イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2024年年末の地上波長時間音楽特番から、出演歌手傾向およびテレビの動向を読む (最終版)

昨年11月以降に地上波で放送されている地上波長時間音楽特番の出演者傾向分析、その最終版を掲載します。

一昨年末、および昨年夏の結果に関しては下記エントリーをご参照ください。

 

<2024年年末の地上波長時間音楽特番 出演歌手の傾向>

 

対象番組一覧

今回対象としたのは、現時点で以下の13番組となります。リンク先は番組ホームページ、および(タイムテーブルが掲載されている場合は)音楽ナタリーの記事となります。

<2024年年末の地上波長時間音楽特番 対象番組一覧>

・11月14日放送 読売テレビ/日本テレビベストヒット歌謡祭2024』

・11月20日放送 テレビ東京『テレ東音楽祭スペシャル1964→2024~60年分の名曲!実は“歌の衝撃映像”ベスト100』

・11月30日放送 日本テレビ『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト2024』

・12月4日放送 フジテレビ『2024FNS歌謡祭 第1夜』

・12月11日放送 フジテレビ『2024FNS歌謡祭 第2夜』

(番組ホームページは上記と同じ。)

・12月16日放送 TBS『CDTVライブ!ライブ! クリスマスSP』

・12月24日放送 TBS『クリスマスの約束2024』

・12月27日放送 テレビ朝日ミュージックステーション SUPER LIVE 2024』

・12月28日放送 日本テレビ『発表!今年イチバン聴いた歌~年間ミュージックアワード2024~』

・12月30日 TBS『第66回 輝く!日本レコード大賞

・12月31日 テレビ東京『第57回年忘れにっぽんの歌

・12月31日 NHK総合『第75回NHK紅白歌合戦

・12月31日 TBS『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2024→2025』

(番組ホームページは『CDTVライブ!ライブ! クリスマスSP』と同じ。)

 

出演番組一覧表

それでは、出演歌手一覧表を以下に掲載します。なお日本レコード大賞についてはパフォーマンスを行った歌手を表記、パフォーマンスせずVTRでのみ出演した場合はその旨を備考欄に記載しています。

番組にソロで出演しながらグループでの出演がない場合は"ソロ名義 (グループ)"と記載。『FNS歌謡祭』でのミュージカル企画については歌手を一括りにして掲載しますが、それ以外は基本的に分けてクレジットしています(ただし同番組における木梨憲武「伝えなくちゃ」については客演歌手を一括りにして紹介)。また『NHK紅白歌合戦』での『おかあさんといっしょ』出演者、ドラマ『虎に翼』出演者は一括りにしています。

表における黄色は、『NHK紅白歌合戦』のみ出場した歌手を示します。

<2024年年末の地上波長時間音楽特番 出演本数上位歌手>

 

・9番組

 Mrs. GREEN APPLE

 

・8番組

 BE:FIRST

 

・7番組 

 Omoinotake

 乃木坂46

 

・6番組

 ILLIT

 King & Prince

 こっちのけんと

 JO1

 Da-iCE

 Number_i

 NiziU

 ME:I

 

・5番組

 SUPER BEAVER

 なにわ男子

 NewJeans

 FRUITS ZIPPER

 Little Glee Monster

 

・4番組

 AI

 INI

 IMP.

 aiko

 &TEAM

 櫻坂46

 THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

 三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE

 GENERATIONS from EXILE TRIBE

 SixTONES

 Snow Man

 SUPER EIGHT

 Travis Japan

 新浜レオン

 星野源

 三浦大知

 LE SSERAFIM

 

 (以上敬称略)

 

出演歌手の傾向

Mrs. GREEN APPLEが最多出演

全体的にアイドル/ダンスボーカルグループの出演が多い状況にあって、最多出演はMrs. GREEN APPLEでした。加えて彼らは『Mrs. GREEN APPLE 18祭』(NHK総合 12月25日放送)にも登場しており(尺の関係上今回の地上波長時間音楽特番にはカウントせず)、また『NHK紅白歌合戦』(以下紅白と記載)から『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2024→2025』への移動の際も後者にて密着されているという状態です。

注目は、『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2024→2025』を除く年内放送の8番組において、「ライラック」が必ず披露されていたということ。2024年度のビルボードジャパン年間ソングチャートで5位にランクインしたこの曲は、紅白にて上位3曲よりも後の時間にパフォーマンスされています。そして昨年12月30日付の日本のSpotifyデイリーチャートにて、再生回数は同曲最高を更新しています。

