォーマンス映像が(事前収録ながら)公開されたことの反響が1万ポイント超えの要因となり、前週はその反動に伴いポイント1割減に。しかし当週は接触指標群が微増したほか、ラジオは前週比114%、カラオケは同125%を記録しています(各指標の動向は総合ソングチャートの記事を参照)。そして注目は、ストリーミング再生回数の動向です。

再生回数をみると、「APT.」以外の前週トップ10楽曲はすべて再生回数が落ち込んでおり、再生回数の減少幅を少なく抑えた楽曲がより高い順位を記録していることがわかる。

ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートでは、当週のトップ10にてOmoinotake「幾億光年」とback number「クリスマスソング」が入れ替わっていますが(前者は9→12位、後者は14→8位)、ストリーミング再生回数はその「クリスマスソング」(前週比117.1%)そしてロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」(同100.3%)のみ伸びています。そして2曲とも、総合ソングチャートでもポイントを伸ばしています。

back number「クリスマスソング」については別途エントリーを設けて分析する予定ですが、ビルボードジャパンが2024年度年間ソングチャートを12月6日に発表したことが当週のストリーミング再生回数やポイントの推移に反映されていると捉えています。その中にあって「APT.」がストリーミングを伸ばしているのは、カラオケでの予習に伴う聴取も影響しているかもしれません。

上記ポストはロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」、カラオケ指標100位以内エントリーを注目する理由(12月13日付)でも紹介しましたが、レコード会社側がカラオケの重要性を熟知し、忘年会や新年会シーズンでの歌唱を呼びかけることで同曲のカラオケやストリーミング上昇に誘導できているものと感じています。このカラオケ施策は、サブスク解禁後好調を続けるNEWS「チャンカパーナ」(2012)でも当週開始されます。

(上記CHART insightにおいて、カラオケ指標は緑で表示されます。)

 

ともすれば年末年始のカラオケ指標で特筆すべき動きをみせた曲が、年間ソングチャートでも良好な成績を収めるのではないかと考えます。2024年度の年間ソングチャート分析時にカラオケの重要性を指摘した者としてロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」やNEWS「チャンカパーナ」の動向に注目すると共に、乃木坂46をはじめとするアイドルやダンスボーカルグループがカラオケヒットを輩出できるかを注視していきます。