イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Kep1er「WA DA DA」、『CDTVライブ!ライブ!』パフォーマンス映像が公式動画化…K-PopとJ-Popの差を思う

一昨日、日本のメディアで初パフォーマンスを披露したKep1er(ケプラー)。ビルボードジャパンソングスチャートでもトップ10入りを果たした「WA DA DA」の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)でのパフォーマンス映像が、Kep1erの公式YouTubeチャンネルで早速公開されています。

この動画公開について、arneの松島功さんはこのような指摘を行っています。

CDTVライブ!ライブ!』に限らず、日本の音楽番組や情報番組でのパフォーマンス映像が歌手やレコード会社の公式YouTubeチャンネルで公開されることは増えていますが、K-Popアクトが多いという印象があります。メディアと歌手側との協議内容は不明ですが、実に興味深い動きです。

今回は自分が考える、テレビパフォーマンス映像公開の理由と効果をまとめてみます。

(今回の内容は、昨日のツイート群(起点はこちら)を再構成した形です。)

 

 

音楽番組等のパフォーマンス映像公開については、権利関係とメディア側の柔軟化、そして歌手側の意識が増加の理由と考えます。

 

権利関係は著作権や肖像権等が複雑に絡む印象ですが、ここ最近はネット配信が多く行われています。以前ならばホームページの掲載すら十分ではなかったジャニーズ事務所所属歌手の出演作品がTVerにも登場することで、とりわけその変化を感じる方は多いはずです。配信についてのメディアと歌手側との詳細なやり取りは不明ですが、この変化はテレビパフォーマンスの公式動画化における大きな前進でしょう。

テレビパフォーマンス映像の公開については、上記ブログエントリーで紹介しているBTSが日本でいち早く行ったイメージがあります(番組の公式YouTubeチャンネルのほか、BTS側の公式YouTubeチャンネルでも公開)。一方でJ-Popでも少しずつですが目立ちはじめており、且つ番組の種類を問わないと言えます。

(なお三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEについては『ミュージックステーション』(テレビ朝日)の、BE:FIRSTについては『スッキリ』(日本テレビ)の公式YouTubeチャンネルにてアップされています。)

この流れにジャニーズ事務所所属歌手が登場したのは、先述した事務所の過去の対応を踏まえればいい意味で意外なのですが、関ジャニ∞大倉忠義さんがプロデュースするなにわ男子「初心LOVE」がフルバージョンの動画を用意し、またTikTokを活用することを踏まえれば、動画の効果を十分認識しているものと考えます。

また上記3本の動画のうち「稲妻ブルース」のみ、概要欄に楽曲クレジットが記載されています。

f:id:face_urbansoul:20220302071625p:plain

(クレジット紹介の目的で動画説明欄をキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

概要欄の楽曲クレジットとは"この動画の音楽"を指します。ここに曲名がクレジットされていることがイコールというわけではないのですが、国際標準レコーディングコード(ISRC)が付番されていると捉えていいでしょう。このISRC付番動画は、ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標の加算対象となるものです。無論、Kep1er「WA DA DA」においても楽曲クレジットが確認できます。

f:id:face_urbansoul:20220302074347p:plain

ビルボードジャパンソングスチャートでは基本的にアレンジ違いやライブ音源はオリジナルバージョンに合算されませんが、動画再生指標はクレジットがオリジナルバージョンならば合算される性質があります(なお個人的には米ビルボード等のように全バージョンを合算すべきと提案しています)。ISRC付番のテレビパフォーマンス映像も加算されるならば、ソングスチャートを押し上げる援軍となるわけです。

Kep1er「WA DA DA」のパフォーマンス動画においては、2月28日からの一週間を集計期間とする3月9日公開分(3月14日付)ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にISRCが付番されていれば加算されるため、『CDTVライブ!ライブ!』パフォーマンス動画については公開から6日と2時間分が合算対象となります。

また、たとえば『ミュージックステーション』のパフォーマンス映像が放送日のうちに公式動画化されれば、その効果も無視できません。月曜集計開始のビルボードジャパンソングスチャートにおいては加算効果が小さいかもしれませんが、金曜起点のグローバルチャートでは6日以上が加算対象となるわけです。グローバルチャートを見据えているK-Popアクトは今後、この番組のパフォーマンス動画もアップすることでしょう。

 

K-Popアクトは歌手側のみならず、コアなファンの音楽チャートへの意識も人一倍強いと実感しています。彼らの意識を高め結果につなげるのみならず世界各地の番組を網羅できること、また日本の音楽番組においてもその存在が海外に認識されることでリアルタイム視聴率以上のメリットが生まれる可能性においても、番組パフォーマンス動画のYouTube公開は大きな意義があると言えます。

これには日本のメディアが権利関係に柔軟になったことも要因と言えますが、それをいち早く行ったのがK-Popアクトというのが重要なポイントです。ともすれば権利関係は思うほど複雑ではなくパフォーマンス動画公開も簡単に行えたかもしれませんが、それを切り拓いたのがK-Popアクト側というところに意識の差を感じる自分がいます。

(いや、ともすればコロナ禍でK-Popアクトが日本に来られない状況下ゆえに可能になったと言えるかもしれないということを、いただいたツイート(→こちら)から考えています。)

 

 

Kep1er「WA DA DA」の件からはあらためて、K-Popアクトの意識の高さと行動力を強く実感した次第であり、一方で日本では動画自体の少なさや、発信されたとしてもクレジットが徹底されていない点においてまだまだと痛感されられます。ともすればグローバルな視点を持っているかの差であると考えれば尚の事、日本の歌手側の視点を改める必要があるでしょう。