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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ラジオから洋楽OAが減る? 最新チャートにおける洋楽の弱さ、およびラジオの傾向に対する私見

洋楽が強くなくなった、特にラジオで。そう言って差し支えない状況が生まれています。

ここで定義する洋楽はK-Popを除き、ビルボードジャパンによるHot Overseasチャートのランクイン対象曲を指します。Hot Overseasチャートはこちらから確認できます。

RADIO ON AIR DATA

(集計期間:2022年3月28日〜2022年4月3日)

1位「ブラザービートSnow Man

2位「まつり」藤井 風

3位「月の椀」サカナクション

4位「双葉」あいみょん

5位「MIU」中村 佳穂

6位「ニュー・マイ・ノーマル」Mrs.GREEN APPLE

7位「Another Day Goes By」Lizabet

8位「永遠」Mr.Children

9位「STEP IT」Nulbarich

10位「カメレオン」King Gnu

10位「さくら」ケツメイシ

上記はビルボードジャパンソングスチャートのラジオ指標の基となる、プランテックが提供する全国31局のラジオオンエアチャート。集計期間はビルボードジャパン各種チャートの4月6日公開分(4月11日付)に準じます。

このチャートのトップ10はLizabet「Another Day Goes By」を除くすべてが邦楽であり、また「Another Day Goes By」がHot Overseasチャートにランクインしていないため洋楽がひとつも入っていないと形容することも可能です。

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ビルボードジャパンはプランテックのデータを基に、聴取可能人口等を加味して独自のラジオ指標を作成、ソングスチャートに組み込んでいます。最新4月6日公開分(4月11日付)におけるラジオ指標のトップ10にはLizabet「Another Day Goes By」が入らず、韓国発で全て日本人にて構成されるXG「Tippy Toes」が10位に登場。しかし、いずれにせよK-Pop以外の洋楽がトップ10入りしていない状況となっています。

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(最新4月6日公開分(4月11日付)までの分を掲載。なお第1四半期を13週として表示しています。)

2022年度のビルボードジャパンソングスチャートにおけるラジオ指標、各週の上位20曲を表にまとめていますが、K-Pop以外で且つHot Overseasチャートランクイン対象となる洋楽は最新週が最も少ないことが解ります。それも日本時間で4月4日に開催されたグラミー賞の直前でこの状況というのは、正直驚かされます。尤も都心部で桜の時期となり、その関連曲が上昇していることで押し出されたとも言えるのですが。

 

以前にもラジオで洋楽が弱くなったと記載したことがあるのですが、その状況はさらに進んだと感じています。この原因はラジオDJの変化にあるというのが私見です。

ここ数年、ラジオメディアの面白さを特集する媒体が増えている一方で、焦点が当たるのは主にバラエティ番組であり、音楽番組や生ワイド番組への言及は多くない印象があります。さらにこの春、たとえばbayfmでは平日夕方の帯番組として31年続いたBAY LINEシリーズが終了し芸人主体の『シン・ラジオ ーヒューマニスタは、かく語りきー』に切り替わったのは、局側そしてリスナー双方の志向の変化と言えるでしょう。

 

ビルボードジャパンソングスチャートにおいてラジオは接触指標の一種ながら、唯一聴き手が自発的、能動的に選曲できない特殊なものです。しかし出会った曲がいずれ聴き手の長きに渡るお気に入りとなる可能性があります。その際、豊かな解説や曲への熱い思い等の付加価値を提供し、またスムーズな曲紹介によって、曲をさらに特別なものに昇華させるのがラジオDJの役割です。

芸人主体の番組が増えたことで音楽番組自体が減っていくのもさることながら、ワイド番組にも芸人が進出することで音楽のスムーズな紹介や深掘り度合いが減っていくことを懸念しています。さすがに1週の動向だけで判断するのは強引かもしれませんが、最新週におけるラジオ指標での洋楽の弱さは、自分の心配を如実に且つ客観的に示しているのではと思うのです。

ゆえにラジオを担当する芸人の方々が音楽愛を持ち合わせること、ラジオ向けの技術を身につけることを願います。同時にラジオ局には、自身が好い曲を見つけ新たなヒットを創り上げるという気概を忘れないで欲しいものです。

 

 

自分は最近、このようなコラムを寄稿しました。

グリフィン with エリー・ドゥエ「Tie Me Down」は最新4月6日公開分(4月11日付)のビルボードジャパンHot Overseasチャートで5位に入り、9週連続でランクイン。2018年リリースのこの曲に代表されるように、新旧および洋邦関係なくTikTokでバズが発生することの多さをコラムにて紹介しています。そしてそのバズはレコード会社や歌手側の後押しや楽しむ姿勢により、さらに強固なものになっていくのです。

コラムでTikTok発のヒットとして例示したYOASOBIや優里さんは最終的にビルボードジャパン年間ソングスチャートを制していますが、メディアが採り上げたことでネット上での盛り上がりが広く日本全体に行き渡ったものと考えます。ならば洋楽においてもこのようなフックアップを行うことが有効であり、その際洋楽に造詣の深いラジオが先陣を切ることができるはずです。

ともすればラジオ局在籍で洋楽好きな方は減っているかもしれませんが、自らムーブメントを作り音楽面で注目を集めるという志は忘れないで欲しいと思います。新曲のみならず、今注目を集めている以前の曲にもその思いを注いでみるのは如何でしょうか。