ビルボードジャパンは本日、2週分のソングチャートを発表します。2024年12月23日からの1週間を集計期間とする2025年1月1日公開分、および2024年12月30日からが集計期間となる2025年1月8日公開分であり、前者はクリスマス関連曲の勢い、後者は主に『輝く!日本レコード大賞』(TBS 12月30日放送 以下”レコード大賞”と表記)や『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 12月31日放送 以下”紅白”と表記)の影響が反映します。
そこで今回、ビルボードジャパンソングチャートにてウエイトの大きいストリーミング指標、その中で全体のおよそ2割を占めるとみられるSpotifyの動向を追いかけます。なおSpotifyよりもApple Musicのシェアが高く、またLINE MUSICの影響力も大きいのみならずSpotifyには独特の特性もあるのですが、Spotifyはデイリー200位までの再生回数が開示されているという特長を踏まえて今回紹介します。
Spotifyにおいては既に元日付の傾向を採り上げています。今回はそのデータをさらに深堀りするという形です。
Spotifyも含め、年末年始はストリーミング再生回数が特に下がる傾向にあります。下記は日本のSpotifyデイリーチャート200位の再生回数推移をグラフ化したものですが、元日付の落ち込み(谷)が目立ちます。また普段の再生回数ベースに戻るのは昨年までは成人の日(1月第2月曜)以降といえるのですが、今年の成人の日は1月13日と元日から離れているゆえ、昨年よりも回復が遅いかもしれません。
その状況下、まずは1月5日付日本のSpotifyデイリーチャートで50位までに入った曲、および昨年の紅白で披露された曲の推移をチェックします。
<日本のSpotifyデイリーチャート 年末年始再生回数推移>
・集計期間:2024年12月16日付~2025年1月5日付
・表示対象:2025年1月5日付で50位までにランクインした全曲、
および同日付51~200位における紅白披露曲
・色について:
赤:紅白披露曲
緑:Mrs. GREEN APPLEによる50位以内の作品 (一部は赤で表示)
黄:各曲におけるデイリー最高再生回数達成日
グレー:デイリー200位未満、およびそれに伴う計算不可
水色:比較時において1割以上上昇
桃色:比較時において1割以上減少
上記表から、ふたつの特長がみえてきます。
まずは、【紅白で特に大きなインパクトを残した曲が上昇している】という点。どの歌手が特にインパクトを残したかについては、徒然研究室さんが作成した各種グラフからも読み取ることが可能です。
#NHK紅白 公式YouTubeの視聴回数 いいね数推移の「公開終了直前版」です。
— 徒然研究室✍🏻 (@tsurezure_lab) 2025年1月7日
✅合計視聴が4,400万回を突破
✅藤井風さんのいいね数が伸び続けついに「ultra soul」をわずかに上回る
..これで米津玄師さん藤井風さんというフルバージョン動画のいいね数が1-2位となりました✍https://t.co/BaVpWOVn3x https://t.co/P0xPiyz0gI pic.twitter.com/2rGEvGa259
いいね数の順位推移のバンプチャートです。米津玄師さん「さよーならまたいつか!」は終始トップで、これは朝ドラとの特別企画コラボという文脈からある程度予想できた未来ですが、藤井風さんがここまで伸びるとは...放送終了後から始まるもう一つの紅白..おもしろいです...✍ pic.twitter.com/RPuf8f4tcE
— 徒然研究室✍🏻 (@tsurezure_lab) 2025年1月7日
#NHK紅白 公式YouTubeで最も視聴され&いいねされた3つの動画にハイライト📈米津玄師さんは放送時トリに近く朝ドラ特別企画ということからある程度YouTubeでも伸びると予想できますが、B'zさんの過去曲「ultra soul」と藤井風さんの年間チャート44位曲「満ちてゆく」は予想を超えた結果かも...? https://t.co/wqiGZFFyWq pic.twitter.com/InxZBBUUI8
— 徒然研究室✍🏻 (@tsurezure_lab) 2025年1月7日
紅白を機に、日本のSpotifyデイリーチャートでは米津玄師「さよーならまたいつか!」および藤井風「満ちてゆく」が50位以内に復帰し(この点はVaundy「踊り子」も同様)、そしてB'z「ultra soul」や「LOVE PHANTOM」が100位以内に復活を果たしています。B'zにおいては日本のSpotifyにおけるデイリートップアーティストチャートにて、1月4日付で9位に上昇。同チャート初のトップ10入りを果たしたことも大きな特徴です。
一方で、ILLIT「Magnetic」のように伸びがそこまで大きくない曲も存在します。またNumber_iの4曲(紅白で披露された「GOAT」を含む)については、2024年12月30日付以降において1週間前の同曜日と比べて再生回数が下がっています。これは歌手側によるStationhead企画の終了が影響しているものと捉えています。
