日本時間の火曜早朝に発表予定の8月27日付米ビルボードソングスチャートでは、多くのチャート予想担当者がニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」の初登場での首位獲得を指摘しています。
(上記は公式リリックビデオ。)
ミュージックビデオが未公開のまま次週のソングスチャートの集計期間(8月18日)を終えたものの、ストリーミング指標でもトップに近い数値を上げている模様です。そして何より今回、ダウンロード指標が大きな武器になっていると言えます。
— Winston (@WinstonNuo) August 21, 2022
今回の「Super Freaky Girl」において、ニッキー・ミナージュは首位獲得を強く目指していたことが伺えます。今回はその点を紹介し、真の社会的ヒットに至るかを考えます。
ニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」はいわゆる大ネタ使いの曲であり、リック・ジェームス「Super Freak」(1981 米16位)をサンプリングしています。この曲自体も有名ですが、サンプリングしたM.C.ハマー(MCハマーと表記するところも)「U Can't Touch This」(1990 米8位)が特に日本でヒットしたことで、「Super Freaky Girl」に反応する方は多いでしょう。
新曲「Super Freaky Girl」は、ニッキー・ミナージュにとって2019年の「Megatron」以来のソロ・シングルで、リック・ジェームスの記念碑的大ヒット曲「Super Freak」を、彼女の代名詞でもある名言ラップを織り交ぜ大胆にサンプリングしたものhttps://t.co/gP5UmYBgKr
— uDiscoverJP:音楽サイト (@uDiscoverJP) August 19, 2022
「Super Freaky Girl」はその曲名自体が「Super Freak」を想起させるのみならず、ニッキー・ミナージュ自身の大ヒット曲である「Super Bass」(2011 米3位 同年年間米8位)も思わせます。曲の構成、そしてタイトルのキャッチーさがヒットの一因となることは自然でしょう。
そしてダウンロード指標における様々な施策が、「Super Freaky Girl」の首位発進に貢献する可能性は十分です。
「Super Freaky Girl」を発売したばかりのニッキー・ミナージュが新たなシングルを予告https://t.co/gP5UmYBgKr
— uDiscoverJP:音楽サイト (@uDiscoverJP) August 19, 2022
現在USのiTunesでは4つのVer.がチャート独占中
Super Freaky Girl - Remix / Explicit
Super Freaky Girl - Remix / Clean
Super Freaky Girl - Explicit
Super Freaky Girl - Clean pic.twitter.com/0Q18p8yb9U
ニッキー・ミナージュは「Super Freaky Girl」のRoman Remixをリリース。ニッキーの別人格(分身)である"ローマン・ゾランスキ"の名を冠した長尺リミックスは、8月27日付米ビルボードソングスチャートの集計期間最終日に突如リリースされました。リミックスの追加投入がソングスチャートでの首位に貢献する例は、このブログにおいてはビヨンセ「Break My Soul」にて紹介したばかりです。
(実際上記ブログエントリーを掲載した直後、日本時間8月9日火曜に発表された8月13日付米ビルボードソングスチャートではビヨンセ「Break My Soul」が初の首位を獲得。)
https://t.co/ccHP2wBsB6 pic.twitter.com/uZL6gJQxbC
— Nicki Minaj (@NICKIMINAJ) August 18, 2022
そもそもニッキー・ミナージュは、これまでも米ビルボードソングスチャートで最上位への進出に意欲的と感じていました。上記のみならず複数の「Super Freaky Girl」訴求ツイートがみられることも、その意識の高さを思わせるに十分です。
ニッキー・ミナージュといえば、シックスナイン(6ix9ine)と共演したシングル「Trollz」が一昨年6月に初登場で米ビルボードソングスチャートを制覇。当時有効だったフィジカル施策の実施によりダウンロード指標が高水準に達したことが、総合首位獲得の理由です(下記リンク先参照)。シックスナインが前作「Gooba」で首位未達となり(それを起因とした問題も下記リンク先に掲載)、「Trollz」で施策を徹底した結果とも言えます。
結果的に「Trollz」は首位獲得の翌週に34位へ大きく後退し、初登場首位獲得曲のワースト記録を更新しています(2020年7月4日付米ビルボードソングスチャートはこちら)。これではとても「Trollz」を社会的ヒット曲と呼ぶことはできませんが、週間チャートでも首位に立つことに意欲的だったとも考えられます。なお首位獲得に有効とされたフィジカル施策は、一昨年秋に実質無効化されています。
タイトルの付け方、リミックスのリリースタイミングや過去の実績等、ニッキー・ミナージュはヒットの輩出に意欲的と感じています。重要なのは上位初登場後にロングヒットに至れるかですが、認知度の高い曲を用いた大ネタ使いがプラスに作用するかもしれません。
最近ではリュダクリスを迎えたファーギーの米No.1ヒット「Glamorous」を用いた、ジャック・ハーロウ「First Class」が米チャートで総合首位を獲得。米ビルボードソングスチャートの3指標でとりわけロングヒットに欠かせないのはラジオ指標であり、ヒップホップはこの指標に強くないと言われる中、「First Class」は4週連続でこの指標を制しました。これは米首位曲の引用もプラスに作用したと考えていいでしょう。
ニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」は上位での初登場後にどうなっていくか、注目です。ビヨンセが「Break My Soul」がマドンナ「Vogue」使いのリミックス投入で2週連続首位を獲得したこともあり、ニッキー側も追加の施策を用意する可能性がありそうです。仮に翌週のチャートで急落したならば、米ビルボードはダウンロード指標についての見直しの必要も出てくるでしょう。
最後に、そのダウンロード指標について。米ビルボードは8月13日ソングスチャートで、どうやらこの指標のウエイトを引き下げた可能性があります。これについては予想担当者が疑問視している一方、米ビルボード側はチャートポリシー変更について言及していません。
Based on calculations using official data, the weight of digital sales has slipped from the previous two years. Using this week's "Bad Decisions" as an example, it would have debuts at No. 5, but it only debuted at No. 10
— Winston (@WinstonNuo) August 16, 2022
事実ならば、米ビルボードはきちんと伝えるべきです。