(※追記(12月19日13時00分):米ビルボードアルバムチャートの動向、ならびにビルボードジャパンへの要望提案について、追記しています。)
ビルボードジャパンアルバムチャートが変わります。所有のみだった構成指標にストリーミング再生回数分が加わるという、極めて大きな変化が生まれることとなります。
今後は上記の2指標に加えて、GfK Japanが提供する国内主要ストリーミングサービス(Amazon Music、Apple Music、Spotify他)の再生回数が合算される。なお、本チャートのアップデートにより、Hot AlbumsとArtist 100は毎週木曜日に更新される(その他のチャートは、水曜更新)。
ビルボード・ジャパン、12/26より“Hot Albums”チャートの算出方法を変更 https://t.co/jKlIRbSWp3
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年12月18日
アルバムチャートへのストリーミング指標組み入れは、以前から提案し続けていたことでした。直近では、ビルボードジャパンの2025年度集計期間初日に以下のエントリーにて記しています。
米ビルボードはアルバムチャートにストリーミング(動画再生分を含む)のアルバム換算分(SEA)が組み入れられ、支持される作品はロングヒットする傾向にあります(なお米アルバムチャートには単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)も含まれています)。
これは2024年度における米ビルボードアルバムチャート、1位および2位の作品における翌週動向と、ユニット数全体に占めるSEAの割合からもみえてくるものと捉えています。
一方でビルボードジャパンによるアルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードの所有2指標のみであり、ロングヒットしにくいという状況でした。この点は2024年度のトップアーティストチャート(ソングチャートとアルバムチャートの合算)を制したMrs. GREEN APPLEが年間アルバムチャートで1作品のみ、それもトップ20に入っていない点からも見て取れます。
それでもアルバムチャートでは、Mrs. GREEN APPLEによる『ANTENNA』が年間38位にとどまっています。アルバムチャートはフィジカルセールス1枚よりも1ダウンロードのほうがウエイトが大きいのですが、男性アイドルやダンスボーカルグループの作品はダウンロードが多くないながら(もっといえばデジタル未解禁の作品も未だ少なくないながら)、累計ポイントに占めるフィジカルセールス指標の割合が大きい状況です。さらに、米ビルボードのような接触指標が組み込まれていないことも大きな要因といえます。
仮にアルバムチャートに接触指標を導入すればソングチャートとの乖離は小さくなるのではないかということを、Spotifyにおけるアルバムチャート動向から感じています。ビルボードジャパンは米ビルボードに倣い接触指標を採り入れるかどうか議論することが必要だということをこのブログにて以前から提案していますが、この考えはさらに強固なものになっています。
上記は2024年度年間アルバムチャート振り返り時の指摘内容。SpotifyのアルバムチャートにもSpotifyらしい特長がないわけではありませんが、それでもMrs. GREEN APPLEの強さが際立っています。Apple MusicやLINE MUSIC等もストリーミング指標に含まれることになれば、広く聴かれる作品が上位で安定していくようになると考えます。加えてこの変更が、サブスク未解禁歌手に解禁を促す大きなきっかけになるかもしれません。
(なおビルボードジャパンでは2022年度まで、ソングおよびアルバムチャートにルックアップ指標が組み入れられていました。パソコン等にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を示すルックアップは、CDの売上枚数におけるユニークユーザー数やレンタル枚数の推測を可能としていました。そう考えれば、次週から接触指標が"復活"するといえるのです。ちなみにルックアップでは、STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属歌手の作品が強い状況でした。)
気になるのは、ビルボードジャパンの記事において新たに組み入れられるストリーミング指標の計算方法等が記載されていないこと。おそらくはソングチャート同様、サブスクサービス有料会員の1回再生と無料会員のそれとでウエイトを分ける(前者のウエイトを大きくする)と思われますが、米ビルボードアルバムチャートにおけるSEAが収録曲数を考慮しておらず、日本でも曲数の多いほうが有利になるのではと懸念しています。
また、ビルボードジャパンのトップアーティストチャートにおいてアルバムチャートにもストリーミング指標が導入されるようになるため、この指標がソングチャートと重複するという可能性が考えられます。この点についても開示を願います。
もうひとつ。ビルボードジャパンに対してはアルバムチャートで初登場、また再度上昇した作品が施策を行った(ことで浮上した)場合、記事にてその内容を記すことを願います。米ビルボードでは複数種リリース、デラックスエディションの内容やその追加状況等について細かく記載する傾向があります。ビルボードジャパンアルバムチャートでもフィジカルの追加施策が目立つようになっていることから、このことを希望します。
なお、ビルボードジャパンアルバムチャートにストリーミング指標が組み入れられることで、米ビルボードアルバムチャートで散見されるデラックスエディション施策が目立っていく予感がします。ただこの点は(記事を見る限り)ビルボードジャパンアルバムチャートにTEAが用意されないため米ビルボードほど施策が目立つことはないと思うのですが、状況は注視する必要があると考えます。
ビルボードジャパンにはアルバムチャートにおける詳細なチャートポリシー(集計方法)の開示を願いますが、まずは12月26日公開分の新アルバムチャートを注目したいと思います。