日本における12月29日付Spotifyデイリーチャートでは、#Number_i の200位以内登場曲が5→14曲に増加。歌手側によるStationhead企画が最終日を迎えたことが要因と考えられます。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年12月30日
日本における12月30日付Spotifyデイリーチャートでは、#Number_i の200位以内登場曲が14→4曲に減少。歌手側によるStationhead企画が前日で終了したことが要因と考えられます。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年12月31日
もうひとつは、【Mrs. GREEN APPLEがさらに上昇している】という点。下記グラフからも実感できるでしょう。
こちらは先程紹介した日本のSpotifyデイリーチャート200位の再生回数推移グラフに1位および50位を追加したものですが、クリスマスが明けて以降首位に立ったMrs. GREEN APPLE「ライラック」はレコード大賞受賞翌日、再生回数が下がる傾向にある昨年大晦日付で同曲最高再生回数を更新、そして1月4日付にて同曲初のデイリー50万回再生を突破すると翌日付でも更新。さらにはグラフ掲載後の1月6日付でも伸ばしています。
日本における1月6日付Spotifyデイリーチャート。50位以内の再生回数は日曜→月曜ながら、全体的には前日とあまり変わらない状況です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年1月7日
首位は12日連続で #MrsGREENAPPLE「#ライラック」。再生回数前日比105.5%、562,498回再生を記録。同曲の最高再生回数を更新しています。
日本のSpotifyデイリーチャートにおいて50万回を突破したのはJIN「Running Wild」(2024年11月21日付 520,002回)以来ですが、同曲は乱高下している状況です(この点は【JIN「Running Wild」のSpotify動向を追う】…11月23日付イマオトについて - note(2024年11月23日付)で紹介)。「Running Wild」を除けば、デイリー50万回超えはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」(2024年5月6日付 501,773回)以来となります。
【Spotifyデイリーチャート上位曲推移】
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年1月6日
2024年11月11日付~2025年1月5日付における主要曲の@SpotifyJPデイリー再生回数をグラフ化。最新日に19万回を超えた24曲を表示しています(前週同曜日より5曲減少)。 pic.twitter.com/CqbnK6OWfD
Spotifyグラフ掲載分、直近1週間以内の最高再生回数更新曲。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年1月6日
1月5日(日曜) 達成
(すべて #MrsGREENAPPLE の作品。)
「#ライラック」
「#ケセラセラ」
「#ダンスホール」
「#Soranji」
「#インフェルノ」
レコード大賞受賞、また同番組を含む2024年年末の地上波長時間音楽特番にMrs. GREEN APPLEが最多出演を果たした上でその大半の番組にて披露したことが「ライラック」の再生回数に影響していることは明らかです。その上で、『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか30周年SP』(TBS 1月5日放送)に出演したことに伴い、Mrs. GREEN APPLEの作品全体が伸びています。
地上波における19~23時の音楽番組においては、2025年の初回放送が遅れる傾向にあります。『with MUSIC』(日本テレビ)は最も早く1月11日に放送されますが、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)は1月20日に放送。また『ミュージックステーション』(テレビ朝日)は1月17日が初回放送ですが前年の振り返り企画となり、『うたコン』(NHK総合)については現時点でアナウンスがありません。
そのような状況下では歌手の露出が限られるゆえ、バラエティ番組に登場し歌唱も披露するというMrs. GREEN APPLEの環境構築は見事です。勿論、『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか30周年SP』は依頼がなければ成立しない企画ですが、その依頼が来ること、そしてそれに応じるところがMrs. GREEN APPLEの勢いの大きさ、”お茶の間の歌手”に成ったことの証明といえるでしょう。
