6月28日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)は、これまでにない演出手法が採られていました。個人的にはその良さを見出すことができなかったため、何が問題だったかを解説すると共に改善要望を記してみます。
『CDTVライブ!ライブ!』はゴールデンタイムの音楽番組として、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)や『うたコン』(NHK総合)の後発とはなりますが、フルサイズ歌唱をひとつのコンセプト、もしくは売りにしていたはずです。歌手のこだわりを伺い、できる限りその意向に応えるというのも番組独自の特徴でした。
#CDTVライブライブ
— CDTV (@TBSCDTV) 2021年6月21日
今夜も観てくれてありがとう♪
次回放送は…
6月28日(月)よる9時から♫
豪華11組がノンストップLIVE!
1時間の放送に入りきるのか…😳😳 pic.twitter.com/LRh5p4fJ9r
しかし、6月28日放送回では1時間枠で11組が登場。放送ではノンストップライブを、それも35分という尺で実行すると強調しており、当然ながら多くの曲がフルサイズ歌唱に至れませんでした。
初のCDTV ライブ!ライブ!
— Ryuga 【まるりとりゅうが】 (@sing_0808) 2021年6月28日
本当にありがとうございました😭
2曲も歌わせていただけただけで感謝でしかないです!!
素敵なアーティストの皆さんに囲まれてライブできたこと幸せでした!
また出られるように頑張るので応援よろしくお願いします🙇🏻♂️
今夜0時に全曲聴けるようになります🔥#まるりとりゅうが pic.twitter.com/pT81vQHl3a
問題は他にも。初登場のまるりとりゅうがは2曲披露していましたが、うち1曲は提供バックならぬ"CMバック"の状況。ノンストップで披露といいながら番組側はCMを用意し、それも彼らの「サニー」のパフォーマンスが行われている最中に挿入したのです。
【⚡️速報⚡️】
— CDTV (@TBSCDTV) 2021年6月28日
今夜の #CDTVライブライブ
ノンンストップライブで 放送に入りきらなかった
激アツライブの映像を#CDTV 公式YouTubeチャンネルにアップしたよ♫https://t.co/HxPHfGK9Ky
みんな見てね😆❤️
チャンネル登録もお願いしますっ pic.twitter.com/ygAGhJJ9Hx
後に番組側は、前週BTSやTOMORROW X TOGETHERで行った番組パフォーマンスのYouTube公開をこの「サニー」でも行っているのですが、『ノンストップライブで放送に入り切らなかった』のではなく"入れなかった"のであり、あくまで番組側の都合のいい言い訳に過ぎません。コメント欄にも扱いの酷さを指摘する声が散見されています。自分の好きな歌手がCMバックの扱いならばどう思うでしょう。
番組パフォーマンスのYouTube公開は今後増えていく可能性があり、それ自体は好ましいことですが、動画を観た方には背景にある35分カウントダウンの映像にピンとこないはずです。一方、放送中は曲に被っていた声が動画ではカットされており、その点は唯一安堵しました。
激アツMC⚡️@shimono_kousiki
— CDTV (@TBSCDTV) 2021年6月28日
ブーナもキレキレだったね😆❤️
ノンストップライブ⚡️お疲れさまでした〜〜😍#CDTVライブライブ #CDTV pic.twitter.com/G7Re7jqfbj
えとちゃんこと江藤愛アナウンサーがMCを、声優の下野紘さんがナレーションを担当する番組ですが、これまでは曲の最中に彼らの声が被ることはほぼありませんでした。それが今回ほぼすべての曲の冒頭にふたりの声が挿入されており、曲の雰囲気を邪魔したと感じる瞬間が多々みられたのです。
そしてそもそものコンセプトとして、1時間枠の番組でパフォーマンスの尺を35分に絞る必要があったでしょうか。
6月28日放送回では、パフォーマンス終了から番組終了までの15分程度が、ランキング紹介に費やされています。ランキングは元々土曜深夜に公開されていたものであり、また同じ複合指標をコンセプトとするビルボードジャパンソングスチャートが水曜午後の公開であることを踏まえれば、ランキングの月曜公開は鮮度が落ちます。
