日本の新たな音楽賞、MUSIC AWARDS JAPANが5月21日および22日に初開催(演歌歌謡曲部門は別日に開催)。22日に行われたGrand CeremonyはYouTubeで世界に向けても配信されました。
そのGrand Ceremony開催の翌日からの1週間が、米ビルボードによる6月7日付グローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)の集計期間に。世界200位以上の国や地域における主要デジタルプラットフォームでのストリーミング(動画再生含む)およびダウンロードで構成されるこのチャートでは、日本の楽曲が3週連続で200位以内に登場していません。
6月7日付 #Global200 における日本の楽曲の動向。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年6月3日
(集計期間:2025年5月23~29日)https://t.co/iXT0aPk2Rn
日本の楽曲は200位以内にランクインしていません。
このGlobal 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲のみを抽出したのが、ビルボードジャパンによるGlobal Japan Songs Excl. Japanとなり、6月7日付Global 200と集計期間が同じ6月5日公開分のGlobal Japan Songs Excl. JapanではCreepy Nuts「オトノケ」が首位に返り咲いています。「オトノケ」はMUSIC AWARDS JAPANでは受賞しておらず、他方主要部門を獲得した「Bling-Bang-Bang-Born」は上昇するも4→3位となっています。
「オトノケ」は、TVアニメ『ダンダダン』のオープニング・テーマとして書き下ろされた楽曲。当週のビデオとオーディオを合算したストリーミング数は308万回で、前週比105%を記録。2週ぶり、通算25度目の首位を獲得した。
【ビルボード】Creepy Nuts「オトノケ」グローバル・ジャパン・ソングス首位返り咲き 首位獲得数歴代単独1位に https://t.co/QOfpa9VuSi
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月5日
Creepy Nuts「オトノケ」が6月5日公開分Global Japan Songs Excl. Japanを制したのは、チャート集計期間にあたる5月25日に日本で開催されたクランチロール・アニメアワード 2025での最優秀アニソン賞受賞が影響しているかもしれません。
クランチロール・アニメアワード 2025はライブ配信された後、日本時間の6月7日夜に授賞式のアーカイブがクランチロールの公式YouTubeチャンネルにて公開。このチャンネルにて、授賞式でのCreepy Nuts「オトノケ」パフォーマンス動画も公開されています。
アーカイブ公開までは時間を要したクランチロール・アニメアワード 2025ですが、生配信は英語等様々な言語に対応した形で行っており、これが「オトノケ」のGlobal Japan Songs Excl. Japan首位返り咲きに影響したと捉えています。
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— ソニー・ピクチャーズ (@SonyPicturesJP) 2025年5月22日
世界最大級のアニメの祭典を≪生配信≫🌎
クランチロール・アニメアワード 2025🏆
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SONY PICTURES CORE、
ソニーグループ公式YouTube他にて配信⚡#CreepyNuts や #FLOW、#LiSA による
豪華パフォーマンスも必見🔥
⏰5/25(日)
17時 プレショー/18時 授賞式
それでも、6月5日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanで首位を獲得したCreepy Nuts「オトノケ」のストリーミング再生回数は前週比105%となる308万回。このチャートでは前週初めて松原みき「真夜中のドア~stay with me」が制していますが、その際のストリーミング数は288万となり、歴代首位曲ではチャート開始以降最低水準となっていました。「オトノケ」は当週300万回再生を超えるも、高水準とは言い難い状況です。
松原みき「真夜中のドア~stay with me」はチャート開設当初からランクインしており、再生回数は長期的に安定していると考えられます。当週はその「真夜中のドア~stay with me」をMUSIC AWARDS JAPANの主要部門である最優秀楽曲賞を受賞したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が抜いているものの、しかしトップに立てていません。
MUSIC AWARDS JAPANは字幕関連の追加のためにYouTubeでの”ライブ”配信を実際から30分遅れで行い、その後のアーカイブはYouTubeで残っていません。NHK総合でのテレビ中継が行われていない時間帯はYouTubeのみで配信されたゆえ、その時間帯については現時点で確認する手段がありません。
後にMUSIC AWARDS JAPANの公式YouTubeチャンネルではGrand Ceremonyでのパフォーマンス映像を、Mrs. GREEN APPLEおよびちゃんみなさんの分を除いて配信していますが、しかしこれが海外に轟いたわけではないといえます。いや、視聴はされているとして、発信元のMUSIC AWARDS JAPAN公式チャンネルはYouTubeにおける音楽パートナーではないはずであり、グローバルチャートにおけるストリーミングやビルボードジャパンソングチャートにおける動画再生指標でカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番できません。つまり、上記動画の再生回数はカウントされません。
