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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2024年度ビルボードジャパン年間チャートと同一期間における、Spotify再生回数動向を読む

ビルボードジャパンは12月6日金曜に2024年度年間チャートを発表します。今回はそれに伴い、ビルボードジャパンソングチャートに大きな影響を与えるストリーミング指標のうち再生回数全体のおよそ2割を占めるSpotifyの動向を紹介します。以下のグラフでは昨年11月27日付~11月24日付における1位、50位および200位のデイリー再生回数推移をまとめています(Spotifyはデイリー200位までの再生回数を可視化しています)。

なお日本のSpotifyデイリーチャートでは、再生回数は平日では金曜が最も少なく、土日祝日は上昇するのが特徴です。これは金曜が飲み会等の影響で聴取機会が減る一方、土日祝日は行楽等に伴い増えるためと推測されます。また、帰省等の大きな移動が発生する際は再生回数が大きく減る傾向にあります。

 

<日本のSpotifyデイリーチャート 首位獲得曲一覧>

 (集計期間:2023年11月27日~2024年11月24日付)

 

・Ado「唱」

 (2023年11月27日付~12月21日付、12月26~30日付)

King Gnu「SPECIALZ」

 (2023年11月27日付)

・back number「クリスマスソング」

 (2023年12月22~23日付、12月25日付)

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」

 (2023年12月24日付)

・YOASOBI「アイドル」

 (2023年12月31日付~2024年1月17日付)

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」

 (2024年1月18日付~5月21日付、5月25~26日付、6月1~2日付)

Mrs. GREEN APPLEライラック

 (2024年5月22~24日付、5月27~31日付、6月3日付~7月27日付、7月29日付~8月1日付、8月4~10日付、8月13~16日付、8月20~22日付、8月24~26日付、9月5~9日付、9月12日付~10月20日付)

・JIMIN「Who」

 (2024年7月28日付、8月2~3日付、8月11~12日付、8月17~19日付、8月23日付、8月27日付~9月4日付、9月10~11日付)

Creepy Nuts「オトノケ」

 (2024年10月21日付)

・AKASAKI「Bunny Girl」

 (2024年10月22~28日付)

・ロゼ (ROSÉ) & ブルーノ・マーズ「APT.」

 (2024年10月29日付~11月20日付、11月22~24日付)

・JIN「Running Wild」

 (2024年11月21日付)

再生回数のピークはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が3月16日付で記録した746,630回で、これが日本のSpotifyにおけるデイリーでの歴代最高再生回数に。「Bling-Bang-Bang-Born」はデイリー70万回超えを通算7回に渡り達成しています。同曲は首位がMrs. GREEN APPLEライラック」に変わった後も通算4日間首位を獲得していますが、いずれも土日であることから行楽やカラオケ等での活用の大きさが考えられます。

他方、BTSメンバーによるソロ作品が2曲首位を獲得していますが、Apple MusicやLINE MUSICとの乖離、また極端な増減が気になるところです。JIMIN「Who」についてはこのブログで紹介し、また直近におけるJIN「Running Wild」については(「Who」に関するブログエントリーのリンクも紹介する形で)Xに投稿。後者についてはnoteにまとめています。

 

近年はStationheadを活用したコアファンのリスニングパーティー、そして歌手側による公式パーティー開催も目立ち、それが再生回数増減の幅を増やしつつあると捉えています。曜日特性等から逸脱し極端な動きが続くならば、ビルボードジャパン、また米ビルボードは米やグローバルのソングチャートにおいて、(Apple Music以上にStationheadの影響力が目立つ)Spotifyのウエイト見直しを議論することも必要かもしれません。

 

 

さて、強力なストリーミングヒットの存在は全体の再生回数増加にも波及することが、50位および200位の定点観測グラフからみえてきます。

特に200位の再生回数は徐々に上がってきていることが解ります。この推移からはSpotify全体のユーザー数のみならず、サブスクサービス全体のユーザー数ならびに再生回数の増加が推測できるでしょう。

日本のSpotifyでは昨年のクリスマスイブにデイリー200位の再生回数が初めて5万回を突破、2024年度のビルボードジャパン上半期ソングチャートにおける集計期間最終日に過去最高となる50,939回再生を記録した後も全体的に伸び続け、10月14日付では53,359回を記録するに至っています。この背景については下記エントリーにて紹介していますが、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の解禁が今後もひとつの鍵に成ると考えます。

一方で50位のデイリー再生回数は4月7日日曜付以降5月にかけてほぼ毎週、土日祝日に13万回を突破。特に4月27日~5月6日のゴールデンウイークには土日祝日すべて、且つ連休前の5月2日(木曜)付も13万回を上回り、5月4日土曜(祝日)付にて過去最高の138,062回再生を記録しています。ただ下半期に入るとその勢いは弱まっているといえるでしょう。

日本では最新デイリーチャートで50位以内に入った曲をまとめたトップ50プレイリストが人気です。土日祝日は行楽等により再生回数が伸びると記しましたが、運動会等イベントや店舗でのBGMとしてのプレイリスト使用が50位以内登場曲の再生回数上昇に寄与していると考えます。ただこの使用率は、「Bling-Bang-Bang-Born」や「ライラック」といったサブスク大ヒット曲の登場やその勢いにも左右されるのかもしれません。

 

 

SpotifyについてはStationheadの影響力拡大、また極端な動きが増えてきていることで他のサブスクサービス(特に施策が影響しにくいApple Music)との乖離が際立ちつつあると感じるものの、再生回数全体の推移は他のサービスと大きく変わらないのではというのが私見です。ゆえにSpotifyの動向を押さえることは、音楽チャート全体を知る意味で今も有効だと捉えています。それがXにて日々Spotifyの動向を発信する理由です。

なお、主要サブスクサービスやビルボードジャパンソングチャートストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートの上位曲動向については、上記(カテゴリーの)エントリーにて毎週紹介しています。Spotifyと他のサービスとで乖離はないか等を確認する際の参考になるならば幸いです。