昨年末の地上波長時間音楽特番出演についてまとめたエントリーではこのように記しましたが、『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか30周年SP』はMrs. GREEN APPLEをより広く浸透させ、”お茶の間の歌手”に至らせたといえるのではないでしょうか。
ビルボードジャパンのソングチャート、またソングとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)が紅白の出場歌手選定に大きく影響すると捉えていますが、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」は2024年度年間ソングチャートで5位。年間首位のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は紅白後半オープニングで、2位のtuki.「晩餐歌」や3位のOmoinotake「幾億光年」は前半に登場している一方、Mrs. GREEN APPLEは22時台、また年間44位の藤井風「満ちてゆく」も同時間帯の登場です。
紅白がその年のヒット曲にもっと十分な光を与える必要があるともいえるのですが、紅白はこの番組にしか成し得ないパフォーマンス(藤井風さんにおけるワンカット演出)をより前面に示したものと考えます。そしてMrs. GREEN APPLEはトップアーティストチャートでほぼ常勝状態にあることから、登場2回目にして深い時間での登場に至ったと考えていいでしょう。そのことも、バンド全体のステップアップにつながっています。
(なお、藤井風「満ちてゆく」の年間44位については十分ヒットしたと捉えています。その点についてはこちらで記しています。)
紅白ではリアルタイム視聴率以上にSNSやYouTubeでの反響の大きさが発信され、スポーツ誌ではYouTube再生回数が記事化されています。紅白に限らずですがリアルタイム視聴率という一側面のみで人気を計ることはほぼ不可能であると考える必要があり、複合指標で構成され時代に即しチャートポリシー(集計方法)を変化させるビルボードジャパンソングチャートのような物差しを、テレビ業界は早急に設けることが必要です。
そして、紅白パフォーマンス動画において特にYouTube再生回数が多く、且ついいねの数でも上位に登場した米津玄師「さよーならまたいつか!」および藤井風「満ちてゆく」は共にフルバージョンにて動画が公開されていましたが、紅白動画はNHKプラスでの見逃し配信終了に合わせる形で消去されます。
🟥第75回 #NHK紅白 ◻️
— NHK紅白歌合戦 (@nhk_kouhaku) 2025年1月7日
見逃し配信はきょう7日で終了
<前半>20:55 <後半>23:45まで
最後の駆け込みはNHKプラスで!
🔗https://t.co/GoMvljPu40
パフォーマンスやアーティストのトークなど#紅白歌合戦 関連のYouTube、SNSの動画コンテンツも7日まで!
最後までお楽しみください👀 pic.twitter.com/qpMReVQVdK
ブログエントリー公開直前の段階では動画が残っている模様ですが、この動画を残すこと、残せないとしてもNHK側が貸与し歌手側の公式YouTubeチャンネルで公開することが必要と考えます。音楽チャートにも反映されるゆえ尚の事です。この点は以前も紹介していますが、日本の音楽を世界に轟かせるためにはメディアの協力も欠かせないはずです。最後にその部分を再掲し、日本の音楽業界がより好くなることを願います。
さて、NHK MUSIC公式YouTubeチャンネル発の動画は外部での活用(ブログ貼付等)に柔軟性がなく、期間限定であり、また紅白披露曲についてはサブスクサービス等へのリンクが概要欄に貼られていないという状況です。パフォーマンス動画のほとんどが短尺版であることも含め、紅白関連動画のYouTube掲載状況については実際とのところ、この数年変わっていないといえるかもしれません。
しかしNHKには、ドラマ『虎に翼』オープニング映像のロングバージョンを米津玄師さん側に貸与したことで、「さよーならまたいつか!」がビルボードジャパンソングチャートでトップ10内返り咲きを果たしたという実績があります。NHKには是非とも、紅白映像を”フル尺で” ”期間を限定せず” "歌手側に貸与する"ことを願います。この旨は先日提案したばかりですが、NHKには民放でできにくいことを断行する力があるはずです。
歌手側の公式YouTubeチャンネルで公開されれば動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が付番できるため、動画がヒットすればビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標が加わるはずです。それによりソングチャートでヒット規模が拡大すれば、最終的に紅白への注目度がより高まることでしょう。
Spotifyのみならず他のサブスクサービス、そしてビルボードジャパンソングチャートの動向に注目しましょう。1月1日公開分および1月8日公開分のビルボードジャパンソングチャートについては、このブログで明日以降採り上げます。