イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

InterFM897の新経営体制下で生まれる疑問の声…必要なのはInterFMカラーの反映では

東京のラジオ局、InterFM897が変わったとの声が多く上がっています。その大半は、経営体制の変更がタイムテーブルに反映されて以降の失望の声です。

上記発表から2ヶ月後の11月1日、InterFM897は大きな改編を実施。ラジオ業界の改編は基本的には10月ですが、おそらくは10月に間に合わなかったと思われます。10月のタイムテーブルはこちら。

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そして11月はこちら。

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(比較目的で用いさせていただきました。問題があれば削除いたします。)

大きな変更は、InterFM897全国FM放送協議会(以下JFN)に加盟したことで、全国の加盟局に番組を供給する番組制作会社ジャパンエフエムネットワークからの供給を受け入れた点。特に平日(月-木曜)は『Seasoning -season your life with music-』(13時30分)、『Happy Hour Party!』(16時)といった生放送の帯番組を用意し、また録音番組も複数登場しています。

 

ですが、特にその平日帯の生放送を主体に、これまでのInterFM897のカラーではない、音楽がかからない、内容が酷い等の声が、[InterFM 改編]で検索すると散見されます。長年InterFM897の顔となっていたジョージ・ウィリアムズさんが10月をもって離れたことも、喪失感や失望感を増す要因ではないかというのが自分の見方です。

あくまで私見と強く前置きして書くのですが、InterFM897のスタッフには同局がJFNカラーに染まることに強く抵抗しているのではと思うのです。通常多くの局でみられる改編アナウンスがホームページ上で見られなかったのはその表れではないかと考えます(単に自分が見つけられなかっただけかもしれませんが)。

 

 

JFN加盟の利点を挙げるとすれば、TOKYO FMでは流していない人気番組を、首都圏在住者でもあっても聴くことができる点でしょう。radikoはあっても有料会員でなければ聴けなかった番組を確認でき、通信のみならず電波でも享受できるのですから、この点は好いと思われます。

他方、今月から供給された番組制作会社ジャパンエフエムネットワークによる番組が、InterFM897のカラーにそぐわないのではという疑念が残ります。特に違和感を覚えるリアクションが多いと思しき『Happy Hour Party!』は、TOKYO FM/JFNの人気番組『NISSAN あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE』(日曜17時)に出演していた杉崎真宏さんがDJを担当しており、よりTOKYO FM寄りの(もしくはTOKYO FMに慣れ親しむ方ほど好みそうな)内容。これならば『The Dave Fromm Show』の枠を1時間削るべきではなかったのではないかと考えます。

(ちなみに、金曜午後を番組制作会社ジャパンエフエムネットワークからの供給にしなかったことには、先にも申し上げたInterFM897サイドの意地だと感じる自分がいます。自分の住む街の地元放送局ではその番組も、また『Happy Hour Party!』も人気番組と紹介され公開放送も行われていますが、特に金曜午後帯はそぐわなかったであろうのが私見です。)

 

 

さて、今年6月に県域放送局が2局閉局、停波するという事態が発生し、”ラジオ局は消えることがある”という事実を目の当たりにした以上、どうやって利益を出していくかは今まで以上の課題となっています。

無論営業面の強化(利益の創出)も重要ですが、放送内容を充実させスポンサーを獲得することも大事ではないでしょうか。この営業面の強化と放送内容の充実は放送局を伸ばす両輪であり、どちらが欠けてもダメだと思うのです。が、InterFM897の新たなタイムテーブルや寄せられる不信の声の多さをみるに後者が前者を逼迫させますます厳しくなる可能性、そしてテコ入れの度にどんどんInterFM897らしさが薄れるのではと危惧する自分がいます。

 

冒頭で紹介した記事には、このような記載があります。

今後は、ジャパンエフエムネットワークが長年にわたり培ってきた番組制作力、営業企画力を最大限に活用し、平時には、ダイバーシティ社会の到来を踏まえた様々なジャンルのエンタテインメントや趣味の世界等、それぞれのファン層に向けた多様な番組やイベントを編成、実施するとともに、月間100万人に迫るユニークユーザーがいる音声コンテンツアプリ「AuDee(オーディー)」と完全連動していくほか、有事には、ファーストインフォーマーとして情報を的確に発信できるよう、InterFM897を支援していく。

InterFM897、全株式をジャパンエフエムネットワークが取得 新経営体制を発表 | Musicman(9月1日付)より

有事の際の対応に関して、『InterFM897は、1995年の阪神大震災を機に、有事の際に在日外国人に向けた外国語による放送を行うことを付帯条件とした周波数が割り当てられ、1996年4月に「InterFM」として開局した』という経緯がある以上尚の事、在日外国人への対応は必要なのですが、InterFM897カラーが失われる状況下で有事の際の対応がきちんと出来るのか、気に病む自分がいます(『』内はジャパンエフエムネットワークがInterFM897の発行済み全株式を取得 | 日経クロステック(xTECH)(9月2日付)より)。

