イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週トップ10初登場曲の最新動向、およびBE:FIRST「夢中」の人気から考えること

昨年夏以降再開したこのエントリーですが、先週よりタイトルを”前週トップ10初登場曲の最新動向”に変更した上で、副題を新たに設けています。前週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミングがロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。

そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー掲載の理由です。

 

<2025年6月11日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・BE:FIRST「GRIT」

 6月4日公開分 1位→6月11日公開分 6位

Hey! Say! JUMP「encore」

 6月4日公開分 2位→6月11日公開分 24位

・OCTPATH「また夏に帰ろう」

 6月4日公開分 4位→6月11日公開分 100位未満

・BE:FIRST「夢中」

 6月4日公開分 8位→6月11日公開分 11位

 

当週のストリーミング表はこちら。


Hey! Say! JUMP「encore」は前フィジカルシングル表題曲「UMP」に比べて、フィジカルセールス指標加算2週目におけるダウン幅が縮小しています。この点については一昨日のエントリーでも紹介していますが、ストリーミングの安定が総合チャートに寄与しているといえるでしょう。

 

前週フィジカル/デジタル双方の初加算に伴い今年度週間最高ポイントを記録したBE:FIRST「GRIT」は、ポイント前週比30.2%となり6位に後退。前フィジカルシングル表題曲「Spacecraft」が1→4位、ポイント前週比36.4%と推移したのに比べてダウン幅は大きくなっていますが、それでもフィジカルセールス指標加算2週目に総合トップ10内をキープしている点からはBE:FIRSTの強さが実感できます。

その「GRIT」以上にロングヒットの兆しをみせているのが、『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ)主題歌の「夢中」。ポイント前週比90.0%を記録し、8→11位と推移しています。さらにはストリーミングの再生回数前週比が98.1%となり、「GRIT」の75.1%を上回っているのもポイントです。

(中略)

初週は主にファンダムによる接触の割合が高いと考えられる一方、上昇という状況からはライト層(歌手のファンというわけではないが曲が気になる方々)が増えていることが読み取れます。

ここからは「夢中」自体の人気上昇のみならず、ライト層のコアファン化、そしてそれに伴い「GRIT」そして過去作品へ人気が波及する可能性がみえてきます。

「夢中」が初めてトップ10入りした状況については前週分析しています。「夢中」はBE:FIRSTの曲の中でライト層からの支持が(他の曲に比べて)大きいと捉えていますが、ともすればコアファンにおいても同様ではと感じます。

 

日本のSpotifyデイリーチャートにおいてはStationheadを用いたリスニングパーティの影響力上昇に伴い、新曲リリース時に過去曲も聴取するという流れが高まっています(同じ曲を繰り返し聴いた場合はすべてカウントされない(模様である)という仕様も聴取行動に影響していると耳にします)。BE:FIRSTにおいては、「GRIT」に沿う形で上昇したのが「Boom Boom Back」となります。

新曲リリース時に過去曲も聴取するという流れはライト層以上にファンダムで起こると考えるに、ファンダムもまたキャッチーな作品をより強く求めているのではと感じた次第。5月25日付以降のSpotifyデイリーチャートではこれまでのフィジカルシングル表題曲でアグレッシブなヒップホップ作品の「Mainstream」「Masterplan」「Spacecraft」が200位以内に返り咲いていないことから、この推測が成り立つのではと考えます。

 

 

ドラマ主題歌という位置付けもさることながら「夢中」がロングヒットに至りつつあるのは、「Boom Boom Back」の人気も踏まえれば尚の事、曲の持つキャッチーさやポップネスがファンダムのニーズにより強く合致していることが背景にあるかもしれません。今後の動きを見ない限りはロングヒットしたと断定することはできませんが、歌手側が「夢中」や先述した「Boom Boom Back」の動きをどう捉えるかに注目しています。