Mrs. GREEN APPLEは昨年末、『NHK紅白歌合戦』や『輝く!日本レコード大賞』をはじめとする地上波長時間音楽特番に多数出演したことがさらなるステップアップの契機になっています。「ケセラセラ」の日本レコード大賞受賞も大きいですが、その後も音楽番組に限らず積極的に露出を続けたことで(バラエティ番組含む)、いわば”お茶の間の(老若男女に認知された)歌手”に成ったことが大きいと捉えています。

Mrs. GREEN APPLEビルボードジャパンによる、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)において2024年度を制していますが、その背景についてはこのように分析しました。そのMrs. GREEN APPLEは、明日放送のバラエティ番組に登場することが決定しています。

地上波における19~23時の音楽番組においては、2025年の初回放送が遅れる傾向にあります。『with MUSIC』(日本テレビ)は最も早く1月11日に放送されますが、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)は1月20日に放送。また『ミュージックステーション』(テレビ朝日)は1月17日が初回放送ですが前年の振り返り企画となり、『うたコン』(NHK総合)については現時点でアナウンスがありません。

そのような状況下では歌手の露出が限られるゆえ、バラエティ番組に登場し歌唱も披露するというMrs. GREEN APPLEの環境構築は見事です。勿論、『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか30周年SP』は依頼がなければ成立しない企画ですが、その依頼が来ること、そしてそれに応じるところがMrs. GREEN APPLEの勢いの大きさ、”お茶の間の歌手”に成ったことの証明といえるでしょう。

 

② 紅白はワンアンドオンリーの番組であるということ

紅白にB'zが出演することが明らかになって以降、一部メディアによる紅白バッシングはトーンダウンしたという印象です。加えて昨年の紅白パフォーマンス映像のYouTube公開に関する記事がスポーツ誌に登場するという事態も、これまでにはないパターンだと捉えています。

その紅白のみに登場した歌手はB'zに限りません。

<2024年年末の地上波長時間音楽特番のうち『NHK紅白歌合戦』のみ出演した歌手>

※ 出場と銘打たれていなくとも、パフォーマンスを披露した方を含む

 

・紅組/白組での出場

 イルカ

 椎名林檎

 高橋真梨子

 tuki.

 TWICE

 西野カナ

 福山雅治

 藤井風

 南こうせつ

 もも (チャラン・ポ・ランタン) (椎名林檎との共演)

 矢野顕子 (MISIAとの共演) 

 

・特別企画での出場

 玉置浩二

 B'z

 氷川きよし

 米津玄師

 ドラマ『虎に翼』出演者

 竹下景子武田鉄矢田中健

 

・企画での出場

 有吉弘行伊藤沙莉・橋本環奈

 『おかあさんといっしょ』出演者

 

 (以上敬称略)

特別企画を含めれば、他番組では基本的にパフォーマンスしていない米津玄師さんや藤井風さん、ニューアルバムリリース後唯一の日本パフォーマンスとなったTWICE(ただし新曲披露ではありません)、メディアでの復活を果たした西野カナさんや氷川きよしさん、そしてメディア初の生パフォーマンスを披露したtuki.さん等、中堅やベテランが主体ながら多岐にわたっていることが解ります。

これはリアルタイム平均視聴率の獲得という意味合いもあるとは思われますが、紅白が世代を超えて楽しむ番組という位置付けを強化していることは自明であり、他の番組ではなかなかみられない動きです。また昨年発生した能登半島での相次ぐ災害について、被災地や被災者を思い遣るという姿勢(石川さゆり能登半島」や坂本冬美能登はいらんかいね」の披露)も、紅白はきちんと果たしています。

個人的にはと前置きすると演出面で気になるところはありますが、しかしたとえば演歌歌謡曲におけるドミノやけん玉については昔ながらの紅白らしい演出として納得することは可能です。また演歌歌謡曲が少ないと考える方には『年忘れにっぽんの歌』(テレビ東京)で代替できるものと考えます。

 

③ 紅白でその年のヒット曲が重視されていないのではという疑問

その紅白において、個人的に気になったのは2024年度のヒット曲が披露されたタイミングでした。

紅白はビルボードジャパンソングチャートやトップアーティストチャートの動向を出場歌手選出の大きな指標としており、加えてその中でも2024年にリリースされた曲のヒットを重視するものと捉えていました(紅白は今年リリースのヒット曲を重視か…YOASOBIによる2024年リリース作品の動向から考える(2024年11月30日付)参照)。

ただ、実際に紅白のタイムテーブルをみると、2024年度ビルボードジャパンソングチャート2位のtuki.「晩餐歌」および3位のOmoinotake「幾億光年」が前半に、首位を獲得したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が21時台のはじめに披露されたことになります。後半になるにつれ2024年度のヒット曲披露が減っていくという状況であり、加えて紅白では時間調整を目的とした過度な短尺化も目立っています。

