イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

音楽フェスのパフォーマンス映像、歌手のYouTubeチャンネルで公開することの意味とは

日本時間の昨日発表された8月23日付米ビルボードソングチャート(集計期間:8月8~14日)では、アレックス・ウォーレン「Ordinary」が首位に返り咲いています。

『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』サウンドトラック収録のハントリックス(HUNTR/X)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が構成3指標いずれも伸ばしながらも2連覇を果たせなかったのは、「Ordinary」の新バージョン公開に基づきます。

 

アレックス・ウォーレン「Ordinary」はストリーミングが前週比14%アップの2390万(同指標2位)、ダウンロードが同10%ダウンの7,000(同指標通算11週目の首位)、ラジオが同1%アップの7400万(同指標通算9週目の首位)をそれぞれ記録。音楽フェスのロラパルーザにてルーク・コムズがアレックスを招聘したライブバージョン(リミックス版)が今回の集計期間前日に当たる8月7日にリリースされたことが再浮上の要因です。

上記はアレックス・ウォーレンの公式YouTubeアカウントで公開された公式オーディオ。一方でルーク・コムズの公式YouTubeチャンネルでは、ロラパルーザのライブ映像が公開されています。

 

(追記あり)【海外ビルボード】米は「Ordinary」首位返り咲き、Global 200は『Kpop Demon Hunters』関連曲がトップ5寡占(8月19日付)より

 

ロラパルーザはシカゴにて7月31日から4日間開催。アレックス・ウォーレンとルーク・コムズはステージが異なるものの立て続けにパフォーマンスを行っており、アレックスは終演後にルークのステージに立っています。そしてそのステージからわずか1週間のうちに音源化され、さらには(ルークの公式YouTubeチャンネルにて)ロラパルーザのライブパフォーマンス映像が公開されたという流れです。

 

Schedule | Lollapaloozaより

 

 

さて、YouTubeにて"Lollapalooza 2025"と入力し検索したところ(検索結果はこちら)、ブログ執筆時点で歌手側の公式YouTubeにて掲載された動画はほぼないことが解ります。フル動画をアップしているのはK-POP歌手のTWICE、BOYNEXTDOORおよびKickFlipの3組。そして単曲にて公開しているのは先述した「Ordinary」共演版のほか、KATSEYE(「Gabriela」を含む3曲)のみの模様です。

 

おそらくはロラパルーザでのパフォーマンス動画においては貸与料金がかかり、歌手側が好んでアップしていないだろうと推測しているのですが、先述したルーク・コムズ参加版のアレックス・ウォーレン「Ordinary」のみならず、動画の公開が音楽チャート面でプラスに作用していることを最新8月23日付米ビルボードソングチャート(→こちら)から実感できます。

KATSEYE「Gabriela」は最新8月23日付米ビルボードソングチャートで76位に。100位以内再登場を果たしたのみならず同曲最高位、さらにはキャリア最高位を更新しています。またTWICE「Strategy」は69→62位へ、TWICEのジョンヨン、ジヒョ、チェヨンによる「Takedown」も66→60位へ上昇し、「Takedown」はメンバー内ユニットの、また「Strategy」はグループとしての最高位を更新した形です。

 

TWICEの2曲においては、現在ヒットしている『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』サウンドトラックに収録されているというアドバンテージも大きいながら、今回の集計期間前半に映像を公開したことがプラスに作用しているでしょう。2曲のイントロが流れた際の歓声の大きさからも2曲が待望されていたことが解ります。

そしてKATSEYE、さらには冒頭で紹介したアレックス・ウォーレン(ルーク・コムズとのコラボ版)においても、公開を音楽チャートでのステップアップにつなげる狙いがあったと捉えていいでしょう。BOYNEXTDOORやKickFlipにおいては米での足がかりにする目的も感じられます。TWICEにおいては「Strategy」や「Takedown」の映像をフル動画とは別に用意したほうが音楽チャート面ではより好かったのではとも考えますが、TWICE自体の勢いを高めるという意味ではフル動画の公開が最善だったのかもしれません。

 

 

日本ではこの1週間、サマーソニックにてアリシア・キーズとAIさん等が共演し、ビリー・アイリッシュの単独公演にはYOASOBIそして藤井風さんがオープニングアクトを務める等、日本人歌手のステータスが上がったといえる出来事が相次いで生まれています。ならばそれを歌手側が撮影する、もしくはフェス等から貸与し、"公式動画として"、そして"即座に"公開することが必要ではということを、今回強く感じた次第です。