イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

音楽フェスのMCで差別発言した歌手に米メディアはNOを示し、音楽チャートにも反映…日本はどう対応する

昨日から開催中の音楽フェス、サマーソニックにてリナ・サワヤマが称賛されています。

(勝手ながらツイートを紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

リナ・サワヤマの発言に感銘を受けた一方で日本の歌手の発信しない姿勢に悲しみや不信感をあらためて抱く方は少なくなかったのではないでしょうか。しかもこのフェスでは同日、ステージに立った日本人歌手が外国人歌手による日本でライブできる喜び等を日本語で表現したMCを真似た等のツイートがみられ、日本の歌手は社会問題に言及しないどころか差別に加担しているのかと愕然とさせられました。

 

日本では権利を主張する者を冷めた目でみる空気が根強く、改善する気配はみられませんが、海外でははっきりと問題視されます。そして海外における差別を許さない姿勢は、音楽チャートでもはっきり表れるのです。

 

その最たる例がダベイビー。2021年7月の音楽フェスに登場した彼は、MCでHIV感染者や同性愛者を蔑視する発言を実施。MCは瞬く間に拡散され、ダベイビーは謝罪したものの自分の主張は間違っていないという姿勢がさらなる問題に発展しています。下記にそのMCの内容が掲載されていますが、そのMC等は聞くに堪えない幼稚さだと断言します。

このダベイビーの一連の発言に、はっきりNOを示したのがデュア・リパでした。彼女の姿勢は称賛され、R&B歌手のヴィクトリア・モネ(ヴィクトリア・モネイと表記するところもあり)はこのような言葉を贈っています。

デュアがきっぱりとした態度を示したことにはファンや他のアーティストからも称賛の声が上がっている。シンガーのヴィクトリア・モネは「もしデュアが『Levitating』のダベイビーのパートを再録音したいなら、私はいつでもできるよ」とツイートしている。

デュア・リパは2020年から長きに渡り「Levitating」がヒットし、2021年度の米ビルボード年間ソングスチャートを制覇しましたが、大ヒットの要因のひとつにダベイビーを迎えたリミックス版のリリースが挙げられます。ラジオでも大ヒットしたこのリミックス版ですが、ダベイビーの差別発言の直後、そのラジオはボイコットを起こし始めるのです。

デュア・リパ feat. ダベイビー「Levitating」は2ランクダウンし5位に。ラジオは前週比1%ダウンとなる8040万を獲得し同指標首位をキープしています。客演参加のダベイビーは7月25日のライブでLGBTQやHIV/エイズに関する差別発言を行っており、ラジオでは7月25日にダベイビー参加版のOA率が71%だったのに対し集計期間最終日となる7月29日には59%にダウンしています。デュア・リパはこの差別発言を非難しています。

(※米チャートではオリジナルバージョンとリミックス版は合算されます。またリミックス版が客演追加である場合、獲得ポイント全体に占めるリミックスの割合がオリジナルバージョンを上回れば客演参加版がクレジットとなります。)

ダベイビーのライブ開催日を集計期間に含む2021年8月7日付米ビルボードソングスチャートではデュア・リパ「Levitating」が5位に後退。既にラジオでその問題視を踏まえたOA拒否やオリジナルバージョンへの差替がはじまっていましたが、3週後には「Levitating」の獲得ポイント全体に占めるリミックス版の割合がオリジナル版を下回ったことで、楽曲クレジットはデュア・リパ単体となりました。

最終的に昨年度の年間ソングスチャートを制した「Levitating」のクレジットはデュア・リパ単独となっています。仮にダベイビーが差別発言をせず、したとしてもきちんと謝罪し反省したならば、年間ソングスチャートでのクレジット追加も、また「Levitating」のさらなるロングヒットもあり得たでしょう。デュア・リパは後に単独版ミュージックビデオを用意したことも、ダベイビー版払拭の表れと言えそうです。

ダベイビーはその後、自身の主演作等で大きなヒットを獲得していません。

 

ダベイビーの差別発言に異を唱えること、その姿勢がラジオからみられたことは米メディアの良心を感じるに十分ではないでしょうか。一方で日本人歌手が、外国人歌手の感謝の意や社会を良くしたいという行動の表層だけをなぞった姿勢が垣間見られます(実際昨日のフェスでは2組、問題行動を行っていることが複数のツイートから確認できます)。歌手側のみならずそれを指摘しないメディア、意に介さない市井も問題でしょう。

リナ・サワヤマは明日、日本のメディアに登場します。この番組ではレギュラーではないものの、昨日のサマーソニックで問題行動を起こしたバンドのメンバーが不定期出演している模様であり、リナ・サワヤマと同じ日に登場するのではないかと不安に思う自分がいます。『スッキリ』側は差別に毅然と対応すると同時に、メディア全体が差別の内容を発信し、差別にNOを示すことの重要性を示してほしいと願います。