『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と表記)の追加出場歌手が続々発表されています。
このブログでは以前、3組の出場発表を機にその背景を考えるエントリーを公開。興味深いのはその後、最新12月17日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートにてAKB48『神曲たち』(2010年リリース)が総合52位、ストリーミング指標では47位に初登場を果たしたということ。紅白出場アナウンスもプラスに作用したと考えていいかもしれません。
また先週はback numberの紅白出場もアナウンスされ、その点は年末の地上波長時間音楽特番出演歌手傾向を記した際に紹介しています。back numberは今年のリリースが少なかったもののストリーミングヒットを継続し、そしてこのタイミングで「クリスマスソング」共々上昇している点は【トップアーティストチャート】Mrs. GREEN APPLE5連覇、Snow Manトップ10内に返り咲き(12月18日付)でもお伝えしたとおりです。
では今回は、追加出場が発表された星野源さんおよび玉置浩二さんについて、分析します。
🔴第76回 #NHK紅白 ⚪️
— NHK紅白歌合戦 (@nhk_kouhaku) 2025年12月16日
<特別企画>#星野源 出場決定!✨️
披露するのは、
今年発表したオリジナルアルバム制作の原点となった楽曲『創造』。
<ものづくり>への
想いが込められたこの曲を
京都府宇治市・ニンテンドーミュージアムから
SPパフォーマンス🎤
詳細は👉https://t.co/lfUWCuicRq pic.twitter.com/9Eujsz0GHr
NHKのホームページでもオリジナルアルバム『Gen』について触れられていますが、同作品は2025年度ビルボードジャパン年間アルバムチャートで35位にランクインしています。
昨年度の年間チャート分析時に、『2025年度リリースのオリジナルアルバムは強くない状況』という項目を用意しました。昨年最終週以降アルバムチャートにストリーミング指標が組み入れられたことが大きく影響しており、年間チャート100位以内における集計期間前リリース作品の登場は2024年度の8作品から72作品へと急増しています。

(上記は2025年度最終週までにおける星野源『Gen』のCHART insight。順位および累計ポイント構成比は2025年度最終週(まで)を指します。なお上記は有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示。ビルボードジャパンは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)
星野源『Gen』は2025年度集計期間内リリース作品にて数少ない、年間100位以内エントリーを達成。注目はストリーミング指標(青で表示)の強さであり、聴かれ続けていることが解ります。なおビルボードジャパンは2025年度下半期初週以降、ストリーミング指標の基となるチャートを指標化する際にロングヒット作品に対し減算処理を施すリカレントルールを用意。『Gen』の登場27週目における急落はこのルール適用を示します。
ビルボードジャパンアルバムチャート変革の結果は、上記エントリーでも紹介しています。アルバムチャートにおいても社会的ヒットの鑑という位置付けが強まったと捉える一方、そのアルバムチャートはソングチャートほど紅白が考慮に入れていないのではという疑問を抱いていました((追記あり)『第76回NHK紅白歌合戦』出場歌手が発表、その顔ぶれを考える(11月14日付)参照)。その考えは杞憂かもしれないと考え始めています。
🔴第76回 #NHK紅白 ⚪️
— NHK紅白歌合戦 (@nhk_kouhaku) 2025年12月18日
<特別企画>#玉置浩二 出場決定!✨
歌うのは3年ぶりにドラマ主題歌として書き下ろし
大きな話題を集めている楽曲『ファンファーレ』
玉置さんの今の思いが詰まった応援歌です📣
紅白のステージがテレビ初披露!