そして記事では『ジャパンエフエムネットワークが長年にわたり培ってきた番組制作力、営業企画力を最大限に活用』とあり、InterFM897が培ってきたノウハウやカラーよりもJFNらしさを優先する姿勢が見て取れます。ですが、それら番組制作会社ジャパンエフエムネットワークの番組内容がInterFM897とことごとくそぐわないのであれば、そして在日外国人が大都市圏に限らず地方にも多く住んでいる現状を踏まえれば、番組制作会社ジャパンエフエムネットワーク、そしてJFN自体がInterFM897から学び、番組制作に活かすことも必要ではと思うのです。ダイバーシティ社会を謳うならば、またInterFM897以外のJFN加盟局がダイバーシティを意識し今まで以上に洋楽に力を入れる編成を行いたいと考えるならば、むしろInterFM897のノウハウこそ役立つはずです。

 

InterFM897カラーを反映させた番組がJFN加盟局で流れることは、とりわけ地方局のリスナーに洋楽の好さを知らしめることにつなげられるでしょうし、弊ブログで紹介している米ビルボードソングスチャートやグローバルチャートへの意識が芽生えることにもつながるかもしれません。すなわち、音楽知識や体験をより豊かにできるという意味でも、個人的にはJFNサイドに検討をお願いしたいと考えています。

ビルボードジャパンソングスチャート首位獲得一覧から見える、LiSA「炎」の凄さ

最新11月9日付ビルボードジャパンソングスチャートにおけるLiSA「炎」の勢いについて、首位獲得曲の一覧表を作成した上でその凄さを紹介しました。

今回はその表をアレンジした上で、この4年の首位獲得曲を年度別にまとめたものを掲載。2017年度以降としたのは、2016年度以前はシングルCDセールスに係数が用いられずそのまま反映されていたためです。

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この表を作成した目的は、LiSA「炎」が構成指標群すべてでトップ10入りを果たしたことを可視化するためでしたが、この快挙達成は2018年9月3日付の星野源「アイデア」以来と解ります(なお「アイデア」はシングルCD未リリースにつきCDセールスおよびルックアップは加算対象外、また当時はカラオケ指標が加算開始前でしたので5指標トップ10入りという形)。その他、星野源「恋」(2016年12月26日付~2017年1月16日付の4週)、同「ドラえもん」(2018年3月12日付)、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「HAPPY」(2017年3月20日付)、乃木坂46インフルエンサー」(2017年4月3日付)、欅坂46「二人セゾン」(2016年12月12日付)、同「不協和音」(2017年4月17日付)、同「風に吹かれても」(2017年11月6日付)が構成指標群すべてでトップ10入りを達成していますが、「アイデア」から「炎」までは2年のブランクがあったということになります。

 

(ちなみに星野源さんの楽曲は2019年8月30日に定額制音楽配信サービスにて解禁。現在のストリーミング指標はサブスクの再生回数やYouTubeのオーディオストリーミングによる再生回数に基づきますが、以前は歌詞表示サービス「プチリリ」による歌詞表示回数から推定するストリーミング数が主流であり、サブスク未解禁曲もカウントされていました。一方で同じく大ヒット曲である米津玄師「Lemon」が全指標同時に10位以内を達成できなかったのは、ストリーミング指標におけるプチリリのウェイトが下がっていたゆえと推測されます。)

 

表の色付けからも見えてくるものがあります。シングルCDセールスが30万を超えた作品の大半が週間3万ポイント超えを達成しておりCDセールスの強さは首位獲得の大きな武器にはなりますが、それらの作品で翌週のポイント前週比が5割を超えたものはありません。一方、シングルCDセールスが30万未満ながら週間3万ポイント超えを果たした曲のうち、翌週のポイント前週比が5割を超えたものは星野源「恋」(2017年1月2日付~1月9日付の2週)、およびLiSA「炎」(2020年10月26日付~11月2日付の2週)のみであり、「炎」が仮に11月16日付ビルボードジャパンソングスチャート(11月11日発表)で16410ポイント以上を獲得し且つ首位をキープしたならば、2017年度以降で史上初となる”シングルCDセールスが30万未満ながら週間3万ポイント超えを果たした曲のうち、翌週のポイント前週比が5割を超えたのが3週以上”という記録を達成することになります。

 

全指標同時トップ10入りのみならず、上記のポイント面における記録においても、LiSA「炎」が如何に凄い記録を築き上げているかがよく解ります。そして特大ヒット曲の基準がこの表から如実に浮かび上がってきます。これは同時に、シングルCDセールス初加算週にポイントを稼ぎながらも翌週残念ながら失速してしまう多くの作品にとって、何かしらのヒントになるのではないでしょうか。

