イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ウクライナの現状をSpotifyやSNSで理解する

世界の歴史や情勢に詳しくないとしても、データから今のウクライナの惨状を理解することができます。

f:id:face_urbansoul:20220304053300p:plain

デイリーチャート200位までの再生回数が確認できるSpotifyで、ウクライナの1位および200位の推移を示したのが上記グラフ。2月13日以降としたのはこの日以降すべて同じ曲がトップをキープしているためですが、ロシアが軍事侵攻を開始した2月24日に再生回数が急落していることが判ります(1位の再生回数は前日比61.0%、200位は52.0%)。

再生回数の急落について、日本では局地的な自然災害に起因して落ち込むことがありますがここまでではありません。ウクライナ国民の中には心を落ち着ける目的で敢えて聴く方もいらっしゃるかもしれませんが、それどころではないという状況、意識がデータからはっきり見て取れます。音楽をまともに聴くことのできない環境を作ったロシアの軍事侵攻が如何に悪かを痛感するのです。

f:id:face_urbansoul:20220304054228p:plain

ウクライナにそのロシアを加えたSpotifyデイリーチャートの再生回数推移についても作成しましたが、実はロシアにおいても再生回数は減少しています。とはいえウクライナほどではありません。

f:id:face_urbansoul:20220304054755p:plain

軍事侵攻前日の2月23日とその翌日、および1週間後の3月2日とを比較した表を用意しましたが、ウクライナは未だこの状況が続いています。ロシアにおいても軍事侵攻の1週間後はさほど状況が変わっていませんが、果たしてロシア国民に軍事侵攻の実態が伝えられているのかは疑問です。

 

 

さて、2月13日以降ウクライナSpotifyデイリーチャートを制している曲は、ロシアにおいてもウクライナ同様2月13日に首位に返り咲き、以降その位置をキープしているのです。

「Astral Step」は2分超のヒップホップ。この曲をリリースしたシャドウレーズ(Shadowraze)は、別の曲で日本のアニメのフレーズを引用しています。

「Psiblades」では『HUNTER×HUNTER』の主人公のセリフが用いられています(こちらのツイートを参照させていただきました。問題があれば削除いたします)。サンプリングに許可が出ているかは不明ですが、日本のアニメからの影響を受けているとなれば親しみを感じずにはいられません。

 

シャドウレーズについて調べたものの、ウクライナとロシアどちらの出身かは現段階では判りかねます。仮にロシア出身の場合、ウクライナ国民がロシア出身歌手の楽曲聴取をボイコットし、それにより再生回数がダウンしたという側面もあるでしょう。

f:id:face_urbansoul:20220304061347p:plain

上記はSpotify Daily Chart - Ukraineより、最新3月2日付のウクライナにおけるSpotifyデイリーチャートトップ40をキャプチャしたもの。トップ10のうち9曲がロシアの軍事侵攻前日となる1週間前と比べてダウンしています。一方で登場2日目にして7位に上昇した曲のタイトルには驚かされるのですが。

この3月2日付においてトップ10に5曲を送り込んでいるシャドウレーズは、ロシア最大のSNSと言われるVKにアカウントを用意しています(→こちら)。そして直近のエントリーでは、苦しい胸の内を明かしています。

f:id:face_urbansoul:20220304062113p:plain

 ※DeepLによる翻訳

  showdownは僕のラップキャリアの中で最後のトラックで、何かくだらないことを歌っているんだ...。

  もうこれ以上、憎しみで音楽は出せない、辞めたい......。

  ご苦労様

f:id:face_urbansoul:20220304062304p:plain

 ※DeepLによる翻訳

  Shadowraze、ロシアでの楽曲リリースを中止。

ともすれば明日以降、ロシアのSpotifyデイリーチャートにおいてシャドウレーズの曲が大きくダウンする可能性もあります。

 

 

音楽チャートからは、音楽に国境がないことが読み取れます。そしてロシアの再生回数微減から、この軍事侵攻が普通ではないということが僅かでも認識されているかもしれないと感じています。

ロシアとウクライナとが共通の音楽で楽しんでいることをロシア国民が認識し、隣人の生活を奪ったロシア上層部に対し立ち上がることを願います。そしてウクライナに一刻も早い平穏が訪れることを、ただただ願ってやみません。