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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LINE MUSIC月間ランキングトップ10がすべて再生キャンペーン採用曲に…総合チャートの推移から見えてくるものとは

昨日発表された3月のLINE MUSIC月間ランキング、トップ10ランクイン曲が他のサブスクサービスとは大きく異なります。

ミュージックマンApple Musicの週間ランキングも毎週アナウンス。2月28日を集計初日とする週より4月3日までを集計期間とする週まで5週続けてKing Gnu「カメレオン」が制していますが、LINE MUSICでは月間11位となっています。

またSpotifyについては週もしくは月単位のランキングが発表されていませんが、自分がまとめたデータではLINE MUSIC月間ランキングトップ10ランクイン曲は1作品もSpotifyでトップ10入りしていません。

 

調べてみると3月のLINE MUSIC月間ランキングトップ10ランクイン曲はすべて、LINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)を実施しています。

後述する2月のLINE MUSIC月間ランキングでは他のサブスクサービスでも上位に登場するAimer「残響散歌」、優里「ベテルギウス」がトップ10に入っていましたが、先月はLINE MUSICの独自色が更に強まっています。これはSpotifyの動向を踏まえるに、「残響散歌」等上位陣のサブスク再生回数が漸減したことでLINE MUSICキャンペーン対象曲がより目立っていると言えるかもしれません。

 

さて、サブスク再生回数等に基づくビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標でも、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲はランクインしています。

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(最新4月6日公開分(4月11日付)までの分を掲載。なお第1四半期を13週として表示しています。)

2022年度のストリーミング指標、各週における上位20曲を上記に。青の表示はトップ10入りが2週以内且つその前後に一度も20位以内に入っていない作品を指しますが、季節的な要素で上位進出したback number「クリスマスソング」を除けばいずれもLINE MUSIC再生キャンペーン対象曲となります。

JO1「僕らの季節」は12月月間1位および1月月間8位、めいちゃん「ズルい幻」は2月月間1位、ENHYPEN「Always」は同月月間3位にランクイン。しかしながら他のサブスクサービスとの乖離がみられるためかビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標では急落し、総合ソングスチャートでも短命に終わる傾向であることが、ビルボードジャパンのチャートアクションからよく解るのです。

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落下速度は曲によって異なるものの、青で表示されたストリーミング指標がいずれも急落していることが解ります。2月のLINE MUSIC月間ランキングを制しためいちゃん「ズルい幻」にいたってはストリーミング指標で2週トップ10入りしながら翌週には100位未満、さらに次の週には300位以内からも姿を消してしまいました。

 

同じ接触指標である動画再生(赤で表示)がストリーミングと比例しないことも、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用しながらビルボードジャパンソングスチャートで急落する曲の傾向と言えます。ストリーミングと動画再生指標は本来は比例する傾向にあることが、最新チャートのCHART insightから解ります。

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ストリーミングおよび動画再生指標のトップ10に並べ替えたものをみると、ストリーミング指標のトップ10は動画再生でも上位に来る傾向があり、逆もそれに近いと言えます。なお、動画再生トップ10ランクイン曲のうちストリーミング100位未満の3曲はすべてジャニーズ事務所所属歌手の作品であり、この結果を踏まえればジャニーズ曲はサブスク解禁すればストリーミング指標でも上位に来ると言って差し支えないでしょう。

 

 

ストリーミング指標がそもそも急落する傾向ではないにも関わらず急落すること、動画再生等他指標の動きが釣り合わないことが、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲がロングヒットせず、社会的ヒットに至れない理由と言えます。

その中で、JO1「僕らの季節」はビルボードジャパンソングスチャート100位以内に11週連続でランクイン。「僕らの季節」に関しては11月および12月にLINE MUSIC再生キャンペーンを実施しており(上記参照)、ゆえに総合チャートでも再浮上する状況が生まれています。Twitter指標の高さはコアファンの数の多さと熱量の高さを示すに十分であり、その熱量がキャンペーン終了後も再生数をある程度持続させたと言えるでしょう。

この動きはBE:FIRST「Bye-Good-Bye」、INI「CALL 119」にも当てはまるものと思われます。つまりはコアなファンの熱量がLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の動きを一段階押し上げているのですが、しかしながら他のサブスクサービスや他指標との乖離があれば、そして失速が他の曲より大きいならば、弱点を見極めどう克服するかを考えなければいけません。

原因は自分にある。の2曲においてLINE MUSIC再生キャンペーン対象期間が重なったことで先行実施の「青、その他」が急落したことを踏まえれば、コアなファンの再生対象は新曲へと移行すると考えられます。先述した3組においても新曲登場のタイミングで前の曲の再生回数が下がる可能性は高く、それまでにキャンペーン採用曲へのライト層の支持を集めることが重要です。曲への多くの支持が総合でのヒットにつながります。

 

無論これは簡単なことではありません。しかしコアファンの熱量とライト層の人気とがあまりにも乖離した曲が登場する度、チャート運営側はチャートポリシー(集計方法)をその都度変更しています。これは海外でも同様です。下記ブログエントリー掲載後、ビルボードジャパンが2022年度第1四半期初週にフィジカルセールス指標のさらなるウエイト減少を行ったのは、設計思想を貫く姿勢といって間違いないでしょう。

ロングヒットの重要性は年間チャートへのランクインのみならず、たとえばメディアが無視できない状況を作るためにも重要ですが、どれだけライト層を味方につけるかがより肝心となるはずです。

 

 

ストリーミング指標や総合チャートの推移から、どの曲が社会的ヒットに成り得るかがみえてきます。弱点を克服すること、いずれLINE MUSIC再生キャンペーンに頼らなくともヒットを生み出せるようになることが必要です。そして現状を踏まえれば、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲に対しビルボードジャパンが動くことは必要だというのが私見です。設計思想に則っていただきたいと思っています。