洋楽のリミックスが昨日相次いで投入…再来週の米チャートが面白くなる予感

日本時間の昨日、次の3つの作品がリリースされました。これら3曲はいずれも、再来週発表される11月21日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)やグローバルチャートでの上昇が見込まれます。

 

1曲目は24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」への、ジャスティン・ビーバー & J. バルヴィン参加版。ヒップホップやオルタナティブで存在感を発揮する曲に、ポップおよびラテンで実績を残す歌手が新たに参加してきました。

オリジナルバージョンはこちら。「Mood」は、同じくTikTokから火が付いたジャック・ハーロウ「Whats Poppin」のリミックスを彷彿。7月4日付で米ビルボードソングスチャート8位に入ったジャック・ハーロウ「Whats Poppin」(→YouTube)は、当該週にダベイビー等を招いたリミックスが2日(ラジオエアプレイは5日)加算され初のトップ10入りを果たすと、翌週そのリミックスが1週間フルに加算されたことで2位に到達しています。

「Mood」は既に米ビルボードソングスチャートにおいて2週間首位を獲得後、最新11月7日付ではアリアナ・グランデ「Positions」にその座を譲っていますが、リミックス登場によりその争いから一歩抜け出せるかもしれません。ストリーミングのピークを超えたところに新たなリミックスが投入されたことで、同指標が再び勢いを増すのは確実です。

 

2曲目は、マルーマ「Hawái」への、ザ・ウィークエンド参加版。

オリジナルバージョンはこちら。既に米ビルボードのラテンソングスチャートで9週目の首位を獲得しており、また最新11月7日付のグローバルチャートでもGlobal 200で11位(最高4位)、Global Excl. U.S.で5位(最高1位)に入っている「Hawái」ですが、ザ・ウィークエンド参加により勢いが増す見込み。さらに、最新11月7日付米ビルボードソングスチャートでは64位(最高55位)に入っていることから、マルーマにとって初のトップ40入りも十分あり得るのです。

ラテンジャンルのクロスオーバーヒット且つラテン以外のジャンルの歌手による参加といえば、ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」(2017)が挙げられます。ジャスティン・ビーバー参加版の影響で米ビルボードソングスチャートで16週間首位を獲得し、首位在籍週数の1位タイ記録(当時)を達成していますが、「Despacito」はリミックス登場前からオリジナルバージョン(→YouTube)が米ビルボードラテンソングスチャートで首位を獲得していたことから、「Hawái」はこのチャートアクションをなぞる可能性もあるかもしれません。

 

3曲目はその「Despacito」、そして「Mood」のリミックスに参加したジャスティン・ビーバーによる主演曲で、チャンス・ザ・ラッパーを招いた「Holy」。オリジナルバージョン(→YouTube)もこの座組でしたが、こちらはアコースティックバージョンを投入しています。

最新11月7日付米ビルボードソングスチャートで10位に入っている「Holy」はグローバルチャートでもGlobal 200で10位、Global Excl. U.S.で13位と好調。アコースティックバージョンの登場はその安定した動きからギアをひとつ上げる役割を果たすかもしれません。

 

 

これら3つのリミックスはいずれも、オリジナルバージョンと合算が可能な米ビルボードソングスチャートやグローバルチャート等におけるチャートアクションへの燃費投入になることは間違いありませんが、ジャンルを超えた歌手の共演という意味でのクロスオーバーを楽しめるわけで(さらに「Mood」においては米ビルボードのラップソングスチャートおよびロック&オルタナティブソングスチャートを制しており、ジャンル自体がクロスオーバーしていると言えます)、曲の可能性を拡げることに一役買っていると言えるでしょう。

LiSA「炎」のチャートアクションの凄さは伝わっているか? 音楽チャート”分析”番組は必要では

チャートアクションが優れているならば、より大きく伝わっていかないといけないと思うのです。

10月31日付ではGlobal 200で8位、Global 200からアメリカの分を除いたGlobal Excl. U.S.で2位となり、双方で日本人歌手で初となるトップ10入りを果たした「炎」。最新11月7日付では前者が14位にダウンしていますが、後者では3位にとどまっており2週連続でトップ3をキープする快挙を達成。日本時間の火曜早朝にトップ10速報が発表され、Global Excl. U.S.で2週連続トップ3入りを果たしたことについては火曜のブログエントリーの終盤ではありますが取り上げています。

とはいえ、[LiSA グローバル]でSNSを検索しても前週ほど話題にしている方は多くなく、Yahoo!ニュースにて検索しても今週は一切報じられていないことを悲しく思っています。グローバルチャートが9月に新設され歴史が浅いからという理由もあるかもしれませんが、それにしてもあまりにスルーされてはいないでしょうか。

