<イベントレポート>アジア初のカンファレンス【Billboard ASIA Conference 2025】開催 各国ビルボード代表が戦略を共有 https://t.co/rirN4MAB0K
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月30日
先月行われたカンファレンスにて、ビルボードジャパンでチャートディレクターを務める礒﨑誠二さんが示した内容を興味深く感じています。
磯崎氏はまず、5月に初開催された【MUSIC AWARDS JAPAN】(以下【MAJ】)の結果レポートとして、アワード関連楽曲のストリーミング動向を発表。受賞曲とパフォーマンス曲の中で、開催後にストリーミングの増加率と増加数トップ5(国内&国外)を公開し、その傾向と違いに関する解説を行った。また、LUMINATEの"CONNECT"サービスを用いて日別の再生数推移を表示し、開催日に対してどのタイミングから効果が現れているかを説明。国外を含む他の主要アワードにおける傾向とも比較し、【MAJ】は国外に対する訴求力を伸ばしていく余地が残っていると話した。【MAJ】を一つのIPとし、それを“線”として繋げていき、最終的には様々なアーティストが様々な国々で聴かれるような“面”を作り出していく流れの始まりを示す結果に今回はなっていると説明した。
この『開催後にストリーミングの増加率と増加数トップ5(国内&国外)』については、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんがYahoo! JAPANに寄稿したコラムで紹介されています。
『今回の「MUSIC AWARDS JAPAN」の前後で、受賞曲に関しては平均で31%の再生数の増加がみられ、パフォーマンス曲においては、なんと平均で49%もの再生数の増加がみられた』『実は「MUSIC AWARDS JAPAN」の授賞式の開催後、国外においても受賞曲は平均で14%、パフォーマンス曲は平均で31%の再生数の増加がみられた』(上記コラムより)という点から、MUSIC AWARDS JAPANのインパクトの小さくなさを実感します。
徳力基彦さんは『あまり日本の楽曲の海外のチャート上での動きがなかったことから、海外での話題は無風に近かったのでは』と述べていますが、自分も授賞式直後におけるGlobal Japan Songs Excl. Japanの動向を踏まえた上でMUSIC AWARDS JAPANの影響度は大きくないものと捉えていました。
その認識を改める必要があると感じつつ、MUSIC AWARDS JAPANの映像が即座にYouTubeでアーカイブ化され、グラミー賞のようにパフォーマンス映像を歌手側の公式YouTubeチャンネルへ貸与していたならば尚の事、楽曲の勢いはより高まったはずだという考えは変わりません。YouTube関連の問題は上記エントリーでも触れていますが、そのMUSIC AWARDS JAPANは先週になって海外向けにアーカイブを発信しています。
The wait is over! MAJ’s first-ever Premiere Ceremony and Grand Ceremony are now available in full to stream on YouTube for viewers outside of Japan. Watch the entire experience, including performances!https://t.co/6oaumYFiVO#MAJ2025 #MUSICAWARDSJAPAN
— MUSIC AWARDS JAPAN GLOBAL (@MAJ_CEIPAGLOBAL) 2025年7月1日
一方で国内でのアーカイブ化はLeminoが実施。MUSIC AWARDS JAPANのスポンサー対応(同サービスを提供するdocomoがMUSIC AWARDS JAPANのゴールドパートナーであること)に伴い配信するプラットフォームを分けているのは理解できても、やはりしっくりこないというのが自分の見方です。加えてこのような事態も、疑念を深めることにつながっています。
#MUSICAWARDSJAPAN #MAJ2025 の授賞式動画(演歌・歌謡曲部門除く)がYouTubeにて全編視聴可能に。しかし日本国内ではYouTubeで視聴不可であるのみならず、同賞の公式Xアカウント(https://t.co/0IJAB9a58a)ではこの旨が発信されていません。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年7月1日
スポンサーへの配慮だと理解しつつ、やはり残念に思います。 https://t.co/M2CQuCQgNk
さて、徳力基彦さんのコラムではMUSIC AWARDS JAPANで披露されたYOASOBI「PLAYERS」のストリーミング倍増について紹介しています。これはコラムにもあるように「PLAYERS」の英語詞版リリースに伴うものですが、下記プレスリリースにて英語詞版のリリースをMUSIC AWARDS JAPANと関連付けていることからも解るように、YOASOBI側は注目度上昇を踏まえてこのタイミングで解禁したことが見て取れます。
この施策から、「アイドル」(2023)が米ビルボードによるGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除く)を初めて制した際の施策が活きていることを実感した次第。同曲においては英語詞版の加算がチャートの初制覇につながっていますが、そのリリース日をグローバルチャートの集計期間初日となる金曜に設定したことも功を奏しています。ビルボードジャパンは月曜開始のため日本のチャートで有利になりにくいとしても、です。
YOASOBI「アイドル」における施策やスタンスについては上記エントリーで紹介していますが、「PLAYERS」においてもその姿勢は表れています。
徳力基彦さんはコラムにて『アーティストの努力によってその効果をさらに大きくすることも可能』と記していますが、海外でのヒットを輩出したいと考えるならば海外チャートの性質を知り、それに即した施策を実行することが重要だというのが、音楽チャート分析者としての揺るぎない見方です。その視点を踏まえ、先月にはBE:FIRST「夢中」でのリリーススケジュールを検証しています。
同時に、やはりビルボードジャパンには、ソングチャート等についての集計開始日を金曜にする、様々なバージョンを合算する等、グローバルチャートに即したチャートポリシー(集計方法)にすることを前向きに検討すべきと考えます。以前から述べていることですが、今一度提案させていただきます。