昨年11月13日、『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 2023年12月31日放送 以下"紅白"と表示)の出場歌手(第一弾)が発表されています。その発表日に、このブログでは出場歌手の傾向を分析し、以下のように結論付けました。
今年の紅白は、若手や初出場歌手は主にビルボードジャパンの各種チャートが、中堅やベテランは(初登場や復帰組も含め)世論の支持やNHKとの関連性が大きく影響することを実感しています。
今回は、仮に今年の大晦日も紅白が放送されると仮定した上で、現時点で出場が見込まれる歌手を採り上げます。
昨年の紅白出場歌手発表が11月13日以降であったことを踏まえれば、若手ならびに初登場歌手において大きな選定基準であるビルボードジャパン各種チャートについては10月もしくは11月頃からの1年間が判断期間と考えられます。その上で、まずはソングチャートを踏まえて初出場が見込まれる歌手を挙げてみます。
今年1月リリースの「Bling-Bang-Bang-Born」が世界でのダンスチャレンジによるバズを経て日本で大ヒットし、最新5月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートまで通算14週首位を獲得。Spotifyデイリー再生回数において土日祝日が伸びる傾向を踏まえれば、この曲が老若男女問わず聴いている状況が見て取れます(ドライブをはじめとする行楽のお供や運動会等の行事にも)。今年を代表するヒット曲として披露されそうです。
・tuki.
昨年12月以降ビルボードジャパンソングチャートでトップ10入りを続け、1月24日公開分でキャリア初の首位を獲得。顔出しは行わないながらもテレビ出演を始めており、昨年のAdoさんにような顔出し無しでのパフォーマンスを行う可能性も考えられます。
・Omoinotake
ヒット曲を多数輩出するTBS火曜22時の連続ドラマ枠で1月クールの『Eye Love You』主題歌に起用されたOmoinotake「幾億光年」は、ビルボードジャパンソングチャート最高2位、最新5月8日公開分まで12週連続でトップ10入りを果たしています。
・ILLIT「Magnetic」
K-POPの中で高い人気を誇り、最新5月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートまで6週連続でトップ10入り(最高3位)を記録しているILLIT「Magnetic」。昨年のNewJeans初出場の流れを受け、ILLITも出場に至るかに注目です。ただしHYBEとADORの問題もあり、ともすれば先行きは不透明といえるかもしれません。
・Number_i
元King & Princeのメンバー3名がTOBEに移籍、新グループとしてリリースしたファーストシングルはデジタル加算初週にビルボードジャパンソングチャートで首位初登場、フィジカルセールス初加算週には2位に再浮上し、現時点でもビルボードジャパンソングチャート50位以内をキープ。NHKには3月2日放送の『Venue101』(NHK総合)で出演を果たしています。
K-POPについてはビルボードジャパンソングチャート、また特に男性ダンスボーカルグループにおいてはビルボードジャパンアルバムチャートの動向が重視される傾向にあり、ロングヒットを続けるLE SSERAFIMやNewJeansの出演は十分考えられます(ただし所属事務所の問題が長引かないことが求められるでしょう)。また後述するNHK音楽特番に出演した実績を踏まえ、TOMORROW X TOGETHERが出場する可能性もあります。
一方でSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手については、旧ジャニーズ事務所の初代社長による性加害問題が解決に至らない限りは紅白に限らず出演を見合わせることをNHK側は言及しています。STARTO ENTERTAINMENT側は昨年大晦日のSnow Man生配信の成功(同時接続者数の多さ等を基準とする)を踏まえ、ともすればNHK側が出演を許可しても紅白出場を控える傾向も考えられますが、何よりもまずは問題の解決が最優先です。
紅白についてはNHKで特別番組が用意されること、タイアップ曲が用いられることも出場への近道といえます。先述したTOMORROW X TOGETHERは『Venue101』内の特番でワンマンが組まれ、tuki.さんはNHKのラジオ特番『君声ラジオ』に出演しています。なお『君声ラジオ』と同じ日に放送されたテレビ特番『ライブ・エール 2024』は紅白と同じXアカウントで発信されており、特番出演者も紅白出場が近いといえるでしょう。
朝の連続テレビ小説で主題歌を担当した歌手の紅白出場率は高く、ゆえに米津玄師さんが「さよーならまたいつか!」(『虎に翼』主題歌)で出場することも考えられます。なお初出演時に披露した「Lemon」が主題歌となった『アンナチュラル』(TBS 2018)、および『MIU404』(同 2020)の世界線と交差する映画『ラストマイル』においても米津玄師さんが主題歌「がらくた」を提供することから、2曲の披露も有り得るでしょう。