 

LiSA「炎」をはじめ、Global 200やGlobal Excl. U.S.にランクインしている日本人歌手の曲はその日本で大半のストリーミングおよびダウンロードを獲得してチャートに登場しています。しかし「炎」については海外でもヒットする可能性を秘めています。

興行収入ランキングは出ていませんが、台湾でもヒットしている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。そしてその主題歌である「炎」は、公開の2日後となる11月1日付の台湾のSpotifyデイリーチャートで初のトップ10入りを果たすと、11月3日付で2位まで上昇。執筆段階で最新となる11月4日付でもその位置をキープしているのです。

Spotifyでは台湾のほか、香港やマレーシアでもデイリー200位以内に登場。香港での公開は11月12日と先なのですが、最新11月4日付では18位まで上昇。同日付ではマレーシアでも187位にチャートインしていますが、そのマレーシアでの映画公開は来年2月4日とのことで、もしかしたら既に日本での映画熱がいち早く広まっているのかもしれません。これら海外の状況を踏まえれば、映画が海外で順次公開されると共にLiSA「炎」も海外に伝播する可能性は十分あり得るのです。

グローバルチャートにおいては、ダウンロードを大きく稼ぎつつ、高いストリーミングをキープするのがヒットの鍵。前者ばかりが強いと短期的なヒットに終わってしまいますが、(中略) 日本におけるダウンロードセールスは他国より高いため、短期的にでも上位進出はあり得るのです。それを中長期的なヒットに昇華させるにはストリーミングの拡充が必須といえます。

グローバルチャートについてまとめたブログエントリーで、同チャートで日本人歌手の曲が世界でヒットを続けるために必要なことを記載していますが、LiSA「炎」はこの課題を克服する可能性を得たと言えるかもしれません。となると、ロングスパンでのヒットが見込まれるゆえ、グローバルチャートを尚の事注目する必要があるのではないでしょうか。グローバルチャートの認知度上昇も含め、既に快挙を達成しているLiSA「炎」については積極的に報じてほしいと思うのです。

 

LiSA「炎」においては、日本における快挙もより強く伝わらないといけないと感じています。ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)を3週連続で制した「炎」のチャートアクションは素晴らしく、3週連続で3万ポイントを獲得していること、さらに最新11月9日付においてチャートを構成する8指標すべてがトップ10入りしていることは凄いことで、昨日のブログエントリーで”完璧な勝利”と書いたのはそのためなのです。

ビルボードジャパンソングスチャートではシングルCDセールスに長けた曲が瞬間風速的に首位を獲る傾向があることは、昨日のブログエントリーに掲載した表やこれまでのブログエントリーで示した通り。しかしながらチャートアクションとしてはLiSA「炎」のほうがより素晴らしいことに間違いありません。しかしながら首位を獲得したという(表層的な)記録だけではなくそのチャートアクションの中身がきちんと伝わらない限り、「炎」の凄さも、ましてや複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートがシングルCDセールス主体のランキングより優れていることも伝わらない気がします。

 

 

冒頭で紹介した自分のツイートには続きがあります。

喋り手としてのラジオを一旦離れていますが、ポッドキャストは継続している身として、そのポッドキャスト的な内容をラジオ番組でやってみたいと思うのです。すなわち、最新チャートを発表するのみならずその中身を分析し、より優れている点を紹介するというもの。そうすることで最新の流行を押さえるのみならず、音楽業界やリスナーへの気付きを与えることができるかもしれません。ビルボードジャパンソングスチャートの認知度や重要性も高まるはずですし、海外進出することの意識も高められるのではないかと。チャート紹介番組はあっても、アナライザーが登場するものはほぼないはずで、ニーズはきっとあると思うのですが如何でしょうか。

 

LiSA「炎」、3連覇にして”完璧な勝利”を掴む…11月9日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

10月26日~11月1日を集計期間とする11月9日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、LiSA「炎」が3連覇を達成。2位には「紅蓮華」がキープし、LiSAさんは2週連続となるワンツーフィニッシュを果たしました。

最新のチャート構成比(CHART insight)はこちら。

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「炎」は今週32819ポイントを獲得し、ポイント前週比は89.9%。上記記事では各指標の数値が出ており、シングルCDセールスは38558→28832枚(前週比74.8%)、ダウンロードは136233→104204DL(前週比76.5%)、サブスクの再生等に伴うストリーミングは18901974→18880651再生(前週比99.9%)、そして動画再生は8621198→8084681再生(前週比93.8%)となっています。ストリーミングのポイントは有料サービス会員の1再生と無料会員とのそれでウェイトが異なるため再生回数がそのまま反映されるわけではありませんが、それでもダウン幅は所有指標より接触指標のほうが抑えられていることがよく解ります。