さて、最新6月7日付の米ビルボードによるふたつのグローバルチャートではアレックス・ウォーレン「Ordinary」が首位をキープし、同曲は同日付の米ソングチャートも初めて制しています。
米そしてグローバルソングチャートの記事では今回の集計期間中となる5月26日に開催されたアメリカン・ミュージック・アワードでのパフォーマンスについて触れられていますが、パフォーマンスの動画は授賞式終了から程なくしてアワードの公式YouTubeチャンネルのみならず、アレックス側の公式チャンネルからも公開されています。この点は以前ブログで触れましたが、動画がチャートに寄与したと考えていいでしょう。
(中略)
上記動画は歌手側のYouTubeチャンネル発となります(同じ動画はAMAsの公式YouTubeチャンネルからも公開(→こちら))。歌手側のチャンネルから発信されることで、動画再生分が基本的に米やグローバルのストリーミング指標に加点されます。
歌手側への動画の迅速な貸与は、チャート反映につながります。また動画を観た方がパフォーマンスに魅了され、それが披露されたAMAs自体への信頼度を高めるものと考えれば、動画の貸与ならびに公開は音楽賞にとって中長期的に大きな意味を持つはずです。ならばMUSIC AWARDS JAPANにおいても現在公開する動画の歌手側への貸与、そして未だ公開されていないパフォーマンス映像の公開は必須ではないでしょうか。
「Ordinary」の例を踏まえれば、MUSIC AWARDS JAPANの動画が歌手側に提供されていないことは機会損失です。もっといえば、6月7日付グローバルチャートでは前週初登場したモーガン・ウォーレン『I'm The Problem』収録曲がアルバムチャート登場2週目につき後退する傾向にあり、他の曲が上昇しやすい局面にあったため尚の事、チャートでのインパクトを残せなかったのは非常に勿体無いと感じています。
ともすればMUSIC AWARDS JAPAN受賞曲やGrand Ceremonyでのパフォーマンス曲はGlobal Japan Songs Excl. Japanで首位にこそ至れずも海外では全体的に人気を得たかもしれません。ただ、先述した最新6月5日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanにおける記事ではMUSIC AWARDS JAPANで披露された藤井風「満ちていく」の上昇傾向に触れつつ、音楽賞の影響と断定されていないことは気になります。
【ビルボード 2025年上半期Global Japan Songs】海外で最も聴かれた日本の楽曲は「オトノケ」 Creepy Nutsがワンツーフィニッシュ(コメントあり) https://t.co/ccbhp9pWUC
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月5日
そして日本の楽曲、特に新曲における人気がともすれば頭打ちになっているかもしれないことを、ビルボードジャパンが先週発表した2025年度上半期Global Japan Songs Excl. Japanから感じています。記事によると、集計期間中のリリース曲で上半期チャート100位以内に入った曲はわずか4曲。アニメ曲ヒットの減少、また海外ツアーを開催した歌手の曲が上位で安定したことが新曲ランクインの少なさに影響したと記されています。
米ビルボードの2025年度Global 200における日本の楽曲ランクイン一覧、Global 200と集計期間を同じくするGlobal Japan Songs Excl. Japanでの首位曲およびそのストリーミング再生回数をまとめた表を上記に。ピンクの表示はGlobal 200にもランクインしたGlobal Japan Songs Excl. Japan首位曲を指します。2025年度上半期のGlobal Japan Songs Excl. Japan集計期間はGlobal 200における2024年12月7日付~2025年5月31日付となりますが、Global Japan Songs Excl. Japan首位曲の再生回数が漸減傾向だと解ります。
2025年度上半期におけるGlobal Japan Songs Excl. Japan首位曲のストリーミング再生回数を合算すると1億4827万となりますが(記事未記載分を除く)、ビルボードジャパンの上半期Streaming Songsチャートで19位までが1億回再生を突破していると考えれば、日本の楽曲はまだまだ海外で再生される余地があるのではないでしょうか。しかもこの1億4827万という数値は動画再生も含まれてのものです。だからこそ、まずはMUSIC AWARDS JAPANでの動画を歌手側にも貸与することが欠かせないと感じるのです。
(上記キャプチャはリンク先より。問題があれば削除いたします。)
MUSIC AWARDS JAPANのアーカイブ配信はYouTubeではなくLeminoで行われますが、同サービスを提供するdocomoがMUSIC AWARDS JAPANのゴールドパートナーであることが背景にあると考えるのは自然でしょう。サポート企業(こちらで確認可能)の存在は有り難いとして、しかしそのことがYouTubeでのアーカイブ配信に至らない、海外で観られないだろう状況を招き、世界へ轟かせる機会が失われるならば違和感を抱きます。
また日本の音楽番組におけるパフォーマンス映像を歌手側が公開する機会は増えてきましたが(特に『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に顕著)、しかしその公開期間が大半で限定されていること、TVer見逃し配信の終了を待たなければ公開できないこと等もまた機会損失です。MUSIC AWARDS JAPANにおけるサポート企業への配慮共々、ここからは、映像の配信や貸与より企業や放送局の保守的な考えが勝るという姿勢がみえてきます。
それを変えることは至難の業だとして、しかしMUSIC AWARDS JAPANの開催は日本のがんじがらめな柵を取り払うという意味でも意義のあるものと捉えていただけに、映像に関する対応を強く残念に思います。MUSIC AWARDS JAPANの海外でのチャート反映が好ましくないならば尚の事、日本の映像に関する仕組みを一から見直すことは必須です。