(なお朝の連続テレビ小説において、近年では『なつぞら』(2019)に「優しいあの子」を提供したスピッツは同年の紅白に出場していません。スピッツは「美しい鰭」が昨年ヒットしながら紅白に出場しておらず、不出場はスピッツ側の意志と捉えていいでしょう。)
そして昨年の紅白出場歌手の選定において、中堅やベテラン歌手の少なくなさを感じています。今回は復帰が見込まれる歌手として以下の3組を採り上げます。
・aiko
映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星 (みちしるべ)』は前作『黒鉄の魚影 (サブマリン)』を上回るペースで興行収入100億円を突破。主題歌であるaiko「相思相愛」も最新5月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートで3週連続トップ10入りし、本日公開分ではフィジカルセールス指標初加算に伴い上位進出が予想されます。5年ぶりの返り咲きにて同年リリースの曲を披露するかもしれません。
・西川貴教 with t.komuro
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』主題歌の西川貴教 with t.komuro「FREEDOM」はビルボードジャパンソングチャートで100位以内在籍8週、最高14位。好成績とは言い難いかもしれませんが、映画は現時点で興行収入46億円を突破しシリーズ史上最高の記録を収めています。西川貴教さんはT.M.Revolution名義、パフォーマーとしての紅白出演が2014年で最後となっていますが、映画のヒットを踏まえた出場可能性は十分です。
(なおアニメ映画では『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が現時点で興行収入104億円を記録。主題歌であるSPYAIR「オレンジ」はビルボードジャパンソングチャートで12週連続ランクイン且つ最高8位を記録していることから彼らの初出場も考えられますが、興行収入と社会的ヒットとの関係性を各メディアによる上半期ヒットランキング等から判断した上で、SPYAIRの出場可能性を判断する必要があると感じています。)
西川貴教さんが出るならば、「FREEDOM」でタッグを組む小室哲哉さんが在籍するTM NETWORKも「Get Wild」で36年ぶりに出場する可能性があるでしょう。「Get Wild Continual」がエンディングに起用された映画『シティーハンター』はNetflixの週間グローバルチャート(非英語映画対象)で首位を記録。海外での放送も踏まえるにベテランの選出可能性は十分です。40周年を迎えた彼らのラジオ特番もNHKで組まれています。
そのほか、オールタイムベストアルバムが大ヒットした宇多田ヒカルさんが今年の目玉になるかもしれません(NHKでは特番も放送)。また、Official髭男dism「Subtitle」や藤井風「花」といったヒット曲を輩出したドラマと同じ座組による『海のはじまり』(フジテレビ 7月クール)に起用された主題歌が選ばれる可能性もあるでしょう。
そして昨年の紅白初出場や前日の日本レコード大賞受賞を機にさらなるステップアップを果たしたMrs. GREEN APPLEは、現在の「ライラック」のヒットも踏まえれば当確といえます。
以上、出場が見込める10組を動画付で紹介しましたが、最後に水森かおりさんを紹介します。元日に発生した能登半島地震の復興を願い、2008年リリースの「輪島朝市」を披露する可能性が高いととみています。この曲は昨日放送の『うたコン』でも披露されていましたが、紅白はエールを送る番組という側面もあることから、過度な演出を排してこの曲を披露することは十分考えられます。
(近年では紅白における演歌歌謡曲枠が縮小し、そのことに対する非難もみられますが、ジャンル再興のためにはフィジカルセールス主体且つ複数種を数度リリースするという手法からの脱却が必要と考えます。社会的ヒットに至る作品が登場することで、昨年の水森かおりさん披露時におけるドミノ披露に代表されるようなバラエティ寄りな演出も減ると捉えています。)
ひとつ気になるのは、水森かおり「輪島朝市」のミュージックビデオがYouTubeで、またサブスクがSpotifyでアップされていないということ。昨年はデジタルに明るくないSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手が未出場だったこともあり紅白披露曲のほとんどはサブスクでチェックできたものの、水森かおりさんの「日向岬」はありませんでした。デジタルで即座にチェックできる環境の構築は、演歌歌謡曲界において必須と考えます。
(上記Spotifyのプレイリストでは、ディズニー企画披露曲において歌手名は異なるものの、紅白披露曲では水森かおり「日向岬」を除きすべて網羅しています。)