 

そしてこの傾向はもうひとつの指標にも大きく反映。

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上記は前週(11月2日付)のCHART insightですが、チャート構成比を示す円グラフにおいて今週はオレンジの比率がおよそ倍増していることが解ります。このオレンジの指標はルックアップであり、パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる数を示しています。集計期間中にレンタルが解禁され、終盤2日間にその分の取込が反映されたことで同指標が大きく伸びた形です。次週はレンタルに伴うルックアップが1週間丸々加算されるため、この接触分も大きく反映されることとなります。

 

3週で10万ポイント超えを果たしたLiSA「炎」の凄さは、チャートを構成する各指標の順位にも大きく表れています。

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細かな表ではありますが、こちらは「炎」が初の首位を獲得した際のブログエントリー((追記あり) LiSA「炎」が完勝、3万を超えるポイントは誇るべき内容…10月26日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる(10月22日付)で用いた表をアレンジし、チャートを構成する8指標の順位を加えたもの。LiSA「炎」は今年初となる、チャート構成8指標すべてトップ10入りという快挙、いわば”完璧な勝利”を成し遂げているのです。

シングルCDセールスが10万を超える作品がこの3週間出ていないことが「炎」を優位にしているという声も聞こえてきそうですが、仮にそのような作品が出ていてもCDセールスに頼った戦略では他指標が振るわない限り早々の急落は免れず、また2週目のCDセールス自体も大きく落ち込みがちと言えます。「炎」はシングルCDセールスでも下降幅が大きくないのは表の通りであり、その点でも極めて優れた動きをしていると言えるでしょう。さらに次週は先述したレンタル解禁の影響で全指標完璧な加算が始まることから、Twitterおよびラジオエアプレイの動向次第では2週連続の全指標トップ10入りもあり得るかもしれません。

 

 

その次週は、Sexy Zone「NOT FOUND」がシングルCDセールス初加算に伴い上位に登場することが見込まれます。

移籍第一弾シングルとなった前作「RUN」が前々作を1万ポイント以上上回る29214ポイントを獲得して8月17日付で首位に立ちましたが、仮に同レベルのポイントを獲得すればLiSA「炎」との熾烈な首位争いとなることでしょう。無論CDセールス加算2週目以降の動向も大事ですが、仮に「NOT FOUND」が次週首位を獲得できなかったならばジャニーズ事務所はデジタルの重要性を痛感し、方向転換を迫られる大きな転換点に立つのではないかと考えます。

2020年10月の私的トップ10ソングス+α、選びました

1月からはじめている【私的トップ10ソングス+α】企画、今回は10月号です。前の月にリリースされた曲を中心に、しかしその縛りは出来る限り緩くした上で選んでみました。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。過去の私的トップ10ソングス、および2020年上半期の邦楽ベストソングスについてはこちらに。

ちなみに個人的に毎回チェックしているプレイリストは現時点において主に、New Music WednesdayNew Music Friday JapanNew Music FridayおよびMonday Spinとなっています。

 

 

さて、先月については心情の面でいつもとは違う月となってしまいました。というのも自分の住む地域で新型コロナウイルス感染者が多く発生し、自分の身近でも感染者が出ました。自分は濃厚接触者ではありませんが、罹患していなくとも気持ちが滅入った次第。さらには、自分の心配を冷たい言葉で切り捨てる同業者や、自分を感染間違いないと切り捨てる血縁者等に気持ちが踏み躙られた状況に、さらに追い詰められてしまったのです。新型コロナウイルスの登場は人の本性、心の汚さを浮き彫りにし、罹患しているしていないに関係なく尚の事生き辛い社会にさせてしまうのだと痛感しています。

ゆえに、音楽への感度や感動がこれまでになく薄れていたのが先月という次第。今は精神面が少し回復し、心がいい意味で揺さぶられる機会が増えてきました。新型コロナウイルスの収束を願うと共に、血縁者や同業者がその態度を変えようとしないならば逃げ場を設けることが必要だと強く感じた次第。この逃げ場という概念、今回挙げた問題のみならず様々な面において必要だと強く思うのです。 

そんな状況下で選んだ、10月の私的ベストを取り上げます。

 

 

10位 ウィズキッド feat. H.E.R.「Smile」

ドレイクの大ヒット曲「One Dance」(2016)に、カイラ共々客演参加していたのがナイジェリアの歌手、ウィズキッド。リリースされたばかりのニューアルバム『Made In Lagos』は同郷のバーナ・ボーイをはじめダミアン・マーリーやエラ・メイ等を招いていますが、ミュージックビデオが制作されたこちらを。レゲエテイストのビートにH.E.R.らしさが見事に混ざりあった、曲名の如く笑顔が生まれる一曲。

