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BTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」の米ビルボード動向を読む…複数週チェックが必要

6月10日にリリースされたBTSのアンソロジーアルバム『Proof』、そしてそこからのリード曲「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」のチャート動向を注目せずにはいられません。リード曲は日本の6月22日公開分(6月27日付)ビルボードジャパンソングスチャートを制する可能性が高く、またグローバルチャートでも6月25日付での初登場上位進出は確定と言えますが、特に気になるのは米での動向です。

BTSは「Dynamite」「Butter」で、米でのグラミー賞受賞を逃しています。米ビルボードソングスチャートを複数週制しながらも他の地域よりはるかに所有指標に偏っていたこと、接触指標群がそこまで安定せずライト層にリーチしたとは言い難いことが背景にあると考え、上記ブログエントリーに私見を記しました。「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」で今度こそ受賞を…そんな思いはゼロではないと思われます。

となると「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」の米ビルボードソングスチャートでの動向、特に接触指標群の安定が重要となってきますが、初登場時のインパクトも大事です。しかしながら米ビルボードの予想担当者の中には、リード曲の初登場でのトップ10入りが難しいと捉えている方もいらっしゃいます。

日本時間の明日までに様々な予想が登場しますが、多くの方は10位前後としてこの曲を据えてくることでしょう。

 

「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」の歌詞は上記リンク先に掲載。英語以外の曲がグローバルチャートでも増えてきた一方で、米ビルボードソングスチャートは英語以外の曲のヒットがまだまだ難しいという印象があります。今回のリード曲は韓国語も入っており、アルバム『Be』のリード曲「Life Goes On」のチャートアクションを参考にする必要があるでしょう。実際「Life Goes On」は初登場首位となりましたが。

前週首位を獲得したBTS「Life Goes On」は28位へ急落してしまいました。これは前週予想した状況といえ、シックスナイン & ニッキー・ミナージュ「Trollz」(2020)の1→33位に次ぐワースト2位の急落記録を樹立してしまいました。

2020年12月5日付米ビルボードソングスチャート(解説したブログエントリーはこちら)で初登場首位を達成したBTS「Life Goes On」は翌週急落。この事態は初登場週における所有指標10万超えの一方でラジオが100万にも届いていなかったことから予想できたことではありますが、一方で所有指標の強さが初週の総合順位を押し上げるため今回のリード曲も同様の初週チャートアクションならば…という期待もあるでしょう。

しかし、先述したチャート予想担当者によるツイートでは、「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」のダウンロード指標が4万前後となっています。これはおそらく、一部で噂となっているデジタルダウンロードに関するチャートポリシー変更を視野に入れている可能性もあります。

チャートポリシー変更報道は100%信頼できるものではないとして、しかし事実ならば所有指標が著しく強い(一方で他指標が伴っていない)曲はたとえ短期的であったとしても上位進出が難しくなるでしょう。米ビルボードがこの変更を実際に行ったかをアナウンスすることがまずは重要ですが、事実ならば所有指標に強いBTSの作品が接触指標群に強くならない限り、チャート制覇もグラミー受賞の道のりも遠くなると考えます。

 

日本時間の明後日発表される予定の米ビルボードソングスチャートにおいてどのような結果となるかは分かりませんが、それでもBTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」が初登場でトップ10入りを狙える位置にいるのは凄いことです。一方で重要なのは2週目の動向です。

ビルボードソングスチャートはストリーミング(動画再生を含む)、ダウンロード(フィジカルを含み、歌手のホームページにおける販売分も含む)、およびラジオの3指標で構成され、デジタル2指標はロケットスタートを切りやすい一方でラジオはスロースタートというのが特徴。ゆえに、所有指標が急落しストリーミングもダウン傾向、一方でラジオが緩やかに上昇しはじめる2週目以降の動向が大事となり、初週に所有指標を武器に総合でトップ10入りを果たしても翌週急落する可能性があるのです。

BTSは「Life Goes On」では登場2週目の急落となった一方、「Dynamite」や「Butter」は複数週米ビルボードソングスチャートを制しています。ラジオで緩やかな伸びがみられたこともありますが、リミックス投入も大きいながらダウンロードがずっと高いという特殊な状況が複数週制覇の原動力となっていました。先述したチャートポリシー変更報道が事実ならば、この状況を考慮したとみるのは自然なことでしょう。

 

BTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」に限らず、米ビルボードソングスチャートにおいては初登場週および2週目の動向をみて真の社会的ヒット曲に至れるかを判断することが必要です。そして複数週の動向を踏まえた判断は、アルバムチャートにおいても重要な見方です。この点やアルバムチャートの特徴については、『Proof』のリリースがアナウンスされた直後のブログエントリーで記しています。

ベストアルバムに近い特性や収録曲の多さが有利になる米ビルボードアルバムチャートのチャートポリシーを踏まえれば、BTS『Proof』はこれまで以上にロングヒットすると思われますが、リード曲のヒットがアルバムチャートの勢いをより長くするものと考えれば、ソングスチャートで存在感を示すことがやはり必要でしょう。米でのソングス/アルバム双方のチャートにおけるBTSの複数週の動向、注視していきたいと思います。