イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SMAP「Triangle」がダウンロード上昇…一方で彼らの音楽が日本そして世界に届きにくいことを憂慮する

昨日はウクライナにおけるSpotifyデイリーチャートから、同国の惨状について記載しました。

ロシアへの軍事侵攻、果ては世界を相手に戦争を仕掛けるかもしれない可能性を踏まえ、多くの方が悲しみや憤り、そして平和への思いを抱くのは自然なこと。そのタイミングで、日本ではこの曲が上昇しています。

続いて、SMAP「Triangle」が2,800DLを記録し、前週トップ100圏外から3位に急上昇中。同曲は、2005年にリリースされたSMAPの38thシングルの表題曲だ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった影響で、平和について歌われた本曲に注目が集まっている。なおSMAPは、2010年にリリースされたアルバム『We are SMAP!』の収録曲で、同じく平和について歌われた「Love & Peace Inside?」も、現在52位を走っている。

これを読んで、SMAPは配信していたのかと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

SMAP「Triangle」の歌詞はこちら。上昇のきっかけは、稲垣吾郎さんが自身のラジオ番組でOAしたことでした。

OA日は次回のビルボードジャパンソングスチャート(3月9日公開分(3月14日付)の集計期間初日ですが、ビルボードジャパンの記事を読めば前週にも100位圏外ながらランクインしていただろうと読み取れます。そして、OAを機にさらに上昇したことになります。

とはいえ、SMAPの作品はほぼすべてのデジタルプラットフォームで解禁されていません。下記記事にもあるようにレコチョクでは解禁されている一方、iTunes Storeでは未配信という状況が続いています。サブスクもさることながらミュージックビデオもYouTubeで解禁されていないため、"ジャニーズ曲は配信されない"という認識を抱いている方は少なくないのではないでしょうか。

ジャニーズ事務所所属歌手は嵐やKinKi Kidsのソロ作品等一部を除けば、サブスクのみならずダウンロードもできない状況。しかしながら、レコチョクではジャニーズ曲がすべてではないもののダウンロード可能となっています。

配信された曲の中には、サビのみ等曲の一部分しか用意されないものもありますが、SMAP「Triangle」はフルサイズでダウンロード可能となっています。

おそらくは多くのSMAPファン、そしてジャニーズ事務所所属歌手のファンの方々には、レコチョクでのジャニーズ曲配信が浸透していることでしょう。山下智久「CHANGE」(2019年)がビルボードジャパンの総合ソングスチャートで首位に立ったことやKis-My-Ft2Luv Bias」(2021年)が同チャートで再浮上したのは、まさにダウンロード指標が加算された効果が大きいのです。

それでも、ジャニーズ曲がすべてレコチョクでダウンロード可能というわけではなく、ましてや最大手と言えるiTunes Storeではダウンロード不可。過去曲のフックアップ効果が薄まる点、そして世界展開のデジタルプラットフォームに未解禁ならば反戦の思いを込めた曲を世界に届けることができないという点でも、勿体無いと考えます。レコチョクは海外からの購入ができない模様ゆえ、尚の事です。

? 海外からのレコチョクサービス利用について

レコチョクが提供しているサービスは、日本国内のみで利用が可能となります。日本国外からのご利用は出来ません。ご了承ください。

FAQ【レコチョク】より

 

 

この春からアメリカで期限を設けず修行することを発表したTravis Japanは、YouTubeに+81 DANCE STUDIOチャンネルを昨年開設し、SMAPジャニーズ事務所所属歌手の作品をダンスで表現してきました。このチャンネルの概要欄には、『Travis Japan(ジャニーズJr.)が歴代ジャニーズの名曲に新たなパフォーマンスで挑戦し、さまざまな世代のみならず、世界中の視聴者に向けて配信していきます』とあります。

しかしながら、世界の視聴者がこのチャンネルに魅了されて音源が欲しいと思っても、その音源を満足に手に入れることができないと知ればどう思うでしょう。日本ならばまだフィジカルを手に入れられる状況ですが、海外ではフィジカル自体が減っています。

そして同時に、これは穿った見方と前置きして書くならば、+81 DANCE STUDIOチャンネルでのジャニーズ曲の利用は、事務所側がこれまで発信してきた音楽作品をインターネットの世界では自社でのみ用いるという意識にも映りかねません。YouTubeで用いることは一歩前進と言えますが、そこから先につながるのか、ネットユーザーや音楽ファン、コアなファンの希望に応える気概があるのかが非常に気になります。

 

 

直近では広瀬香美ロマンスの神様」(1993年)がTikTokの踊ってみた動画に引用され、本人が参加したことでバズが発生。下記ブログエントリー掲載後の3月2日公開分(3月7日付)TikTok Weekly Top 20を制しました。

また嵐「カイト」(2020年)はフィジカルリリースに遅れてデジタル環境が整いましたが、翌年の東京オリンピックおよびパラリンピック開催時にビルボードジャパンソングスチャートで25位まで再浮上を果たしています。

嵐「カイト」、また先述した山下智久「CHANGE」およびKis-My-Ft2Luv Bias」等、ジャニーズ曲のデジタル解禁効果については下記ブログエントリーにまとめています。

デジタル解禁は過去曲やリリース間もない曲のさらなる加速につながり、ジャニーズ曲においても好事例は複数みられます。SMAPや少年隊等解散してしまった歌手や彼らの作品が幾度となく話題になりながらも今の時代において満足に聴く環境が整っていないこと、YouTubeにアップされているのが合法アップロードではない動画が大半という状況は機会損失であり、ジャニーズ事務所側に考慮していただきたいと強く思います。

そしてSMAP「Triangle」のほぼデジタル未解禁といえる状況は、音楽の力が世界に届かないという意味においてあまりにも悲しいというのが私見です。