さらに、『CDTVライブ!ライブ!』におけるランキングはビルボードジャパンソングスチャートよりもフィジカルセールスのウェイトが大きいため、社会的ヒットの鑑と言い難いと言えます。昨秋、その問題を取り上げ番組側に質問したのですが、終ぞ回答をいただけないままです。
番組が今回なぜ売りであるフルサイズ披露を捨てたか、そしてこのような演出を行ったかを考えるに、2つの理由が浮かんできます。ひとつは先述したランキング紹介枠を番組内に組み込むことで生まれた忙しなさ。そして視聴率の低さを踏まえたテコ入れです。
後者については今月、音楽番組を視聴率面で"お荷物"と形容するコラムが登場していました。
木村隆志氏は『テレビマンの間で音楽番組の視聴率が取れなくなった最大の理由として挙げられているのは、「大ヒット曲が生まれづらくなった」こと』を低視聴率の理由に挙げていますね。ビルボードソングスチャートがこの数年で社会的ヒットの鑑になったことをどう思うのか。https://t.co/bUhzKnqsMR
— Kei (@Kei_radio) 2021年6月17日
この記事には思うところが多々あります。個人視聴率を載せながら及第点はどのくらいかや、そもそも個人視聴率の概念を説明していないこと、さらにはコラムニストの木村隆志さんが音楽番組に対しては視聴率の低さを責めながら、自身の出演番組は低視聴率でも"贔屓する"姿勢をみせることも大きな問題です。下記コラムのコンセプトがその贔屓であることを踏まえても、都合のいい優遇に捉えられておかしくありません。
それでも、視聴率の高くなさはやはり問題と思われます。個人的には『CDTVライブ!ライブ!』は他の音楽番組にはないフルサイズ歌唱というコンセプトは変えず、他のTBSの番組が視聴率を上げてカバーすべきとは思うのですが、それはなかなか難しいかもしれません。
改善希望を綴るならば、ランキングコーナーを『CDTVライブ!ライブ!』と切り離して水曜か木曜深夜に用意する、もしくはランキングコーナーを含めて深夜帯に枠移動することが必要でしょう。また、パフォーマンスの最大化どころか邪魔になりかねないMCやナレーションは排することも検討すべきであり、特に江藤愛アナウンサーは『ひるおび』との兼任に伴う負担を踏まえ、割愛することも考えなければなりません。
そしてもうひとつ。これは日本の番組全体に言えることですが、分かりやすさにこだわることからの脱却も必要です。
(動画は期間限定公開となっています。)
MCやナレーションが割愛された以外は番組放送分とそのままの状態で公開されたまるりとりゅうが「サニー」。画面では左上に番組ロゴ、右上に当日の番組コンセプトおよび曲の説明、下部に歌詞が掲載されていますが、特に右上の箇所は必要でしょうか。
この画面演出は、ふと番組にチャンネルを合わせた方に対して現在の放送内容を一瞬で伝えんとする分かりやすさを求めたものでしょう。また動画の前後には江藤愛アナウンサーが登場しますが、4分弱の尺に対し1分30秒ほどがその時間に割かれているため動画の主軸がぼやけ、まるりとりゅうがに対し失礼だと感じた次第。OAの瞬間、さらに次週以降の継続視聴を求める視聴率優先の姿勢が動画から見て取れるのです。
(動画は期間限定公開となっています。)
これがBTS「Butter」になると、右上に説明文が登場しません。当日の番組でもそうだったかは判りかねますが、しかしこれがBTSの公式アカウントで紹介された動画をみると、画面演出のすべてが消えています。
こちらのYouTubeアカウントは公式のものであり、『CDTVライブ!ライブ!』と同じ動画がアップされています(ベストアルバムが大ヒット中のBTS、この1ヶ月強で二度のピークが生まれている(6月23日付)にいただいたコメントで知りました。教えてくださったyamagc22さんに感謝申し上げます)。当該アカウントでは他の出演番組分もアップされており、BTSファンが世界中の番組を楽しめるようになっています。
ともすれば世界の番組でも日本のような画面演出を施しているかもしれませんが、しかし日本においては分かりやすさを第一義としてやいないかと感じざるを得ません。この分かりやすさはリアルタイム視聴率に直結するかもしれませんが、それで番組コンセプトや質が削がれるならば中長期的には意味を成さないと思うのです。視聴者が少ない情報からより深く知ろうとする熟考の気概を奪いかねない点においても、異を唱えます。
視聴率を考えることは必要でも、求めすぎることは問題です。そしてそのために分かりやすさにこだわることもまた考えものです。視聴率優先と分かりやすさからの脱却が中長期的な信頼につながり、いずれ視聴率にも自ずとつながってくるのではないでしょうか。