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最新米ソングスチャートおよびグローバルチャート速報、アリアナ・グランデ初登場首位達成

ビルボードソングスチャート、現地時間の11月2日月曜に発表された最新11月7日付ソングスチャート(Hot 100)はアリアナ・グランデ「Positions」が初登場で首位を獲得、また後述する2つのグローバルチャートでも首位となり、初登場にて3つのチャートを制しました。

10月30日リリースの同名アルバムからの先行曲で、大統領を演じたミュージックビデオも話題となった「Positions」。ストリーミングは3530万(同指標1位)、ダウンロードは34000(同指標2位)、ラジオエアプレイは1990万(同指標41位)を記録。ダウンロードにはアリアナ・グランデの公式ホームページで5ドルにて販売されたシングルCDが含まれ、その数値は3000となっています。

アリアナ・グランデは今作で5曲目のナンバーワン獲得にして、その5曲すべてが初登場での首位到達。初登場首位はジャスティン・ビーバーマライア・キャリー、ドレイクおよびトラヴィス・スコットがいずれも3曲であり、彼らに大きく差をつけた形。またこの1年間では「Stuck With U」(ジャスティン・ビーバーとの共演 5月23日付で首位)、「Rain On Me」(レディー・ガガとの共演 6月6日付で首位)に続いて3曲目となり、わずか5ヶ月と2週間という短いスパンで連続首位を記録しています。

1年で3曲首位獲得という記録は一昨年のドレイク以来となり、女性歌手では2010年のリアーナ(4曲)およびケイティ・ペリー(3曲)以来となる記録。なお同一年における最多首位獲得記録はザ・ビートルズにおける6曲となります(1964年に達成)。

2020年はフィジカル施策(歌手のホームページ上でレコードやCD、カセットテープといったいわゆるフィジカルを発売し、後日到着したとしても購入段階で売上にカウント。また購入時に可能となるダウンロードもまたカウントされるため所有指標が伸びるという仕組み。なお現在は購入時のダウンロードが加算対象外、且つフィジカルは発送段階で加算される形にチャートポリシーが変更されています)が功を奏し、初登場首位獲得曲が量産される年となっています。「Positions」は今年10曲目の初登場首位獲得となり、通算では45曲目。2020年の10曲という数字は、これまで最高だった1995年および2018年の2.5倍にあたります。また初登場に関係なく、今年は「Positions」が18曲目の首位獲得曲となり、2007年以来となる記録となっています。

 

2位にはルーク・コムズ「Forever After All」が初登場。これまでの最高位は昨年11月、「Even Though I'm Leaving」の11位であり、自己ベストを更新しています。

10月23日(すなわちストリーミングとダウンロードの集計期間初日。なおラジオエアプレイは10月26日からの1週間が対象)に、1年前にリリースしたアルバム『What You See Is What You Get』のデラックスエディションをリリースし、同作は最新米ビルボードアルバムチャートで首位に返り咲きを果たしています。「Forever After All」はそのデラックスエディションに追加された曲のひとつで、ストリーミングは2910万(同指標2位)、ダウンロードは52000(同指標1位)、ラジオエアプレイは873000(同指標50位未満)を記録し総合で2位となった形です。

この曲には仕掛けがいくつか。初お目見えしたのはTikTok上で今年8月のこと。そしてこの曲についてはリリース日にアコースティックバージョンが、また集計期間の終盤にはスタジオレコーディングの動画がアップされており、おそらくはこれらの動画もストリーミングを押し上げた形と言えるでしょう。

ルーク・コムズ「Forever After All」は男性カントリー歌手における初登場での最高位を更新。これまではガース・ブルックスのオルターエゴであるクリス・ゲインズ(名義での)「Lost In You」が1999年9月に5位に登場したのが最高でした。またカントリー歌手全体ではキャリー・アンダーウッド「Inside Your Heaven」(2005年7月2日付)の首位獲得に次ぐ高位置での初登場に。なおキャリーはオーディション番組『American Idol』の優勝者であり、同曲が初のシングルにして首位獲得に至っています。

 

初登場でのワンツーフィニッシュはアリアナ・グランデ「Positions」そしてルーク・コムズ「Forever After All」が史上3回目。その前は2015年11月14日付でのアデル「Hello」およびジャスティン・ビーバー「Sorry」であり、最初の記録は2003年6月28日付におけるクレイ・エイケン「This Is The Night」とルーベン・スタッダード「Flying Without Wings」。最初の記録は先述した『American Idol』での優勝者(ルーベン)および準優勝者(クレイ)によるもので、当時の同番組の影響力の凄さがよく解ります。