 

9位 オマー・アポロ feat. ルエル「Want U Around」

三連とファルセットが溶けます…その一言に尽きます。

 

8位 O.T.ジェナシス feat. クリス・ブラウン & チャーリー・ウィルソン「Back To You」

ギャップ・バンド「Outstanding」という大ネタ使い、さらにはそのギャップ・バンドのチャーリー・ウィルソン御大を呼んで最後の最後に一節歌わせるのですからときめかないわけがありません。御大の楽しそうな感じが伝わってきて嬉しいですね。

 

7位 藤井隆「14時まえにアレー」

上記は同曲も収録した、藤井隆さんによるレーベルのコンピレーションアルバム『SLENDERIE ideal』のトレーラー。この動画も含め、アルバムのデジタル、フィジカル双方のアプローチの素晴らしさについてはフィジカルとデジタルを共に充実させることが、最良のチャートアクションにも満足度上昇にもつながる(11月1日付)をご参照ください。

藤井隆さんについては『light showers』(2017)以来アルバムがリリースされておらず、この楽曲でその次作への願望を満たしているところです。それにしても今回、パソコン音楽クラブを招聘するとは…その嗅覚もまた素晴らしいと思います。 

 

6位 ケリー・ローランド「Crazy」

自身が出演する映画『Bad Hair (原題)』で披露した、役名(サンドラ)名義の曲が90年代のトニ・ブラクストン的で興味深いのですが(→YouTube)、今回はディスコティークなこちらを。Aメロではデスティニーズ・チャイルドの盟友、ビヨンセを彷彿とさせるのもニヤリ。

 

5位 MISIA「さよならも言わないままで」

夏に長時間の音楽番組で披露済のこの曲は、新型コロナウイルスの蔓延により奪われた命がテーマ。この曲を聴いて、MISIAさんの歌声の変化にハッとさせられた自分がいます。独特のソウルフルな歌声に混じって(いや時にはソウルフルな歌声以上に)表れる枯れたような声が、歌詞の持つ悲しさや切実さをより強く響かせているのです。歌の”うまさ”には技巧や表現力等が挙げられますが、年齢を経て得た味わいを見事に自分のものにしている点もまたうまさではないでしょうか。

 

4位 Yo-Sea「Coconuts」

間違いなくその音は今のR&B/ヒップホップであり、歌声もまた然り。このような音や声が日本人歌手から登場することがめちゃめちゃ新鮮だと感じています。 

 

3位 May'n「Living My Life」

上記は3種リリースのミニアルバムのうち、ソウルミュージックを軸にした作品のトレーラー。サビには一切の歌謡曲的落とし込みが排され、80年代のシティポップ感を取り込みつつサビ直前のパーカッション的音の挿入が90年代感っぽくもある不思議な曲。ソングライターには有坂美香さんの名があり、このソウル感に納得です。

 

2位 GFRIEND「Crossroads -JP ver.-」

上記動画は韓国語版。GFRIENDは「Apple」の日本語版も素晴らしかったのですが、「Crossroads」における80年代アニソン感がたまらないのです。サビへの高揚感の演出、サビが二段階用意されている点、二番の出だしの展開、そしてアウトロ…これをソングライトしたのが韓国のチームというのが素晴らしく、日本の楽曲を如何に細かく研究しているかを実感します。

 

1位 アリアナ・グランデ「Positions」

最新11月7日付米ビルボードソングスチャートで自身5曲目となる初登場首位(史上最多)を成し遂げた、同名アルバムからの先行曲。僅か3分にも満たない曲ながら、展開が完璧。音の世界はたとえばホイットニー・ヒューストン feat. フェイス・エヴァンス & ケリー・プライス「Heartbreak Hotel」(1998)やメアリー・J・ブライジ「Be Without You」(2005)を思わせるR&Bですが、それらをタイトに濃縮されている感。弦楽やアリアナのファルセットの挿入等、すべてが見事だと思うのです。

 

 

以下、次点として10曲。

・ROTH BART BARON「極彩 | I G L (S)」

・GFRIEND「Apple -JP ver.-」

ジョイス・ライス feat. UMI「That's On You (Japanese Remix)」

メーガン・トレイナー feat. アース・ウインド & ファイアー「Holidays」

ラヒーム・デヴォーン「Mr. Midnight」

・ターシャ・コムズ・レナード feat. シアラ「In Spite Of Me」

・TOMORROW X TOGETHER「Blue Hour」

・ザ・ヴァンプス「Better」

・ウェザン feat. ザ・ウォンバッツ「Clouds」

・シャビエル・オマー feat. メレバ「Like I Feel」

なかなか感動する心に成れなかった10月ですが、メーガン・トレイナー feat. アース・ウインド & ファイアー「Holidays」はO.T.ジェナシス feat. クリス・ブラウン & チャーリー・ウィルソン「Back To You」同様、単純にアガりました。こういう純粋に楽しくあれ!と言ってくれているかのような曲の存在って貴重です。