2024年末の地上波長時間音楽特番ではアイドルやダンスボーカルグループの登場が目立ちます。最多はBE:FIRSTの8番組ですが、4番組以上出演が35組中24組と7割近くを占めるのも特長です。しかし紅白で後半に登場したアイドルやダンスボーカルグループは企画モノを除き、TWICEおよびNumber_iに限られます。そして2024年リリース曲を披露したのはNumber_iのみという状況です。

 

ともすれば紅白側が、アイドルやダンスボーカルグループのコアファンが若く視聴率獲得における主要客層ではないと見越してタイムテーブルを作成したのかもしれません。無論これは推測(邪推ですら)の域を出ませんが、後半が前半に比べて平均視聴率が高いことから、アイドルやダンスボーカルグループがビルボードジャパン年間ソングチャートでより高い位置に登場し、且つ相当のインパクトを残すことが重要と考えます。

(ちなみにNumber_iは、『輝く!日本レコード大賞』で特別賞を受賞しながら、その特別賞を受賞した6組の中で唯一、パフォーマンスもしくはVTR出演がありませんでした。出演者傾向分析エントリーの途中経過版では披露が見込めるとしてチェックしていたのですが、今回の未出演は気になります。)

 

④ 未だにTVer未配信を続ける『ミュージックステーション』への疑問

出演者傾向分析とは少し異なりますが、根本的な疑問を記載します。

現在は番組の見逃し配信が増えています。紅白においてはTVerでの配信がありませんが、NHKプラスのみならずU-NEXT(内NHKオンデマンド)でも配信されているのが特長です(なおTVerでは一部のNHK番組も配信されています)。

一方で、『ミュージックステーション SUPER LIVE 2024』についてはそのレギュラー番組を含め、未だに配信が行われていません。

昨年の特番ではSnow Manの到着が遅れたことで、本来最後に登場する予定だったL'Arc~en~Cielが先に登場するという事態が発生。タイムテーブルが細かく掲載されていたため、L'Arc~en~Cielのみチェックしようとした方が見逃してしまったという可能性が考えられますが、TVerで配信されたならば番組を後追いできたはずです。

ミュージックステーション』は現在でもTVer見逃し配信を行っていませんが、番組にほぼ毎回出演するSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手がネットへの対応を遅らせてきたこと(デジタル未解禁歌手も未だに少なくないこと)等が影響しているのかもしれません。しかしTVer見逃し配信が行われていたならば、今回の特番で到着が遅れた(ことが不可抗力であったとしても)Snow Man側への過度な非難は減ったのではないでしょうか。

 

おわりに

『第57回年忘れにっぽんの歌』では今年も、あたかも紅白を過度に意識した文章がホームページ内にみられます。

第57回年忘れにっぽんの歌 | テレ東・BSテレ東 7ch(公式)より。

※ 今後文章が変更される可能性を考慮し、キャプチャした画像を貼付しています。

この状況は年末の音楽特番から地上波テレビ局の出演傾向を読む (2023年版)(2024年1月4日付)にて指摘した時から変わっていません。一方で、若手演歌歌手の出演が増えたという点は改善していますが、紅白があたかも視聴者を裏切るものと捉えられかねない文章表現には強い違和感を抱きます。

今回のエントリーでは『紅白にB'zが出演することが明らかになって以降、一部メディアによる紅白バッシングはトーンダウンしたという印象』と記しましたが、誹謗中傷をためらわないメディアは次回の紅白にて媒体の主要客層が好む歌手が登場しない場合、バッシングを再開するのではと懸念します。そのやり方、そして『年忘れにっぽんの歌』のような過度な煽りがなくなることを願ってやみません。

 

一方で、このブログでは2024年末の地上波長時間音楽特番について、これまで主に批判を掲載してきました。これまで幾度も改善提案を記載しながら実際は改善がほぼみられないためであり、批判と提案をセットで記すことを心がける身として今回は提案の記載を敢えて抑えた形です。

(上記では『CDTVライブ!ライブ! クリスマスSP』で発表されたCDTVオリジナルの年間ランキングについて、採り上げています。)

(上記では『発表!今年イチバン聴いた歌~年間ミュージックアワード2024~』で紹介されたSpotify年間チャートについて、採り上げています。)

批判が強めになっていますが、『ミュージックステーション』のTVer見逃し配信開始も含め、2025年末の地上波長時間音楽特番が前向きに変わることに対し、期待は抱き続けたいと思います。