イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「I wonder」「初恋キラー」の上位進出からみえてくる、作品のアプローチとTikTok活用についての私見

最新5月15日公開分ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標、その基となるStreaming Songsチャートの記事では興味深い文言がみられます。

Da-iCE「I wonder」は総合ソングチャートでも40→31位に上昇。ダウンロードやラジオ指標の順位はダウンするも、Streaming Songsチャートでは67→36位に上昇しています。

 

Da-iCEは本日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に初出演し、「スターマイン」と共に「I wonder」を披露します。このブログでは番組出演が判明した直後、以下のエントリーを掲載しました。

特に今週はじめのエントリーにて、Da-iCEの「CITRUS」や「スターマイン」におけるヒットの流れ、「I wonder」も含めた施策等の徹底やそれを楽しむ姿勢、そしてDa-iCEのヒットに対するスタンスを紹介しました。実際、最新のTikTokチャート(TikTok Weekly Top 20)では「I wonder」が20位に入り、Da-iCE側の楽しむ姿勢が拡がりをみせていることが解ります。

 

TikTokはソングチャートの構成指標ではありませんが、その人気が動画再生やストリーミングに移行する傾向があります。

上記は【ビルボードジャパン最新動向】通算15週目首位のBBBB、次週はAぇ! group「《A》BEGINNING」と対決へ(5月16日付)にて用いた表にDa-iCE「I wonder」を加えたもの。同曲はストリーミング再生回数、総合ソングチャートのポイント双方で前週超えを果たしています。集計期間中の平日が前週は3日に対し当週は4日となり再生回数が下がる傾向の中、「I wonder」の伸びは顕著なのです。

また「I wonder」はApple Music、SpotifyそしてLINE MUSICといった主要サブスクサービスで、順位に若干の差はありながらもバランスよくランクイン。Spotifyではデイリーチャートでトップ10目前まで迫り、次週の上昇も予想されます(ただし最新5月15日付ではデイリー12→17位に後退)。『ミュージックステーション』初パフォーマンスでより多くの方に見つかれば、ストリーミングそして総合順位のさらなる上昇も考えられます。

 

 

Da-iCE「I wonder」は今週TikTokでの総再生回数が1億回を記録。これは彼らが積極的にダンスチャレンジを発信し、周囲を楽しませつつ巻き込んでいることの証明でしょう。

そのTikTok関連では、「全方向美少女」がバイラルヒットした乃紫(のあ)さんによる新曲「初恋キラー」が最新5月15日公開分ビルボードジャパンソングチャートで42位に初登場、ストリーミング指標では38位に入っています。Spotifyでは今週50位の壁を越えたことで、各サブスクサービスでのさらなる上昇も見込まれています。

音楽ジャーナリストの柴那典さんが以前乃紫さんをインタビューし、その模様を踏まえたコラムも掲載されていますが、乃紫さんもヒットに意欲的であり、もっといえば制作段階から意識していることが解ります。反応が好かったサビをフル尺に拡げて作る手法はTikTok活用という点では今風ですが、個人的には山下達郎さんのCMソングにおけるアプローチを想起。ツールは変わっても基礎部分は不変ではないかと感じています。

 

 

TikTokは出来上がった作品の浸透、さらに作品の制作段階にも影響を与えることから、音楽業界におけるアプローチ等は多様になりました。特に前者の重要性は、TikTokから音源を一時引き上げたユニバーサルミュージックグループに所属するNovelbright竹中雄大さんの言葉からも解るはずです。

TikTok等を用いてヒットした曲を"狙いが透けて見える"として敬遠する方がいらっしゃるかもしれません。しかし、すべての曲やアルバムはリリースタイミングひとつを決定するだけでも施策が伴っていることが理解できたならば、狙いが透けて見えたとしても曲との出会いを楽しむ等スタンスを変えたほうが好いのではというのが私見。実際に「スターマイン」や「愛とか恋とか」等、今回紹介した方々の作品はロングヒットに至り、ともすれば総合ソングチャートの成績以上に浸透しているのではと感じています。