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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

テレビ効果、目立ち始めた初速とその反動、YOASOBI…日本のSpotifyデイリーチャートで最近目立つ傾向とは

日本におけるSpotifyデイリーチャートを日々定点観測すると、新たなヒット曲をある程度予測することが可能ですが、その他にも様々な気付きを得ることができます。今回は最新7月18日付を踏まえ、いくつかの動きを紹介します。

 

Spotifyデイリーチャートにはいくつかの特徴がみられます。LINE MUSICやApple Musicと比べて新曲が上昇しにくい、保守的と言えることがそのひとつ。また、50位以内にランクインした曲の急浮上と50位以内からランクダウンした曲の急下降も特徴で、このブログで”50位の壁”と呼ぶ現象にはプレイリスト効果が大きく影響しています。

再生回数は平日より土曜、土曜より日曜が伸び、平日の中でも金曜が最も少ない傾向がみられます。最新7月18日付は月曜ですが3連休の最終日のため、全体的に上昇しています。その最新日までの3ヶ月半における上位10曲(最新日の再生回数が16万を超えた作品)の推移はこちら。

 

1つ目の特徴は、ここ最近ビルボードジャパンソングスチャートでも最上位を争うOfficial髭男dism「ミックスナッツ」とSEKAI NO OWARI「Habit」、そして「ミックスナッツ」から7月12日付で首位の座を奪還したTani Yuuki「W/X/Y」の動向に表れています。この1週間においては「W/X/Y」の伸びが著しく、「Habit」も続く一方で「ミックスナッツ」が伸びていないことが解ります。

(Tani Yuuki「W/X/Y」はリリックビデオ。)

これは「W/X/Y」「Habit」共に『FNS歌謡祭』(フジテレビ 7月13日放送)、『音楽の日』(TBS 7月16日放送)で披露された一方、Official髭男dismはメンバーの新型コロナウイルス感染に伴い番組出演をキャンセルした影響が出ているものと推測されます。

この感染を原因としてKing Gnuは『音楽の日』、NiziUは2番組に加えて『ミュージックステーション』(テレビ朝日 7月15日放送)の出演をキャンセル。2組ともこの1週間に新曲をリリースしており、Spotifyのみならず他のデジタルプラットフォームでも初週の勢いが鈍くなったものと推測されます。

 

2つ目は、初登場直後の急落が目立ってきたということ。

上記は最新7月18日付で首位を記録したTani Yuuki「W/X/Y」に加えて、チャーリー・プース feat. ジョングク(BTS)「Left And Right」、BTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」、米津玄師「M八七」および ジョナス・ブルー feat. BE:FIRST「Don't Wake Me Up」における再生回数推移を示したもの。以前ブログで取り上げた「Don't Wake Me Up」は全体的に再生回数が伸びた最新日においても前日よりダウンしています。

(上記は公式オーディオ。)

チャーリー・プース feat. ジョングク(BTS)「Left And Right」、BTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」、米津玄師「M八七」もリリースから間もなくピークを迎えた後、徐々にダウン。特にBTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」は6月12日付で26万回再生を突破し翌日には首位を獲得したものの、最新7月18日付では11万回台で33位という状況です。

冒頭でお伝えしたようにSpotifyは新曲が上がりにくいサブスクサービスと言えるのですが、その中にあってロケットスタートを切る歌手の作品が増えてきました。強力なファンダムの形成やライト層からの注目も影響しリリース直後にヒットの軌道に乗ったと思われながらも、そこからすぐにダウンする傾向が目立ち始めています。

リリース初日に高位置に登場するのはアメリカ等海外でよく見られる傾向であり、日本でサブスクサービスが普及してきたことの表れと言えるかもしれません。その上昇自体は素晴らしいとして、その後もライト層を獲得しロングヒットにつなげることが大事だと感じています。

 

3つ目はYOASOBI。ここ最近「怪物」および「三原色」が50位ギリギリのラインを走行中です。

上記は英語詞曲、およびメンバー2名がソロ名義で参加したCreepy Nuts「ばかまじめ」を除く作品の推移。再生回数や順位が全体的にダウンしているのみならず、EP『THE BOOK 2』以降の新曲群(「ミスター」および「好きだ」)は50位の壁を上回ることなくダウンしています。

YOASOBIのSpotify動向については5月下旬に一度紹介しています。その際、「ミスター」等の施策が上昇に寄与する可能性を示唆しているのですが、その後リリースされた「好きだ」も含め、チャートにはあまり活きなかったと言えるかもしれません。

YOASOBIはビルボードジャパンによるアーティストチャート(Artist 100)での年間制覇を目標に掲げていますが、最新7月13日公開分(7月18日付)では6位に。特にSpotifyも含むストリーミング指標では2週連続で4位を記録し、2020年12月16日公開分(12月21日付)以来の低い水準となりました。

無論他の歌手に比べればYOASOBIのストリーミングの強さが目立つものの、この2年あまりの高水準に比べると落ち着いてきた印象があります。5月下旬のブログエントリーでは難しいことは承知で『必要なのは2022年度における大ヒット曲の登場でしょう』と書きましたが、50位の壁を破りヒットの軌道に乗る新曲が登場すれば過去曲も牽引されることでしょう。彼らの次の一手に注目です。