 

Spotifyのプレイリストはこちらに。

今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。

最新米ソングスチャートおよびグローバルチャート速報、アリアナ・グランデ初登場首位達成

ビルボードソングスチャート、現地時間の11月2日月曜に発表された最新11月7日付ソングスチャート(Hot 100)はアリアナ・グランデ「Positions」が初登場で首位を獲得、また後述する2つのグローバルチャートでも首位となり、初登場にて3つのチャートを制しました。

10月30日リリースの同名アルバムからの先行曲で、大統領を演じたミュージックビデオも話題となった「Positions」。ストリーミングは3530万(同指標1位)、ダウンロードは34000(同指標2位)、ラジオエアプレイは1990万(同指標41位)を記録。ダウンロードにはアリアナ・グランデの公式ホームページで5ドルにて販売されたシングルCDが含まれ、その数値は3000となっています。

アリアナ・グランデは今作で5曲目のナンバーワン獲得にして、その5曲すべてが初登場での首位到達。初登場首位はジャスティン・ビーバーマライア・キャリー、ドレイクおよびトラヴィス・スコットがいずれも3曲であり、彼らに大きく差をつけた形。またこの1年間では「Stuck With U」(ジャスティン・ビーバーとの共演 5月23日付で首位)、「Rain On Me」(レディー・ガガとの共演 6月6日付で首位)に続いて3曲目となり、わずか5ヶ月と2週間という短いスパンで連続首位を記録しています。

1年で3曲首位獲得という記録は一昨年のドレイク以来となり、女性歌手では2010年のリアーナ(4曲)およびケイティ・ペリー(3曲)以来となる記録。なお同一年における最多首位獲得記録はザ・ビートルズにおける6曲となります(1964年に達成)。

2020年はフィジカル施策(歌手のホームページ上でレコードやCD、カセットテープといったいわゆるフィジカルを発売し、後日到着したとしても購入段階で売上にカウント。また購入時に可能となるダウンロードもまたカウントされるため所有指標が伸びるという仕組み。なお現在は購入時のダウンロードが加算対象外、且つフィジカルは発送段階で加算される形にチャートポリシーが変更されています)が功を奏し、初登場首位獲得曲が量産される年となっています。「Positions」は今年10曲目の初登場首位獲得となり、通算では45曲目。2020年の10曲という数字は、これまで最高だった1995年および2018年の2.5倍にあたります。また初登場に関係なく、今年は「Positions」が18曲目の首位獲得曲となり、2007年以来となる記録となっています。

 

2位にはルーク・コムズ「Forever After All」が初登場。これまでの最高位は昨年11月、「Even Though I'm Leaving」の11位であり、自己ベストを更新しています。

10月23日(すなわちストリーミングとダウンロードの集計期間初日。なおラジオエアプレイは10月26日からの1週間が対象)に、1年前にリリースしたアルバム『What You See Is What You Get』のデラックスエディションをリリースし、同作は最新米ビルボードアルバムチャートで首位に返り咲きを果たしています。「Forever After All」はそのデラックスエディションに追加された曲のひとつで、ストリーミングは2910万(同指標2位)、ダウンロードは52000(同指標1位)、ラジオエアプレイは873000(同指標50位未満)を記録し総合で2位となった形です。

この曲には仕掛けがいくつか。初お目見えしたのはTikTok上で今年8月のこと。そしてこの曲についてはリリース日にアコースティックバージョンが、また集計期間の終盤にはスタジオレコーディングの動画がアップされており、おそらくはこれらの動画もストリーミングを押し上げた形と言えるでしょう。

ルーク・コムズ「Forever After All」は男性カントリー歌手における初登場での最高位を更新。これまではガース・ブルックスのオルターエゴであるクリス・ゲインズ(名義での)「Lost In You」が1999年9月に5位に登場したのが最高でした。またカントリー歌手全体ではキャリー・アンダーウッド「Inside Your Heaven」(2005年7月2日付)の首位獲得に次ぐ高位置での初登場に。なおキャリーはオーディション番組『American Idol』の優勝者であり、同曲が初のシングルにして首位獲得に至っています。

 

初登場でのワンツーフィニッシュはアリアナ・グランデ「Positions」そしてルーク・コムズ「Forever After All」が史上3回目。その前は2015年11月14日付でのアデル「Hello」およびジャスティン・ビーバー「Sorry」であり、最初の記録は2003年6月28日付におけるクレイ・エイケン「This Is The Night」とルーベン・スタッダード「Flying Without Wings」。最初の記録は先述した『American Idol』での優勝者(ルーベン)および準優勝者(クレイ)によるもので、当時の同番組の影響力の凄さがよく解ります。