お楽しみに🎤
詳細は👉https://t.co/KlfOi5gBGc pic.twitter.com/JgLnhNTzoW
2020年代の紅白において、玉置浩二さんは安全地帯での活動を含め、4回目の出場を果たします。昨年も「悲しみにさよなら」で特別企画に登場しており、今回は可能性が低いと勝手ながら考えていました。しかしながら今年は、『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS)主題歌としてヒット中の「ファンファーレ」を披露するということが既にアナウンスされており、その選曲に納得しています。

「ファンファーレ」は最新12月17日公開分のビルボードジャパンソングチャートで27位に登場し、7週連続で100位以内に在籍。フィジカルセールス(黄色)、ダウンロード(紫)の安定もさることながら、動画再生(赤)が上位をキープ、そしてストリーミングが上昇しています。代表曲のひとつである「田園」を用いたミュージックビデオも注目度の高さにつながっていますが、ヒット最大の要たるストリーミングの上昇は注目すべきです。
ドラマ主題歌が必ずしもヒットするわけではない、またベテラン歌手が接触指標群でヒットを続けることもあまりみられないといえる日本の音楽業界で、玉置浩二「ファンファーレ」はヒットを果たしています。総合ソングチャートでトップ10ヒットには至れていないものの、紅白効果が今後の動向に作用することは十分考えられます。
「ファンファーレ」については、1ヶ月前に以下の内容を記しています。
玉置浩二「ファンファーレ」はデジタルをきちんと解禁し、ミュージックビデオもフルバージョンでアップしているからこそ、フィジカルセールス指標初加算時であってもそれに頼らないヒットの形、そしてロングヒットの可能性を示しています。ベテラン歌手のデジタルに対する姿勢が功を奏していると判った以上、すべての歌手がデジタルに積極的にならない手はないはずです。
そしてその後のヒット継続を踏まえれば、デジタルに前向きになることは必須だと解るでしょう。そしてこの”前向き”については、たとえば「田園」がヒットした30年ほど前に音楽をよく聴いていた世代、そして安全地帯をデビュー時から知っている世代の方々に対しても、自分が願っていることです。
#玉置浩二「ファンファーレ」は最新のビルボードジャパンソングチャートにて7週連続で100位以内に登場。テレビ初披露以降のチャート動向に注目するのみならず、これを機にたとえば「田園」を好んで聴いていた方がストリーミングを用いるという習慣が根付くことを願います。 https://t.co/JTiAJooAwX
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年12月18日
今の音楽チャートは個々のヒットを反映せず時代錯誤だと耳にする機会が増えていますが、社会的ヒットの鑑たるチャートは個々のヒットの集合体ゆえ、ある程度の乖離は自然でしょう(音楽チャート管理者側が自問自答し社会的ヒットの鑑としての精度を上げ続けることは勿論必要)。チャートを非難する前に、たとえば新曲がより聴かれる環境の構築、サブスク聴取者という母体の上昇等を図り、動き、未来を切り拓くほうがより好いでしょう。そして紅白は、社会的ヒットの鑑たるチャートを選出の参考にしています。
そして、デジタルに明るくなる音楽ファンが増えることで、音楽チャートや紅白に対する見方も変わっていくはずです。無論音楽チャートや紅白が完璧ではないとして、その問題点に対しては感情論ではなく建設的な意見を出すようになるものと捉えています。この考えは、以下の発信内容を踏まえてのものでもあります。
そして、本日の記者会見では堺正章さんによる発言に強い違和感を抱いています。
(中略)
老若男女に共通するヒット曲が乏しいと今の時代を嘆き、昭和は良かったと回顧していましたが、しかし多様な音楽の聴かれ方/買われ方がある今の時代にヒットを輩出した歌手の多くがきちんと紅白に選ばれています。そして多様な聴かれ方/買われ方の時代に、紅白も参考としているであろうビルボードジャパンによる複合指標に基づくチャートが登場し、ブラッシュアップを重ねて社会的ヒットの鑑となっています。
昔は良かったとばかり言うのではなく、良かったのならばそれを今に伝えるべく努力するよう、年配の音楽関係者に対し願うばかりです。デジタルアーカイブの充実、年配ユーザーへのストリーミング聴取推進等については、たとえば演歌歌謡曲のシュリンクを踏まえてこのブログで幾度となく提案していますが、実際には行っているのでしょうか。変えたいならば今の時代を腐すことなく、そして動くことを心から願います。
玉置浩二「ファンファーレ」のヒットを経て(紅白披露に伴いヒット規模がさらに大きくなるならば尚の事)、日本の音楽業界が、その受け手等も含めてデジタルに前向きに成っていくことを願います。