 

(なお、アリアナ・グランデや『American Idol』等、初登場首位に関する歴史は以前紹介したこちらが分かりやすいと思いますのでご参照ください。)

 

今週はルーク・コムズ「Forever After All」以外にも、ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」が6位に入り、カントリー曲が2曲トップ10入りを果たしています。これは「I Hope」とモーガン・ウォレン「7 Summers」が同時トップ10入りとなった8月29日以来であり、「7 Summers」も「Forever After All」同様に初登場で6位にランクインしていました(が、その翌週に大きく後退し38位に)。それ以前となると、フェイス・ヒル「Breathe」が3位、ローンスター「Amazed」が10位に入った2000年5月13日付となるわけで、「Forever After All」そして「7 Summers」のようにカントリーがデジタルで(持続力は別として)強くなってきたことがこのような記録を作る契機になったと言えるでしょう。

 

前週まで総合首位を記録していた24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」は初登場の2曲に押されて3位に後退。ストリーミングが1920万、ダウンロードが7000そしてラジオエアプレイが7900万となり、ラジオエアプレイにおいては前週から690万伸ばして同指標初制覇。わずか8週でラジオエアプレイを制したのはリゾ「Good As Hell」(2019年11月)以来であり、記録的な速さとなっています。

ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」はワンランクダウンの4位。同曲はR&B/ヒップホップソングスチャートで今週首位に立ったことで、ドレイクにとっては21曲目の同チャート制覇。アレサ・フランクリンおよびスティーヴィー・ワンダーの20曲を抜き、単独での史上最多首位獲得記録となります。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」もワンランクダウンで5位。トップ5在籍記録を史上最多の31週に伸ばし、そしてトップ10入りも今週で37週に。後者は史上最長記録となるポスト・マローン「Circles」(2019-2020)まであと2週と迫っています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) アリアナ・グランデ「Positions」

2位 (初登場) ルーク・コムズ「Forever After All」

3位 (1位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

4位 (3位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

5位 (4位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

6位 (6位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

7位 (2位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

8位 (5位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

9位 (10位) インターネット・マネー & ガナ feat. ドン・トリヴァー & ナヴ「Lemonade」

10位 (9位) ジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」

 

次週はアリアナ・グランデのニューアルバム『Positions』収録の14曲がどの位置に登場するかに注目。アメリカのSpotifyではリリース日にチャートを独占しています。

上位での初登場曲は、所有指標のダウンを接触指標群で補えない限り翌週の急落は避けられませんが、アリアナ・グランデ「Positions」は2週連続のトップ10入りが確実と思われます。レディー・ガガがアルバム『Chromatica』リリースの前週にアリアナとの「Rain On Me」をリリースし同曲が首位初登場の翌週に5位にとどまったという、アルバムリリース直前での先行曲リリースというスケジュールが今回アリアナでも行われており、アルバムの話題性が特にストリーミングのキープにつながるものと考えられます。ラジオエアプレイが初登場週に50位以内に入っていることもまた強みと言えるでしょう。一方、ルーク・コムズはそのラジオエアプレイがあまりにも弱いこと、アルバムのデラックスエディション収録曲ゆえ(特に以前同作のオリジナル盤を購入した方にとっては)曲単位での購入で済ませている方が少なくないだろうことを想像するに、次週の急落は必至ではないでしょうか。

 

 

さて、米ビルボードはソングスチャートトップ10速報と同じく日本時間の火曜早朝に、2つのグローバルチャートにおけるトップ10速報を発表しています。

アリアナ・グランデ「Positions」は2つのグローバルチャートを初登場で同時制覇した最初の楽曲となりました。

「Positions」はGlobal 200でストリーミングが9840万、ダウンロードが44000となり、またGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが6460万、ダウンロードが16000。アメリカでの強さが目立ちながら、世界中での人気が見て取れます。他方、Global 200で4位に入ったルーク・コムズ「Forever After All」はストリーミングが3400万、ダウンロードが59000となっていますが、Global Excl. U.S.では初登場105位であり、ストリーミングが530万、ダウンロードが6000。2つのグローバルチャートで大差がついたのは、カントリー曲のアメリカ以外での強くなさが影響していると言えるでしょう。

前週Global 200で8位、Global Excl. U.S.で2位に到達したLiSA「炎」は、前者こそトップ10から外れたものの(執筆段階で順位は不明)、Global Excl. U.S.ではワンランクダウンにとどまり今週3位に。主題歌となった映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の海外での順次公開により、同チャートでも好位置でのランクインが続くかもしれません。