 

(なお、アリアナ・グランデや『American Idol』等、初登場首位に関する歴史は以前紹介したこちらが分かりやすいと思いますのでご参照ください。)

 

今週はルーク・コムズ「Forever After All」以外にも、ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」が6位に入り、カントリー曲が2曲トップ10入りを果たしています。これは「I Hope」とモーガン・ウォレン「7 Summers」が同時トップ10入りとなった8月29日以来であり、「7 Summers」も「Forever After All」同様に初登場で6位にランクインしていました(が、その翌週に大きく後退し38位に)。それ以前となると、フェイス・ヒル「Breathe」が3位、ローンスター「Amazed」が10位に入った2000年5月13日付となるわけで、「Forever After All」そして「7 Summers」のようにカントリーがデジタルで(持続力は別として)強くなってきたことがこのような記録を作る契機になったと言えるでしょう。

 

前週まで総合首位を記録していた24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」は初登場の2曲に押されて3位に後退。ストリーミングが1920万、ダウンロードが7000そしてラジオエアプレイが7900万となり、ラジオエアプレイにおいては前週から690万伸ばして同指標初制覇。わずか8週でラジオエアプレイを制したのはリゾ「Good As Hell」(2019年11月)以来であり、記録的な速さとなっています。

ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」はワンランクダウンの4位。同曲はR&B/ヒップホップソングスチャートで今週首位に立ったことで、ドレイクにとっては21曲目の同チャート制覇。アレサ・フランクリンおよびスティーヴィー・ワンダーの20曲を抜き、単独での史上最多首位獲得記録となります。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」もワンランクダウンで5位。トップ5在籍記録を史上最多の31週に伸ばし、そしてトップ10入りも今週で37週に。後者は史上最長記録となるポスト・マローン「Circles」(2019-2020)まであと2週と迫っています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) アリアナ・グランデ「Positions」

2位 (初登場) ルーク・コムズ「Forever After All」

3位 (1位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

4位 (3位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

5位 (4位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

6位 (6位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

7位 (2位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

8位 (5位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

9位 (10位) インターネット・マネー & ガナ feat. ドン・トリヴァー & ナヴ「Lemonade」

10位 (9位) ジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」

 

次週はアリアナ・グランデのニューアルバム『Positions』収録の14曲がどの位置に登場するかに注目。アメリカのSpotifyではリリース日にチャートを独占しています。

上位での初登場曲は、所有指標のダウンを接触指標群で補えない限り翌週の急落は避けられませんが、アリアナ・グランデ「Positions」は2週連続のトップ10入りが確実と思われます。レディー・ガガがアルバム『Chromatica』リリースの前週にアリアナとの「Rain On Me」をリリースし同曲が首位初登場の翌週に5位にとどまったという、アルバムリリース直前での先行曲リリースというスケジュールが今回アリアナでも行われており、アルバムの話題性が特にストリーミングのキープにつながるものと考えられます。ラジオエアプレイが初登場週に50位以内に入っていることもまた強みと言えるでしょう。一方、ルーク・コムズはそのラジオエアプレイがあまりにも弱いこと、アルバムのデラックスエディション収録曲ゆえ(特に以前同作のオリジナル盤を購入した方にとっては)曲単位での購入で済ませている方が少なくないだろうことを想像するに、次週の急落は必至ではないでしょうか。

 

 

さて、米ビルボードはソングスチャートトップ10速報と同じく日本時間の火曜早朝に、2つのグローバルチャートにおけるトップ10速報を発表しています。

アリアナ・グランデ「Positions」は2つのグローバルチャートを初登場で同時制覇した最初の楽曲となりました。

「Positions」はGlobal 200でストリーミングが9840万、ダウンロードが44000となり、またGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが6460万、ダウンロードが16000。アメリカでの強さが目立ちながら、世界中での人気が見て取れます。他方、Global 200で4位に入ったルーク・コムズ「Forever After All」はストリーミングが3400万、ダウンロードが59000となっていますが、Global Excl. U.S.では初登場105位であり、ストリーミングが530万、ダウンロードが6000。2つのグローバルチャートで大差がついたのは、カントリー曲のアメリカ以外での強くなさが影響していると言えるでしょう。

前週Global 200で8位、Global Excl. U.S.で2位に到達したLiSA「炎」は、前者こそトップ10から外れたものの(執筆段階で順位は不明)、Global Excl. U.S.ではワンランクダウンにとどまり今週3位に。主題歌となった映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の海外での順次公開により、同チャートでも好位置でのランクインが続くかもしれません。